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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
「君がいなくても生きてはいけるだろうけど」
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

診断メーカーの「僕から君へ、愛のことば」をまた試してみました。

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源岬の愛の言葉:ふたりが大切にしている特別な日に、力なく微笑んで「君がいなくても生きてはいけるだろうけど、」
https://shindanmaker.com/435977
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 つい辺りを見回した。通い慣れた道なのに、全く違って見えるのは、若林くんがいないせいだ。

「用事があるから、悪いが先に帰ってくれ」
チームの練習が終わり、帰る間際になって、若林くんは言った。いつもなら、新人のためのミーティングがあっても、一緒に帰ると言って聞かないのに。急いで帰る姿が普段とは違って見えて、僕の心の中に、黒い雲が広がっていく。
「うん、分かった。気をつけてね」
それでも、動揺を見せるのも気が引けて、いつも通りに笑顔を作った。

 一緒に住み始めて、一年近い。住み慣れたフランスを離れて、若林くんのチームに移るのは覚悟がいった。いくら好きで愛し合っていても、生涯を共にするのはまた違う話だ。それでも、僕は決意した。
 言葉の問題も、移籍の問題も、準備をしてきただけあって、思ったよりは順調に進んでいた。困ることと言えば、若林くんがすぐに構ってくることぐらいだ。
 一緒に住むまで若林くんがそんなに淋しがりだと思っていなかったけど、それはそれで嬉しく思えた。…昨日までは。

 独りの帰り道は味気ない。いつもなら若林くんに声を掛けて来るファンの人がいたりするけど、今日は僕一人。日本から持って来たマスクが効を奏して、誰も声を掛けて来る人はいなかった。
 いつか寄りたいと思っていた店も素通りしてしまってたことに気付く。まるで、胸の中に穴が空いてしまったようだ。若林くんの存在は大き過ぎて、その空白もまた大きい。今更寄り道する気も起こらなくて、素直に部屋に戻ることにした。

 鍵を差し込みドアを開けると、部屋には既に明かりが点いていた。
「おかえり、早かったな」
「若林くん!?」
至って普通に出迎える若林くんに、唖然とした。
「用事あったんじゃ…」
「ああ。今日は岬がこっちに来てくれて1周年だから、買い物して来た」
その言葉通り、テーブルには花束とケーキらしい箱が置かれている。しかも、僕が気になっていた店のケーキの箱だと気付いた瞬間、拍子抜けした。
「…今日だったんだ」
「何だ、忘れてたのか?」
凝縮された一年だった。後悔はしたくないと必死で走り続けた。思い悩んでいた時間に比べると、あまりに短く感じる。
 そうか、一年経っていたんだ。
「あんまり楽しすぎて、1年経った気がしないよ」
あんなに怖かったのが嘘みたいに笑えた。僕の頭にぽんと手を乗せて、若林くんが目を合わせてくる。
「まだ1年だもんな。先は長いぜ」
こうして笑い合うだけで、心に空いた穴が塞がっていくのを感じる。
「…うん」
そして思う。もう戻れないのだと。君がいなくても生きてはいけるだろうけど、それはきっと、今とは違っている。
 そのまま若林くんの体に腕を回した。ギュッと強く抱く僕よりも、もっと強い力で抱きしめられて、涙がこぼれそうになった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
やっと金曜日。明日はゆっくり休みます。そして、たまった録画を見ます。武蔵戦~。

以下、拍手お礼。
さんた様、いつもコメントありがとうございます。
同じ「好き」でも違いがあって、でも離れられないのはやっぱり好きだから、というのを書いてみました。
甘くて苦い、というには甘さが足りないのですが…。
喜んでいただけて何よりです。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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