※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 若島津がその時の二人と顔を合わせたのは、それから三年後のことである。
一段と大きく、ふてぶてしくなった若林ときたら、手のケガですぐに病院に運ばれることになった若島津にとっては、とにかく腹が立つ以外の何物でもなかった。後から現れて、日本のGKの座を奪おうとする相手に好感をもてる筈もない。毎日が「若林悪口会」と化した食堂で、日向と松山が仲良くしているのを奇異の目で眺めながら、つい練習には熱が入る。 「こんな時に、あいつがいればな」 日向が言ったのは、そんな夜のことだった。練習に行っていたらしく、夜遅くに戻って来た日向は、寝返りを打った若島津に、独り言のように呟いた。 「あいつって、岬ですか?」 遠い昔のことなのに、日向と笑い合う岬を思い出して、若島津は一瞬唇を噛み、それから微笑む。 「ああ。一人で走っている翼や背中を向けている若林を見てたら、あいつらに囲まれて楽しそうにしていた岬を思い出しちまった」 偵察の時や大会中、その二人に警戒するような視線を向けられたことを思い出し、日向は口元をほころばせた。岬はあんな顔をして生意気ではあったが、昔から仲間思いだった。こんなに合宿がぎすぎすしていることを知ったら、心配するに違いない。 「そうですね。でも、岬がいたら、日向さん一番に叱られますよ」 自分でも確度の高い意見を口にして、若島津は隣に腰掛けてきた日向を見る。 「間違いねえ、な」 中学三年間、若島津には随分叱られた。若島津に怒られるのは、他の人に迷惑がかかるようなことをした時で、自分に対する迷惑については、一向に怒る様子もない。身内、の距離だと日向は思う。岬が同じ距離だった頃、若島津は自分に対して遠慮をしているように思えた。そして、岬が去った後、若島津は日向の身内、になった。岬がいくら離れていても、たとえ敵にまわっても身内だと思えるのなら、若島津は自分の一部だと思っても良かった。身体は別であっても、常にどこかがつながっている。 「岬、本当に合流するんでしょうか?」 この3年間、岬の消息は誰も知らなかった。フランスに渡っていて、西ドイツの若林に会いに行った、と聞いたのが全国大会でのことで、その噂の片割れの若林の変わりっぷりからすると、二人の友達付き合いも果たしてどうなのか分からない。 「でも、もし合流したら、ちゃんと迎えてやりてえけどな」 一瞬震えた若島津の肩の動きに、日向は気付かずにいた。
(つづく)
(6)へ
久しぶりの再開です。自分でも忘れるところでした。 次回、舞台はフランスです。って、私Jrユース合宿好きすぎですね。(でも、書く)
from past log<2009.1.21>
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|