※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意下さい。 ※キャラクターの性格が一部違いますが、仕様です。 鮮やかなフェイント、正確なコントロールに、それほど強くないシュート。シュートといえば、日向の剛速球をイメージの強い若島津には意外だった。そして、そのシュートに、自分がゴールを許したことも。 「・・・若島津、手抜き過ぎ」 確かに、キック力を買われ、日向に誘われた。サッカーというよりも、日向の強烈な個性に惹かれるようにチームに入り、吉良監督にGKを頼まれて、よく分からないまま務めていた。確かに、GKの得意コース苦手コース、程度は聞いていたが、そこまで攻め込まれることもなかったのだ。 「手を抜いた訳じゃないよ」 若島津の反論を聞き流すと、岬は冷たく笑う。 「若島津は素質に頼りすぎてると思う。君って足が速いから、たいていのボールには追いつくって、ちゃんと見てないよな?・・・小次郎が上に行くつもりなら、君じゃGKは務まらない」 本気の顔を見たい、と言った時よりも数段冷たい岬の語調に、若島津の頭にも少しずつ血の気が上がってくる。 「もう一度、言ってみろ。俺がお前のシュートを止めてやる」
「小次郎、若島津にこてんぱんにやられたよ」 「嘘ですよ。岬が沢田と二人でかかってきたんです」 新聞配達のバイトのせいで、遅れて練習に来た日向に、岬がこぼす。若島津が泥だらけになり、ユニフォームを汚す様子など見たことのなかった日向は目を丸くした。 「日向さん、サッカーって楽しいな」 「当たり前じゃねえか」 「そうだよね」 きらきらと輝くような若島津の目に、日向は少し戸惑った。若島津がそんな風に笑うとは思ってもみなかった。万事控えめで、真面目に空手の練習をしている印象の強い若島津が、好戦的に笑うのを見た瞬間、心に何かが刺さった気がした。 「続けてよね、サッカー」 夕日の中、柔らかく微笑した岬の様子に、若島津は喉まで出かかった言葉を諦めた。 「ああ」 仕方なく頷いてみせた。
「それで、岬が町を出たって?」 「そうなんです。家に行ったらいなくて・・・」 岬が引っ越したのはそれからしばらくたってからだった。道理で、抹香臭いことを言うと思った。思った若島津が日向の後を追って、岬の乗った列車を追いかけた頃、岬は既に車窓を眺めていた。 転校先でなめられないように、勝気なフリをするのは面白かった。どうせ、どこもそう長くはいられないのだから、自由奔放に振舞うのも、楽しむのも。 ただ、日向に話しかけたときの若島津を見た時は違った。静かにしているのに、にじみ出てくるような強さ、に背筋がぞくっと震えた。若島津はそんなそぶりなど、全く見せはしない。普通に女子にもてていて、クラスの人気者で。でも、違う、と思った。自分に噛み付いてきた日向よりも、ずっと怖いかも知れない。見たい、と思った。この選手の放つ光を。 「すごかったな、小次郎も若島津も」 あんなFWもGKも見たことがなかった。すごい、チームだと岬は思った。あんなにきらきらしたチームは見たことがない。二人のことを思い出すと、胸の奥から微笑みが湧き上がってくるようで。 なめられちゃいけない、なんて狭い考えはもうよそうと思った。自分が心を開かなければ、相手だって開いてはくれない。松山達と別れた時、あまり淋しかったから、友達なんて作らないでおこうと思ったけれど、たとえ一瞬でも友達のいた時間は、楽しくて愛しい。 だから、二人にささやかなプレゼントをした。 ガラスに映る自分の影に重なるように、土手から見送る二人の姿が見えた気がして、岬は微笑んだ。
(つづく)
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拍手ありがとうございます。 別口の時代ものが大詰めです。 風呂敷を畳むのに時々失敗するので、今回ばかりは気をつけないと。
2月のオンリーの話がそこらで飛び交っています。・・・うらやましい。 関西の私にとってはまさにシンデレラ城。 カボチャの車、調達できそうにありません。
from past log<2009.1.14>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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