fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
コーラ
日向くんのお誕生日を忘れていました。




「小次郎!」
急に声を掛けられ、日向は周囲を見渡した。中学サッカー界では、泣く子も黙る、猛虎日向小次郎だ。中学生にしては高い声で彼の名を呼び捨てる者の心当たりなど、一人しかいない。
「岬!」
さっきまでチームメイトに囲まれていた友人の姿を目にして、日向は思わず周囲を見渡した。
「お前、どうしたんだよ、急に」
南葛やら松山が岬の歓迎会をすると盛り上がっていたのを思い出し、日向は怪訝な顔になった。
「歓迎会の準備するからって、追い出されてさ」
岬はくすくす声を立てて笑った。その笑顔はさっきよりは明らかに子供っぽいもので、日向は昔のままだと思った。明和で一緒にいた頃の岬と。
「あれ、若島津は?」
「お前、俺がいつも若島津と一緒だと思ってんのか?」
「あれ、違うの?」
岬は日向にはいつも遠慮がない。にこにこ笑いながら答えて、岬はベンチに腰掛けた。
「どうぞ」
「どうも」
憮然としながらも、隣に座った日向に、岬はまた笑顔をみせた。
「誕生日おめでとう」
「な、なんだよ…」
他校の生徒達を震え上がらせてきた低い声で唸った日向だったが、岬は全く気にする様子もない。
「小次郎は優しくなったね」
しみじみ言うと、岬は優しく笑った。
「前は、うるせえ、だったよね?」
3年前はそうだった。親しい友達、仲間と思っていた岬が、敵として立ちはだかったことに、日向は苛立っていた。誕生日を祝われても、素直に喜ぶ気にはなれなかった。
「あの時は、僕だって君に苛立っていたんだよ」
岬は友達同士で争うのはいやだった。それでも、最初からケンカを売って来た日向にはカチンと来た。日向達と過ごした明和の日々が楽しかっただけに、敵として見る日向とのギャップは大きかった。
「そうだよな。お前最初知らん顔してたもんな」
「そりゃ、あんなに乱暴に殴り込みされたら、知らないふりしたくなるよ。若島津なんか、悪い小次郎に感化されて、別人みたいだったし」
その言葉通り、岬はほとんどの明和選手に対して知らない顔をした。
「本当に、とことん逆らいやがって」
「お互いさまだね」
楽しそうに笑う顔は、3年前の全国大会の決勝戦を思い出させた。決勝を戦った日向と岬は、試合が終わってから、笑顔で和解したのだった。岬と会うと、時が遡る気がする。仲間だったり、敵だったり、それでも縁が切れない、ずっとそんな付き合いを続けていくような気さえする。
「今回はよろしくな」
「うん」
にこにこと笑い返しながら、岬はふと真顔になった。
「お誕生日プレゼント、コーラ位しかないけど、良い?」
「だから、お前はっ…」
言いかけたセリフを引っ込めて、日向は黙って手を差し出した。岬に会えて嬉しいのは事実で、せっかく機嫌の良い岬に逆らうことはない。
「どうぞ」
「どうも」

 翌年、再び敵になってしまった岬と、また同じようなやり取りをすることになるとは、この時の日向には予想もつかなかったのであった…。

(おわり)

日向くん、お誕生日おめでとうございます。
フランスでは、ご当地コーラなるものがあるそうで、とんでもないコーラだったオチも考えましたが、日向くんのためにやめておきました。
スポンサーサイト




コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1685-55adb3a6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)