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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
有限の楽園
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 メキシコでの最終合宿。マドリッドオリンピック本戦に向けての最終調整でもあり、代表の最終選考であるこの場において、若林はとても充実した日々を過ごしていた。
 ドイツにいれば、チームメイトとの間はともかく、監督かうるさいし、マスコミもいろいろ言ってくる。ところがここでは存分にサッカーができる。練習環境はクラブに及ばなくても、周囲は若林の実力だけでなく個性を認めているし、何より、結果を出せる環境は良い。

「…若林くん、楽しそうだね」
助手席で、運転中の若林の様子を眺めていた岬が呟いた。時間はバラバラとはいえ、休みの日に外出するのは目立つ。それでも一緒に過ごしたいと若林が誘い、岬も従った。レンタカーのはずなのに、乗り心地の良い車を選んでくる辺りは、若林らしい贅沢だと呆れはしたが。
「今だけだろ」
強い日差しに備えた濃いサングラスで、若林の表情は分からない。それでも、昨日や今日の仲ではない。声だけで意図は十分伝わり、岬は運転席の若林にいたずらっぽい笑顔を向ける。
「自分でも分かってるみたいだね」
オープンカーにしようという意見には反対した岬だが、その分窓を開けて、涼しい風を取り入れている。
 風に髪を遊ばせて微笑む岬を横目に、若林はハンドルを持つ右手の上に、左手を置いて指を折る。
「もう少ししたら、翼達が来るだろ?そうしたら次はオリンピックだ」
二本目の指を折り、若林は車を止めた。ダイナーの駐車場からは、海沿いに伸びる道が見える。
 景色の良い店を選んだだけあって、開けた場所に出ると、視界いっぱいに海と空が広がる。明るいがはっきりと色の濃い色の空の下に、カリビアンブルーが広がる景色は、合宿所を抜け出した価値があると思わせる。
「オリンピックが終わったら、移籍するつもりだろ?」
若林の言葉に、虚を突かれた岬は驚いた表情で若林を見上げた。
「…うん、多分そうなると思う」
岬がスカウトと連絡を取っているのを、若林も知っている。癖の多い選手が多い中、誰とでも組めるゲームメーカー、フランス語の話せて、しかも海外チーム経験がないため移籍金も安い岬はさぞお買い得だろう。
「相変わらず、モテるな、岬は」
「若林くんこそ」
若林も状況は変わらない。オリンピックの決勝トーナメントに進む前に、連絡を取りたがるチームが多い。
「だから、今を楽しまないとな」
飾り気のない言葉だったが、「今」の部分には共感するものがあった。

 岬の知る限り、若林は走り続けて来た。岬が日本で高校生活を謳歌していた時も、若林は独りプロで戦っていた。
 常に前を向き、刹那的なところのない若林が間接的でも弱音を吐くことは滅多にない。他人に厳しい分、自分にはもっと厳しい若林が、束の間でも肩の力を抜けるのならば、そのひと時は大きな意味を持つ。

 「今」は時限制の楽園。

 頷いた岬の肩を抱き、引き寄せる若林に、岬は逆らわずに素直に体を預けた。
「…良いよ。君はどこに行きたい?」

(おわり)

拍手ありがとうございます。
ライジングサンを読みながら、ふと思ったことを書いてみました。
メキシコ…遺跡のイメージしかなかったので、新婚旅行にも人気があると知り、驚いたことがあります。
そのため、メキシコ合宿→源岬の新婚旅行と直結してしまったのでした。
でも、風景のイメージは海外ドラマの影響か、マイアミっぽい…。
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