※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 U-22の合宿所には、各選手達がCMをしている商品が持ち込まれていた。他の選手の手前もあり、スポンサーに差し入れしてもらうケースがほとんどで、三杉がCMをしているスポーツドリンクと岬のミネラルウォーターは特にたくさん置かれていた。 「これ、ミネラルウォーター、1年分、ってやつだな」 積まれているミネラルウォーターのペットボトルに、石崎がからかう。練習後に大量に減るスポーツドリンクと違い、ミネラルウォーターはあまり減らない。 「まあ、おかげでミーティング時の飲み物には事欠かないよ」 「それに、これシール残ったままだから、ここで集めたら、岬グッズももらえるよな」 三杉と松山のフォローに、岬は苦笑する。ちょうどキャンペーン中で、シールを集めると抽選で岬のグッズが当たることになっているのだ。 「もう、やめてよ」 毎日顔を合わせているのに、グッズプレゼントもあったものではない。せめて、スポンサーに頼んで、他の飲料にしてもらえば良かったと真面目な岬が正面から受け止める中、周囲が気遣ってフォローを始めた。 「まあ、お好み焼きソースよりはマシだけど」 早田が関西ローカルでCMキャラクターを務めるお好み焼きソースも、当然届けられていた。あの時、を知っている者は当然げんなりしているが、井川親子は早田のお好み焼きを楽しみにしているらしい。 「いやいや、やっぱり銭湯やて」 「そうだよな。インパクトで言ったら断然石崎だよな」 銭湯組合のキャンペーンCMで、石崎はほぼ全裸を公開した。その脅威の髪の毛スピード洗いは、世のスポーツ少年の間で長らく話題になったという。もっとも、その一本限りで、石崎のCM出演は途切れているのだが。
「なあ、だんだんあのスペース拡充していないか?」 松山の言葉に、三杉が苦渋の表情で振り返った。もはやスポーツドリンクが姿を消したスペースに、ミネラルウォーターが明らかに増殖している。 「・・・誰か、岬くんの隠れファンが持ち込んでるんだよ」 合宿の途中参加者は限られている。まして、そのようなことをしそうな人間を、一人しか知らない。二人の指摘を耳にした岬は一瞬青くなって、それから赤くなった。 「・・・注意してくる」 やはり該当者は一人。心当たりに向かった岬に、二人は顔を見合わせて、改めてため息をついた。
「若林くんっ」 ノックはしたものの、勢い込んで入って来た岬に、若林は当然のように笑顔を向ける。途中参加な為、半端な一人部屋、その気さえあれば立派に逢瀬も成立するのだが、当事者の一方には今のところその意志はない。 「岬、どうかしたか?」 テーブルに、当然のように置かれているミネラルウォーターに、岬は笑って良いのか怒って良いのか分からず、手に取った。ボトルキャップに貼ってあったはずのシールは、存在しない。 「それ、結構うまいな」 「だからって、大量に買ってくることはないと思うけど」 呆れた口調で言うと、岬は自分用に持ってきたペットボトルを開ける。 「岬くん目覚ましがどうしても欲しかったんだから仕方ないだろ」 プレゼントの特賞は岬くん目覚まし限定5名様。時計を持ったデフォルメキャラは岬の声で起こしてくれる。 「合宿中なら、モーニングコールくらいするよ」 朝は強くない岬であるが、超朝型の松山に付き合って朝練をしているため、毎日早く起きている。 「・・・どうせなら、起こしに来てくれよ」 「やだよ。すぐに抱き枕にしようとするくせに」 冗談を言い合いながら、岬は手を伸ばしてきた若林の隣に座る。合宿所にあふれるミネラルウォーター問題はともかく、若林の気持ちは分かる。毎日、好きな相手の声で目覚められたら、どんなに幸せだろう。 「目覚まし、吹き込みできるのを買うから。吹き込んでくれる?交換しようよ」 「そうだな。何か目の覚めるような、一言を頼むぜ」 候補の言葉を囁き合って、視線を絡める。目覚まし時計の文案は当分できそうにないまま、二人はすっかり二人の世界の中、目が覚める様子はない。
「岬、ビールのCMに出てくれタイ」 合宿所に溢れかえるミネラルウォーターという、一連の噂を聞きつけた全日本の酒豪、鯨神の至言である。
(おわり)
from past log<2009.1.18>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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