※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意下さい。 ※この話は、そう見えなくても「若林総受」です。本当にご注意下さい。 Jrユース大会も終わり、親睦のために各国何故か余興を披露することになった。きっと決めたのは、日本のオヤジどもだ、いや、あのフランスのむかつく審判やで、との声が飛び交う中、当然のように仕切るのはこの男、三杉であった。 「僕としては、外交上失礼でない程度に儀礼的に済ませるべきだと思う」 「って、手を抜くってことか!?」 横から嘴を挟んだのは北の荒鷲こと松山光である。その読解力を空気を読むのに使ってくれれば良いのに、と思う三杉に対し、助勢があったのは松山サイドであった。 「駄目だよ、三杉くん。他の国がどんなに手ごわくても、負ける訳には行かない!ね、若林くん?」 翼の言葉に、最も興味がなさそうにしていた若林に注目が集まる。何しろこの天才ときたら自分の関心のない相手には目もくれない。 「ドイツチームって、何するの?」 いかにも当然のように聞く翼に、若林は閉口した。そんなこと、自分が知るはずもない。シュナイダーとはあれ以来、二人では会っていない。 「そんなの、知るか」 横を向く若林に、構い足りなさそうな全日本の王様は不服そうに、今度は自分のパートナーを見やった。 「岬くん、フランスチームは何するのか知ってる?」 「うん。白鳥の湖だって」 「そうか!調べてくれてありがとう。俺たちも負けてられないな!」 笑顔で軽く答えた岬に、周囲がみるみる淀んでいく。岬はどこでそんな情報を入手するのか。そして、勝つ必要などあるのか。 「よおし、そうと決まったら、早速準備だ!」 「おう!」 ・・・思うところだらけであっても、翼の掛け声には無意識で反応してしまう全日本Jr.であった。
「じゃあ、みんなくじを引いてくれたまえ」 三杉の差し出した箱に、顔の引きつった面々が、順に手を入れる。毎回紛糾するやり取りの中、それぞれの書いた紙を抽出する形で、既に「劇」「白雪姫」と演目までは決まっていた。舞台上で倒れる訳にはいかないからと、監督・演出を担当する三杉とフランス語要員としてナレーターを務める岬を除く全員がくじを引く。もっとも、練習時間もないため、台詞は岬がフランス語で朗読し、舞台上では演技だけすることになっていた。 「やった!俺、大道具!」 「くそっ、ワイは小人3タイ」 「よしっ、俺が王子だ!」 王子のくじを握り締めて、つい癖で拳を宙に突き上げた若島津の横で、反町がにこにこ笑う。校内のファンに売れる写真が撮れる、とあくまでゲンキンな喜び方である。 「・・・それで、白雪姫は?」 周囲が落ち着いたところで、三杉が投げかける。隣では岬がホワイトボードに、小人2・・・森崎、と聞き取った声を記録している。 「えっ!?」 黙って手を挙げた人物に、周囲のざわめきが再び大きくなる。手を挙げたのは、若林だった。
「はっはっはっ」 笑い声を轟かせたのはもちろん三杉である。のべつまくなしに周囲に交代を頼む若林に、三杉はつかつか、と歩み寄る。 「若林くん、君は考え違いをしてはいないかい」 「えっ?」 「君は先日、僕たちみんなをだまそうとした。その借りは、舞台で返すべきじゃないかい?」 顔を近づけて、それこそ首筋に息がかからんばかりに迫る三杉に、若林は抗弁しようとした。が、三杉は目を細めると、東京では飛ぶ女も落とすといわれる必殺必中の流し目をくれた。 「君を、咲かせてあげるよ」 若林のおとがいに手をかけて、三杉は微笑んだ。
「そうだよ、若林くん!」 駆け寄ってきたのは翼であった。若林に接近している三杉をさっさと押しのけると、若林の肩を抱く。 「大丈夫、若林くんになら、きっとできるよ」 「翼・・・」 そう、若林は気づいていなかったのだ。周囲の態度に。
