※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 こういうホテルは初めてだった。二人で行くホテルといえば、高級なものと相場が決まっていた。 「なるほど、ね」 駐車場からフロントを通らずに部屋に入るシステムに、岬は若林が車に乗って来た理由を悟る。 「よく、知ってるんだね」 誰と来たのかは知らないが、少なくとも自分ではない。岬は少しむっとしたが、それをおくびにも出さず、嫌味を言うに留めた。 「もしかして、妬いているのか?」 対する若林は少なからず嬉しそうである。男が嫉妬などしてたまるかとばかりに、そのような感情を押し殺す岬である。半ば苛立っている口調で漏らした岬に、嫉妬の片鱗が見え隠れするようで、若林は沸き上がる笑いを噛み殺した。 「別に僕を誘うことないじゃない」 「一回来てみたかったから、さ」 若林はそう言うと、岬の肩を抱いた。身長差のせいで、コートの衿からのびる白いうなじが見えて、若林は息を飲む。こたつで、隣に座った岬が半纏ではなく、エプロンなのも何か嬉しくて、つい手を握ってしまった。 「さあ、どうぞ」 若林の微笑みに誘われ、岬はドアの中に足を踏み入れた。ドアを閉めた途端に、自動で施錠する音がする。 「何?」 「ああ、金を払うまで鍵開かないんだぜ」 自動支払い機を指差す若林を、岬はきつい眼で睨み付けるが、それも束の間だった。長い腕で巻き取るように抱き締められてしまう。 「早く二人になりたかったんだよ」 岬を逃がさない為には、逃げ道を塞いでおくことが必要なのだとよく分かっている。 閉じ込めた部屋の中には誰もいない。せっかくの正月に、同じ土地にいながら触れ合えないのは切ない。 「・・・君って」 ここまで見事に詰められるとは思わなかった。常にチームとゲーム全体を捉えて動く岬を相手に、未知のフィールドとはいえ、ここまで翻弄するとは。例えるならば、オフサイドトラップにとりかご。突破したところにSGGK。 敗北感の代わりに、奇妙な満足感を覚えて、岬は苦笑した。その戦略がこの時間の為に練られたと思えば、その情熱が愛しくて、たまらない。 「・・・参った。降参」 手を挙げた岬を、若林はごく紳士的にエスコートした。この勝負は最初から決着がついていた。惚れて、夢中になった方が負け。最初から勝ち目はない。 「観念しろよ。今年一年俺のことを忘れられなくしてやるから」 耳元に囁いて、若林は歩き出した。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 クレスリウム王国様でもホテルネタあったのですが・・・ネタの切り口が生々しくてすみません。 実家でこんなん書くのは勇気が要ります。・・・勇気だけが友達。
拍手お礼: M☆様。いつもありがとうございます。さすがに高校時代は無理でしょうが、それ以外はラブラブしてほしいですよね。嬉しいお言葉ありがとうございました。
from past log<2009.1.3>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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