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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
7年前
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 スタジアムを埋め尽くすサポーターに、僕は手を振って応える。隣には翼くんがいる。小次郎が松山がいる。南葛の仲間が駆け寄って来る。その向こうには、彼がゆっくりと歩いて来ている。

 7年前の僕が知ったら、きっと驚くだろう。もしかすると、言っても信じないかも知れない。

 子供の頃は無邪気にオリンピックやワールドカップを夢見ていた。だけど、いつまでも子供ではいられない。世界は遠くて、日本は小さいのだと知り、いつのまにかそんな夢は忘れてしまっていた。

 世界への道の第一歩、ワールドユース大会の予選で勝利を収めた時に、そんな子供の頃のことを思い出した。
 ロッカールームに引き上げて、移動のバスに乗り込んでからも、スタンドから聞こえる歓声に、胸の高揚は冷めそうにない。
 国際試合に出場した経験もある。それでも、こんなに規模の大きな大会は初めてで、注目度も段違いだ。

「大活躍だったな」
宿舎のささやかな祝賀会が終わって、ボールを手にグラウンドに出たところで、話しかけて来たのは若林くんだった。
「それよりも、楽しそうだったけどな」
さすがに、よく見てくれている。嬉しくて弾んだ心のまま、パスを出す。
 本当に、楽しかった。サッカーの楽しさを噛み締めるように、プレーの一つひとつを丁寧に大胆に積み上げて、臨んだゲームだった。
「ありがとう」
若林くんは僕のパスを受けて、ふっと笑うとボールを返して来た。
 僕が迷路にいたことを、若林くんは知っている。迷った僕に、若林くんは何も言わなかった。ただ、僕が負担に思うことのないように見守ってくれていた。
「もう大丈夫だよ」
パスを返して言うと、若林くんはボールを拾って近付いて来た。グラウンド横のベンチに座って、隣を示す若林くんに、僕も隣に座る。若林くんは僕の耳を両掌で包んで、内緒の囁きを落とした。
「そんなに可愛く笑うなよ」
二人でいる時だけ、いつもよりも甘くなるその囁きに、いつもの二人の空気を感じて、張り詰めた心が緩む。
「何言ってるんだよ」
そう返した僕の声も、きっと甘かった。

「7年前の僕が知ったら、きっとビックリすると思う」
抱きしめられた腕の中、呟いた言葉に、若林くんも思うところがあったようだ。
「そうだな…確かに信じないかもな」
必死に戦った小学生時代の全国大会が頭を過ぎる。その時の仲間が一緒なのも奇跡のようだと思う。
「でも、岬と付き合ってるのは予想通りだったぜ」
「えっ!?」
思いがけない台詞に、今度は僕が考え込む番だった。
「あの頃から好きだったからな」
「もう若林くんったら」
二人で笑い合い、そして思う。7年先も多分こうして一緒に戦い、一緒に笑っている。

 7年後の僕もきっと幸せだ。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
アジアユース決勝大会第1戦ウズベキスタン戦の後という設定。
二人でボール蹴りながら話したり、ベンチでひそひそ話したり、というのが書きたかったんです。

クレスリウム王国さまで、差し上げた話を順次公開してくださっています。
書いている時は楽しかったけれど、改めて見ると恥ずかしいものも多いです…。精進しなければ。

あと、前の記事に画像を追加しました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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