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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
忘れえぬ味
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
Jr.ユース編で合宿中。

「今日は俺がええもんご馳走するわっ!」
早田の一言に、周囲がざわつく。
「別に気を遣わんでもええタイ」
「いや、作らしてえな。そうでもしんと気ぃすまんし」
「そんなの良いですよ、早田さん」
今日のフランス戦は本当に大変な試合だった。早田がレッドカードを受けた後、負傷者続出、不満噴出。あの早田があんなに泣くとは思わなかった面々としては、元気を取り戻してくれたはよいものの・・・少し困る。次藤に沢田タケシが考え直すよう説得するが、早田は聞く耳も持たない。
「早田くん、今日は君も早く休んだ方が良いよ」
コーチの三杉が早田を宥めるものの、早田の心は燃え上がっていた。
 明日の士気を上げること、それこそ今の俺に出来る唯一のことや!

 早田はその足で厨房に行き、自分にとって当然のことを始めた。
「ないやん!何でないねんな!」
厨房のスタッフが困っているのを見かねて、岬が声をかける。
「早田くん、何がないの?」
「岬、たこ焼き器がないねん」
それは日本でも一部地域でしか普及していない、と日本中をわたり歩いた岬は思った。
「早田くん、落ち着いて聞いて。フランスにたこ焼き器はないんだよ」
岬に言われて、早田は何故か頷いた。
「それでか!どこ行っても屋台がないから不思議やと思っててん・・・ってそんな訳ないやん!つっこんでえな」
誰か僕を助けて下さい。一人ボケ一人ツッコミを披露した早田に、岬が少しくじける。
「岬は関西いたことあんねんな?」
「うん。昔難波に少しだけ」
微笑む岬に、早田が詰め寄る。
「じゃあたこ焼き器持ってるやんな?」
「持ってない」
珍しくぶっきらぼうに即答した岬に、周囲の気温が下がる。確かにその言い方では、岬だって腹を立てる。これは、マズイのでは?
「岬は引越し続きだったから、なあ」
こういう場合にまず岬を庇う松山が口を挟んだ。
「そやけど、なかったら困るやん」
・・・困りません。早田以外のほぼ全員が心の中で団結した。一人の食事の多い岬がたこ焼きをしていたら、哀れそのものではないか。
「僕は持っていないけど、友達に聞いてみようか?」
それでも、さすがに岬は大人だった。合宿所の公衆電話で、友達の家に電話する岬に、みんな胸を撫で下ろした。

 たこ焼き器が届き、早田はうきうきと厨房に立つ。
「タコは大き目やんな」
「タコ、ないと思うよ」
岬の言葉に、再び周囲が肝を冷やす。岬としては、事実を指摘しただけだが、早田にとっては本当に衝撃だったようだ。業務用冷蔵庫を調べて、試合中のように再び暗い表情になる早田に、岬がフォローする。
「タコってこっちじゃあまり食べないもの。港町の方じゃ食べるらしいけど」
「はあ?何でやねんな」
「何でって、早田くん納豆好き?」
「あんな腐った豆なんか食べへんで」
「じゃあ、もんじゃは?」
「あんなんもっと食べへんわ。気持ち悪っ」
「そういうことだよ」
岬の笑顔にすっかり毒気を抜かれた早田はさらに頭を抱える。もう、たこ焼きはどうでも良いから、とりあえずこの二人を引き離して、何か食べさせてくれ、というのが皆の総意となっていた。
「イカ、ならあるだろ?こっちでもイカは食べる」
助け舟を出したのは若林である。そうは見えなくても、流石にお坊ちゃんだけのことはある、と周囲の尊敬の眼差しを無駄に集める若林だった。
「しゃあないし、いか焼き作るわ。どうせイカ焼きやったら、梅田のイカ焼をご馳走したいとこやけど」
「うん、あれ美味しいよね」
仲良く厨房に入って行った二人に、チームメイトはほっと胸をなでおろした。

 自信たっぷりだっただけのことはあり、早田のいか焼きは丸くてふんわりとして、本当に美味しかった。ただ、彼らが一つだけ忘れていたことがあった。
「・・・三杉、何だと思う、これ」
食べている最中に、浮き出てきた赤い斑点。同じ顔の立花兄弟が、非対称の模様で、三杉を見上げる。
「じんましんだね。早田くん、この粉どこから?」
「中力粉なんかないから、たこ焼き器と一緒に持ってきてもらった粉だよ」
菓子作りに使う薄力粉は厨房にあったが、中力粉はなかった。代わりに答えた岬に対し、三杉は白い肌をだんだらに染めている。ただでさえ、今日の試合で無理をした三杉は、完全に出場不可能になったことを実感していた。
「三杉!」
薄れ行く意識の中で、三杉はそれでも言い残した。
「・・・小麦粉は古いと当たるんだよ・・・」

 しかし、それでも翌日の試合に問題が生じなかったのは、被害者が少なかったためである。
「森崎、人間は気の持ちようで何とでもなるんだ!」
まだらの森崎に声をかけたのは、日向小次郎その人である。それでも、日向は人間離れしているから、と周囲を見ても、さすがに寮生は鍛えられているらしく、日向は別格としても東邦の他の三人も平然としている。
「!」
絶句する森崎に、まだらの来生が肩を叩く。
「俺達どうせ明日も出番がないからさ」
「そうだぜ、じんましんの出た俺達はまともだ。あいつらと渡り合おうってのが間違いなんだ」
修哲出身者の絆が強まる一方、発症の有無に確かに正常レベルを見た気がして、発症できなかった若林は苦笑した。
「日本帰ったら、もっとうまいのん食べさせたるしな!」
とはいえ、早田の誘いに乗ってくれる猛者がいるかは微妙である。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
お正月早田くん特集その1。
正月早々何を描いているんだか。これは半分実話です。以前じんましん出ました。でも、何となく、修哲出身者と三杉くん以外は無事だと思います。体質とかもありますし。たこ焼き器?もちろん持っていますとも。

from past log<2009.1.2>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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