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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
ほろ酔い
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「今日はゆっくり飲もうぜ」
ワインの瓶を持ち上げてみせる若林に、岬は頷きながらも、内心は動揺していた。
 岬がアルコールを摂るのは、実は久しぶりだ。残念ながら、この方面も父親に似なかったらしく、岬は酒にそう強くない。すぐに赤くなるし、更にふわふわと良い気分になってしまう。
 そのため、岬は日頃は酒を控えている。クラブの仲間に言われても、頑なに断っている。
 それでも、今日は断りたくなかった。若林に会うのは久しぶりで、キャンドルの明かりで飾られたテーブルにも、若林の視線にも、二人きりの時間らしい雰囲気が溢れている。
「ありがとう、頂くね」
滅多に会えない恋人がきれいな顔にきれいな笑みを浮かべてグラスを受け取るのを、若林はじっと見つめた。
 岬が酒を飲むと、少し開放的な気分になることを、若林は知っていた。そう強くはないので、飲む量は限られており、ひどく酔う訳ではない。少し言葉少なになり、少し目が潤み、少しスキンシップが増える。恋人同士で、体の関係があっても、恥ずかしがりで、控え目な恋人からの接触を想像しただけで、若林の心は高揚した。そのために口当たりの良いワインを準備し、テーブルを整えもした。
「じゃあ、乾杯」
「乾杯」
グラスが高い音を立てた。岬がグラスを傾け、唇がワインの水面に触れる。そして岬の喉が動くまでを、若林はワインを飲みながら眺めた。
「美味しいね」
「だろう?」
ピエールに頼んだ甲斐があったと思いつつも、若林は口に出さずに鷹揚に微笑んだ。

 そして、岬は若林の視線の意味を考えていた。いつもなら、会うなり食事もそこそこに、抱き着いて来て、すぐに押し倒そうとする若林を必死で制するところだ。それが、今日はごく紳士的に、迎えてくれ、テーブルセッティングもワインも申し分ない。
 もしかして、酔わせるつもりなのかと、岬は思った。こんなに若林がワインを勧めてくることは今までなかったのだから。
 それでも、たまには恋人らしい雰囲気も良い。もし若林が望むなら、羽目を外すのも悪くないかな、と岬はキャンドルに照らされた若林を眺めた。お互い付き合いは長いし、小学生の頃の顔も知っている。若林は少年の頃から大人びていたが、歳が追いついて来たのか、更に落ち着いて、大人の顔になった。慣れた岬の目から見ても、整っていると思わずにはいられない。
「若林くんって男前だよね」
言われた若林は、一瞬間を置き、それから岬に聞き返した。
「岬、今なんて」
「若林くんって、カッコイイねって言ったんだよ」
いつもなら、若林がお願いしても、そんなことは口にしない岬である。よほど自分の気持ちに自信がないのか、ごく恥ずかしそうに、呟くばかりなのだが。
 この調子なら、あの言葉も聞けるかも知れない。
「岬、俺のことをどう思ってる?」
若林の問い掛けに、岬は赤く染まった顔のまま、満開の笑顔になった。
「大好きだよ」
可愛い岬の可愛い声で、可愛さ全開の笑顔で言われた可愛い言葉に、若林は自分が望んだことだということも忘れて、壊れた。
「岬~!」
向かい合う位置に座る岬に近付き、抱き上げる。
 だが、抱き上げられた方の岬も既に壊れていた。
「若林くん、よしよし♪」
抱き上げられたまま、嬉しそうに頭を撫でている岬に、若林が我慢できる訳がなかった。頬に優しくキスをすると、岬は嬉しそうに笑った。明るい笑い声を立て、柔らかい頬を押さえてみせる。
「ふふ、若林くん、フワフワするよ」
甘い唇がフワフワ動き、岬はふわふわ笑う。それが何とも可愛くて、若林は意地悪なことを聞いてみる。
「岬、酔ってない時も、俺のこと好きって言ってくれよ」
目をとろんとさせ、若林の膝でしどけなく座っていた岬だったが、若林の言葉に、宥めるように若林の首に手を回す。
「それはダメなの。若林くんが好き過ぎて、普段は言えないの」
耳元で、舌足らずに囁かれて、若林はいかにも岬らしいことだと思った。ここから先は、酔っていない時に、聞きたい。
「じゃあ、今キスしてくれよ」

 翌朝、酔いが覚めた岬は、ひどく痛む体と片時も離そうとはしない若林のせいで、禁酒を誓ったのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
可愛い酔っ払いを書きたかったのですが、単に酔っ払いでした。
羽目を外しても良いかな~の時点で酔っていたものと思われます。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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