そして、劇は始まった。 「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは、誰?」 顔の割りに太い声でこっそり話しているのは井沢である。長い髪を振り乱して、鏡に向かう。 「それは、白雪姫、だぜ。あいつは昔っから、えらそうだけど、何だかほっとけなくて、俺はつっかかってばかりだったけど、気になって仕方なかった」 マイクが入っていないのを良いことに、好き勝手話している鏡の精は石崎である。 「何を。俺なんか、小学校まで一緒だったんだぜ。あの人のことなら、背中のほくろまで知ってるぜ」 「って、お前見たのかよっ」 『鏡の精がこの世で一番美しいのは白雪姫だと答えたことに腹を立てたお妃は、白雪姫を殺すことにしました』
舞台上で不毛なやりとりがなされているとも知らず、出番を控えた若林は舞台袖から観客席の一点を見つめていた。暗転の中でも光を失わない、金髪。あんなに近かったのに、こんなに遠くなってしまった、あいつ。 「白雪姫!」 お妃井沢に呼ばれて、若林は慌てて舞台に出た。多分、予想外に大きな白雪姫に笑われる、と覚悟していた若林であったが、そうでもない。真剣なのにトロ○デロ・デ・モンテ○ルロバレエ団ばりのフランスチームのバレエの後、アモロのタイツの後では、きちんと着込んだ若林など問題にはされない。 「白雪姫、猟師さんと森にいってらっしゃい」 浅黒い肌のせいか、精悍な顔立ちのせいか、猟師の扮装の異常に似合う日向は、森を歩き始めてすぐに、若林を木に押し付けた。 「殺せ、と命令されました」 岬の朗読が響く中、両肩を掴み、唇も接しそうな距離で、日向は若林に囁く。 「なあ、若林、お前俺のこと、本当は好きなんだろ」 日向の台詞に、若林が驚いて目を見開く。三杉ではないが、心臓が止まりそうな衝撃に、息を飲んだ。 「俺のこと、目の敵にしてたよな?」 唇の端を吊り上げて、日向は笑う。しかし、押さえられた若林からすれば、迷惑以外の何物でもない。 「そうだ、だから、お前なんか眼中にない」 好きな相手の名前は、もう口にするのも辛い。あの時に、終わってしまったから。 力づくではねのける若林であったが、異常事態に気づいているのは、観客席ではたった一人だった。 『白雪姫をかわいそうに思った猟師が見逃してくれ、白雪姫は森の奥に逃げました』
本当に息を切らして小人達の家に逃げ込んだ若林を待っていたのは、七人の小人だった。 滝と来生と新田はともかく、翼に早田はともかく、森崎、次藤という小人らしからぬ小人に失笑が漏れる中、若林はリーダーらしい翼に、話しかけた。 「追われてるんだ、匿ってくれ」 「うろたえる若林くんって、可愛いね」 しかし、翼の口から出た言葉はあまりにもひどかった。そのまま固まってしまった若林の周囲を七人が検分する。 「本当だな、翼。若林さん真っ赤になってんな」 「若林さんって、案外純情だもんな」 「へえ、そうなん?みんなそれでからかってるん?」 軽い口調でまぜっかえす早田を、翼の鋭い視線が射抜く。 「そんな訳がないだろ」 全日本のエースの顔は引き締まって、怖いくらいの表情に見える。 「本気だよ。ね、若林くん」 破顔一笑、会心の笑みを向けられたところで、はいそうですかと納得がいくはずもない。 「若林さん、俺達もずっと前から・・・」 滝と来生のユニゾンに、目の前で耳栓を突っ込むと、若林は小人ハウスの掃除に取り掛かるふりをして、ホウキを手にした。どうやら、寄って来る小人対策らしい。 『白雪姫は家の手伝いをする約束で、小人達の家に置いてもらうことになりました』
