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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
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決戦の朝
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「若林くん、ずいぶん早起きだね」
不意に声を掛けられて、若林は慌てて振り返った。
 足の療養の一方でリハビリ以上の練習はしてきている。試合は久しぶりで、そのために体を動かしていたのだが、まさか誰かに見つかるとは思っていなかった。
「岬…」
声の主を確かめて、若林は表情を和らげた。岬はこのチームで最も大人びた感覚の持ち主だ。若林が久しぶりで試合勘の鈍りを危惧していることを打ち明けたとしても、動揺しないし、ましてからかったりする性格ではない。
「いよいよ今日だね」
およそ小学生男子とは思えない程穏やかで優しい口調で、岬は話した。その声には緊張や気負いはなく、若林は岬らしいと思った。
「ああ。今日も頼むぜ」
「こっちこそ」
優しく微笑む岬はいつも通りで、昨日の準決勝に見せた激しさなど微塵も感じさせない。
 昨日の準決勝で、岬は同点ゴールを決めた。叫び声を上げて喜んだ岬に、若林も「やってくれた」と感激した。試合が終わった後に岬に抱き着いたのはやり過ぎだったと思うが、後悔はしていない。
「岬は頼りになるからな」
「そんなことないよ」
照れたように頬に手をやる岬に、若林も何故か照れくさくなって、帽子のつばに手をやった。
「いや、本当にそう思ってるんだ。昨日だって、岬がいてくれなかったら、勝ち上がれなかった」
若林の言葉に、岬は微笑む。
「そうだね。勝ちたいと思う気持ちは、僕が一番強かったから」
岬の笑顔は、いつもどこか寂しげだと若林は思う。今日は余計に。それは岬がもうすぐ去って行くことを知っているからかも知れない。
「それもあるだろうが、俺は見上さんから、キーパーは堅実なプレーが最善だと教えられてきたんだ。それと、極力無駄のないセービングができるように、チームをよく見て動かせ、ってな。そういう意味では、お前のプレーはその考えと合ってるだろ?」
「なるほどね」
若林の言葉に、岬はこくりと頷いた。プレー思想が近いということは、信頼できる理由として納得がいく。
「だから、今日はよろしくな」
差し出された手に、岬は微笑む。
 どこに行っても、そのプレイを称賛されてきた。みんなが岬のセンスやドリブルを褒め、パスを欲しがった。それでも、若林のようにチームメイトとして頼りにしている、と言われることはなかった。
「こちらこそ」
負けたくはないと思う。勝負である以上勝ちたい。だが、それだけではない。
 岬にとっては日向は旧友だ。今までもサッカー感の違いでの反発はあったが、それでもあんなに余裕のない様子ではなかった。
 南葛は強い。岬が今までいたチームの中でもトップクラスといえる。それが、この大会を通して進化していく様子は、ライバルチームには脅威だろう。
 それでも、日向との間にあった友情が簡単に消えるとは思いたくなかった。日向に自分の間違いに気付いてもらい、また友達に戻れるなら。
「勝とうね」
微笑む岬の横顔に、若林は目を奪われた。普段は可愛い顔立ちに相応しい優しい笑顔の岬が、試合になると凛々しい表情に変わる。寂しげに見える笑顔も、その細く華奢な身体を大きく見せる真剣な眼差しも、どちらも若林を強く引き付けるものだった。
 岬のことは、初めて会った時から、何故か以前から知っているような気がした。以前どこかで会ったような、懐かしいような気持ちになって、岬は無条件に頼りになるように思えた。
 それは漠然としたものだったが、次第に形をなしてきているようで、若林はその初めての感覚が悪いものでもなく思えた。
「ああ」
翼や岬と戦う最後の試合、負ける訳にはいかない。
 決意を新たにした二人を照らすように、風に吹かれた雲が動き、切れ間から覗いた太陽がいっそう輝きを増した。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
決勝戦を読んだり、アニメで観る度に、じっとしていられない気持ちになります。あまりにも源岬すぎて。

目次作りをさぼっていたら、本当に溜まっていました。今日やっと直しましたが…結構大変でした。
更新頑張ったな、と感慨深かったです。

以下、コメントお礼
くるみ様、いつもありがとうございます。
やっぱり、原作が一番ですよね♪折に触れて痛感します。
「はあっ!?」の感想もありがとうございます。
中学以降のイメージが強くて、若島津くんを大人に書くことが多いですが、
小学生の若島津くんだと、我が強そうだな、と思ったらこんなことに。
漢な岬くん認定ありがとうございます。
こちらも決勝戦を観た影響ですね…。
また遊びにいらしてください。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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