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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
お節介
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 いつものように、修哲トリオに高杉に森崎に、と昔ながらの面子に囲まれて、若林の姿はすっかり埋もれてしまっている。食べ終わった食器のトレイを片付けに向かった若島津は、見慣れてしまった光景に呆れ返って目を背け、その隣の列で食後の茶を飲んでいる岬に気付いた。
「珍しいな、一人か?」
「うん。二人とも彼女からの電話だって」
そう答える岬の隣の席は、トレイは片付けられているものの、うち一人のジャージが椅子の背もたれに掛かったままだ。
「精が出ることだな」
若島津はそう言いながら、松山のジャージが掛けられたままの椅子に座った。積年のライバルチームという、ある種の昔馴染みと新しいメンバーの混じったチームであるが、何がしかの秩序はあって、そのようなふるまいをする者は少ない。
「相変わらずだな」
「うん」
岬は静かに答えると、また茶を口にした。いつものままの優しい微笑みの岬の顔を、若島津はじっと覗き込んだ。
「嫉妬とかしないのか?」
若林がチームに合流してからというもの、この状態は続いている。
「別に。若島津も言っただろ?いつものことだから」
動揺のかけらも見せないで、岬は答える。ポーカーフェースというよりは、笑顔の盾だと若島津は思う。そんな時の岬は、たいてい何かを隠している。
 若林と岬が人目を忍ぶ仲なのを知る者はほとんどいない。若林はあまり隠そうとはしていないが、岬は表情に出すこともなく、澄ましている。
「正妻の余裕って奴か?でも、時々は嫉妬してみせてやれよ。喜ぶぜ」
「君、とんでもないことを言うね」
茶化した若島津に、岬は少しだけ笑い声を立てた。それが存外低い響きだったため、若島津はかえって安心した。
「若島津って、案外お節介だよね」
きれいな指を行儀良く揃え、岬は両手で包んだ湯呑みを傾けた。岬はひとに見せようとしている姿よりも、遥かに単純だと若島津は思っている。だから、涼しい表情で言う横顔に、耳打ちした。
「そりゃ、空の湯呑みを飲み続けてるの見たら、な」
「若島津!」
岬は思わず声を上げ、みるみる赤くなった。元々優しい顔をしている岬だが、恥ずかしそうな表情は、それを可愛らしいものに見せた。岬の性格をよく知る若島津でさえ、認めずにはいられないほど。
「本当に余裕なんかないんだよ。浅ましい姿を見られたくないだけ…」
小声で早口に囁き返す岬の言葉は、途中で切れた。その視線の先には、慌てて駆け寄って来る若林の姿がある。
「若島津、岬に何しやがった!」
修哲メンバーの切れ目からの若林の視野では、若島津が岬に耳打ちしたシーンは、かなり意味深に見えたことだろう。その後に、弾かれたように急に赤くなった岬の反応も、十分誤解を招くものだ。
「大丈夫、何もないよ」
岬は顔を上げると、そう言った。そして、笑顔で付け足す。
「心配してくれてありがとう、若林くん」
普段よりも二割増し程度に甘い口調に、若林は目を細めた。
 さっきから、ちらちらと伺う岬の視線を若林は感じていた。平然と振る舞いながら、気になって仕方がない様子の岬は可愛くて仕方がない。嫉妬の裏返しで、わざと冷たくしてみせるのも、岬の策略とは知っているが、こんなに甘えてみせるとは思ってもみなかった。すぐにでも抱きしめてやりたくなるほど、可愛く見えて仕方ない。
「どういたしまして」
分かりやすい角度で、露骨に合図してみせた若林に、岬はまた頬をほのかに染めたのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
この時は何故か無性に、岬くんをからかう若島津くんを書きたくなったのでした。
(また自分だけ楽しいパターンですが)
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