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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
今見た光景を忘れたかった
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 三杉は、眼下の光景に戦慄した。

 確かに、誰も見てはいない。親善試合にしてはハード過ぎる展開で、聞き分けの良い者や余裕のある酔っ払いは部屋に引き上げていったし、余裕のない酔っ払いは、その辺りでグラウンドの泥のように眠り込んでいる。
 
 だからといって、眠れる恋人を肩にもたれさせているのはどうかしている。人目を忍ぶ恋仲のくせに、と三杉は岬を起こさないように、若林を突く。
「しーっ」
唇の前で指を立て、静かにしろという動作をした若林に、三杉が更に呆れる。

 岬がひどく疲れているのは、三杉もよく分かっている。2点のビハインドを跳ね返し、岬はよく戦った。その勝利への執念と誇りは、劣勢だった日本チームへの不満さえ跳ね返し、場内を岬コールで埋め尽くした。
 チームに一日前から参加した若林を迎える会も岬の同点ゴールがなければ、行われなかったかも知れない。とはいえ、歓迎会としてはいつもよりささやかである。
「明日は休みだけど、羽目を外さないようにお願いするよ」
三杉のスピーチは相変わらずの効き目で、半分位はそれで引き上げた。残っているメンバーは、隙あらば飲みたい連中がほとんどで、その中にあって岬は茶だけ飲んでいたものの、早々に目を擦っていた。
「眠いなら、部屋に戻りたまえ」
「あ…もう少し…」
どうやら、どこか興奮が残ってしまっているのだろうと、顔を上げた岬の表情から判断した。黙ってその場を離れた三杉だったが、酔っ払い達を部屋に運んだり、水を与えたりして戻って来たところで、この光景を目の当たりにしたのだった。
 二人の間には距離があったはずだが、今は密着している。
「何してるんだ、君は」
「見たら分かるだろ?岬が眠そうだから、肩を貸してやっている」
柔らかい髪を少し揺らして、若林の肩にもたれる岬は、今日戦い切った時とはとても同一人物とは思えない。微笑むようにうっすら開かれた唇に、甘く蕩けそうなミルクの肌。心地好くまどろんでいることは明らかだった。
「…今は僕しかいないけど、他の誰かに気付かれたら、岬くんが困ると思うよ」
三杉としては、言葉を選びに選び、効果的な言葉を発したつもりだ。
「…そうだな」
若林は一言呟くと、岬の頭を支えて、起こさないように身を起こした。そして、そのまま岬を抱き上げた。
「な…」
言葉を失った三杉の目の前で、若林は岬をお姫様抱っこにして、雄々しく大胆に進んで行く。
「ちょっ…」
「うるさい、岬が起きる」
さすがに声は潜めて一喝すると、若林は食堂の中央を突っ切り、廊下へと消えて行った。
「…とりあえず、僕も寝ないと」
動揺は収まらないまでも、気持ちだけは切り替えて、三杉は宣言した。頭の中では、岬は明日無事かどうか、とか、他の目撃者がいたら、とか過ぎらない訳ではないが、それでも今見た光景を忘れたかった。

 三杉はまだ知らない。平然と振る舞っていた若林が、実はしたたか酔っていたこと、そして翌朝、若林のベッドで目覚めた岬がパニックになり、三杉に口止めに来て、若林のアルコール摂取を禁止してほしいと懇願に来ることを。
 もちろん、三杉は心の底から同意したのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
今日の犠牲者は三杉くんです。すみませんでした。
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