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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
コーヒーを飲みに行こう
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


「若林くんは、お砂糖いくつ?」
岬は、砂糖ばさみを手に取ると、砂糖入れの蓋を開けた。小さく首を傾げて、尋ねる。
「あ、俺は良い」
「分かった。じゃあ、僕だけもらうね」
岬は微笑んで、自分のコーヒーカップに砂糖を2つほうり込んだ。

 三年ぶりに再会した岬は、ほぼ想像していた通りだった。相変わらず優しく整った顔は、とても同い年の男とは思えない。白くてどこか涼しげで、透き通りそうな雰囲気に、優しいけれどまっすぐで、強い印象のある瞳。それは、三年前に恋い焦がれた岬そのままだった。
 背が伸びて、成長した分、更に雰囲気は落ち着いて、大人びて見える。それでも、ふとした拍子に見せる笑顔は、昔通り可愛くて、つい目を奪われてしまう。
 岬は相変わらずよく笑う。耳当たりの良い声が明るく笑うと、それだけで気持ち良い。
「ここのコーヒーうまいんだぜ」
「そうなの?」
いつものコーヒー店に案内すると、岬はキョロキョロしながら入って来た。コーヒーの味もさることながら、インテリアもクラシックで、趣味が良い。岬もそう思ったらしく、大きな木製のテーブルを眺めながら「素敵な店だね」と笑った。

 注文していたコーヒーが出て来て、岬はそれまで見ていたアンティークらしい砂糖入れの蓋を嬉しそうに開けた。受け皿に置かれていた砂糖ばさみで砂糖を挟んでみせる。俺が断った後、岬は砂糖を二つ取り、カップに入れた。スプーンでかきまぜられたコーヒーの渦に、白いミルクを流し込めば、黒白の渦ができる。黒白のマーブル模様に見入る岬を、静かに眺めた。
 岬の唇はほんの少し、ほころんでいるように見える。コーヒーを楽しみにしているんだろうが、砂糖を二つも入れたら、きっと甘いのに。
「若林くんは、いつもブラック?」
「ああ」
小学生の頃から、兄貴達に対抗して、コーヒーはいつもブラックだった。家にいた頃は苦いとしか思わなかったコーヒーが、この国に来てからは美味いと感じるようになった。子供時代は終わったのだと、それで分かった。
 岬の笑顔はそんなことを思い出させた。大人と子供の狭間で、揺れ動く気持ちも。
「すごい、大人っぽいね」
岬は笑いながら、コーヒーを口に運ぶ。微笑んだままの唇がカップに触れた瞬間、ドキッとした。
「少し苦い目だけど、美味しい」
「な?」
「若林くんはすごいね。僕もブラックでも楽しめるようになりたいよ」
ああ、きっとあの唇は、砂糖の多いコーヒーよりも、甘い。
「あのさ」
「なあに?」
聞き返す岬に、「岬はそのままで良いよ」と囁いた。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
最初違うタイトルで書いたのですが、続きを書いたらこのタイトルしか合わなくなりました。
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