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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
散歩
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 きっかけはささいなことだった。商店街に買い物に行く途中で、急に声をかけられた。
「よお、岬」
「わ、若林くん!」
僕にしては、ちょっとびっくりしてしまったのは、若林くんが私服だったのと、白い犬を連れていたからだ。
 南葛SCのチームメイトの若林くんは、この町ではちょっとした有名人だ。山の上の大きなお屋敷に住んでいて、チームを全国優勝させる位すごいゴールキーパーで、小学生とは思えないようなキャプテンシーの持ち主である。背も高いし、体格も良くて、こうして並んでも、とても同い年には見えない。
 だから、最初に会った時は、てっきり年上だと思った。それが、今日はトレードマークの帽子は変わらないけれど、Tシャツにジーンズという服装で、ちょっと普通の小学生っぽい。
「どこか行くのか?」
「うん、買い物。若林くんはこの子のお散歩?」
白い犬には、立派な眉毛があるように見える。そんな模様の犬もいるよね、とあまり気にしないことにして、近寄った。
「ジョンっていうんだ」
「よろしく、ジョン」
犬を飼ったことはないけど、大好きだ。僕はジョンの頭を撫でる。触り慣れていない僕にも、ジョンはおとなしく触られてくれる。
「良い子だね」
「だろう?岬も一緒に行くか?」
「うん」
今日は肉屋さんでコロッケが安い。それと、昨日買った野菜でサラダを作るだけで良い。せっかく犬と遊ぶ機会があるのを、見逃したくなかった。頭の中で夕食の献立を計算し、僕は若林くんの後を追った。

 若林くんと僕とジョンの一行は、川沿いの土手を走った後、川原に着いた。誰もいないのを見て、若林くんはジョンと追いかけっこを始めた。僕も混じって、若林くんやジョンを追いかけたり、追いかけられたり。

 気がつくと、川原に寝転んでいた。若林くんも、くつろいでいるジョンを撫でながら、僕の隣に寝そべっている。
「お前、俺のこと怖がらないよな」
「どうして?若林くんは優しいじゃないか」
石崎くんをはじめ、若林くんのことを色々言う人はいる。でも、若林くんはサッカーには厳しいけれど、本当は優しいと知っている。
「ジョンもお腹を見せて、ひっくり返っているしね。怖い人だったら、こんな風に懐いたりしないよね」
そう言うと、若林くんは僕を見てぱちぱちと数回瞬きをしてから、ニッコリと笑ってみせた。
「岬は不思議な奴だな」
若林くんの笑顔は初めて会った時を思い出させた。人懐っこさを示すような優しい笑顔に心が暖かくなる気がする。
「お前と会えて良かったよ」
小さく呟くと、若林くんは体を起こして僕の方を見下ろした。この時間は、まだ太陽が高くて、僕は思わず目を細める。若林くんは、その僕に自分のキャップを被せた。
「あっ、何するんだよ」
「まぶしそうだからな」
その口調には、どこか照れのようなものがあった。それを察して、僕は笑う。
「あはは、君やっぱり優しいね」
「笑うなよ」
若林くんの声に、宥めるジョンの鳴き声が重なって、急に賑やかになった。若林くんと僕とジョン。何だか良い日だな、としみじみと思ったのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
一度書きたかった源岬&ジョン。
…と思ったんですが、ちょこちょこ書いてはいるので、「ちゃんと書きたかった」と訂正を。
若林くん、きっと良い笑顔なんだろうなあ。

以下、拍手お礼
2018アニメ新規の方、はじめまして。拍手ありがとうございます。
こんな辺境ブログにようこそ。
アンソロの説明がお役に立ったようで、良かったです。
新アニメで若林くんのファンになったという情報も嬉しかったです♪
よろしければ、また遊びにいらしてください。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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