一方、魔女のお妃と魔法の鏡の論争はまだ続いていた。 「鏡よ鏡、若林さんが一番好きなのは誰だ」 「質問変わってるじゃねえか!」 すっかり男に戻って、お妃の衣装なのに仁王立ちの井沢と、突っ込む石崎。 「まあ、少なくとも日向じゃないのは確かだな」 「ああ、思いっきり振られてたもんな」 ぎゃははは、と大きな声で笑う石崎に、井沢はお妃衣装の上にケープを被る。 「次、俺の出番だから、直接聞いてくる。待ってろよ、若林さん!」 マントを雄々しく翻す井沢に、岬のナレーションがかぶせられる。 『猟師が失敗したのを知り、お妃は自分の手で白雪姫を殺すことにしました』
一向に自分の周囲を離れようとしない小人達に閉口しながら、若林がホウキで防御エリアを築く中、ドアが開いて入って来たのは、魔女・井沢だった。 「若林さん、これ、プレゼントです!」 器用に切ったウサギリンゴを勢いよく差し出されて、若林は戸惑った。自分の記憶が正しければ、魔女は白雪姫をだまして毒リンゴをかじらせる、のではなかったか。 「あ、ああ・・・」 仕方なく皿を受け取った若林に、井沢が「あ?ん」とウサギリンゴを差し出す。 「井沢・・・お前もか」 こんなに大勢でからかうとは、悪質すぎるだろう。怒りに手を震わせながら、皿のリンゴをつまむと、若林は一口で食べた。こんな奴らとこれ以上付き合ってられない。そして、そのまま豪快に倒れる。 『毒リンゴを食べた白雪姫は死んでしまいました』
「若林くん!・・・頭打ってないかな?」 「さりげなく、顔とか触るな、エロ翼!」 「それより、井沢がここにいるのはまずいんじゃないか、早く引っ込めよ」 「俺一人で運べるから、みんな手を離すタイ」 醜い争いを繰り広げながら、小人+お妃が若林を運ぶ間に、登場したのは若島津だった。長い髪を束ね、周囲の混沌の中を颯爽と王子衣装で中央突破すると、ガラスの棺の横で立ち止まる。 「若林、お前は今、死体役だ。・・・自由の利かない身だ。そうだろう?」 涼しい顔で不穏当なことを口走り、若島津は若林を見下ろした。 「後から来てずるいぞ、若島津!」 「俺は王子役だぞ、翼。白雪姫を嫁にもらう男だ!」 ジャンプアニメキャラらしく、大見得を切ると、若島津は冷え汗の止まらない若林の顔の側に手を置く。 「や、やめろ」 「若林、もう素直になれよ。お前のひねくれた愛を俺は受け取ったからな」 「そんな事実はない・・・。って、近寄るな、若島津!」 舞台上の若林の恐怖を知るよしもない観客席では、ほのぼのした童話劇として普通に楽しんでいる者の多い中、一人焦りと苛立ちで楽しめない者がいた。膝の上で拳を握り締めて耐えてはいたものの、腕に包帯を巻いた若島津王子が無遠慮にガラスの棺に近付くのを見て、ついに激昂した。 「俺が本当の王子だ!ファイヤーショット!」 どこから取り出したのか、シュナイダーの放った渾身のファイヤーショットは、小人達をなぎ倒すと、若島津に迫った。 「手刀だ!」 手刀を繰り出す若島津であったが、はじかれたボールは若林に向かう。若林は起き上がると、ボールをキャッチした。 『王子の愛によって白雪姫は目を覚まし、二人は幸せに暮らしました』 三杉のキューによって、ナレーションを朗読した岬は、背後で何が起こっているのか分からなかったが、観客席からの歓声に、よほどうまく舞台が締め括られたのだろうと微笑んでお辞儀をした。舞台上で、若林を連れて逃げたシュナイダーVS全日本の戦いの火蓋が切って落とされていようとは、ついに知らずにいたのであった。
(おわり)
青香様、ただただもうひたすらすみません。総受というか、いじめにしか見えないですね。でもこんなに翼くんを書くのが楽しかったのは初めてです。ありがとうございましたv
from past log<2009.1.4>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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