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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
勝負の前に
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「決勝戦には岬くんが駆け付けてくれるって」
電話を終えてすぐ、息を弾ませて報告する翼の様子に、若林もつい一時間前の岬の電話に思いを馳せる。
 ワールドユース大会が始まってからというもの、若林は翼から岬の話を度々聞かされた。翼が「隣」の不在に耐えられず、岬を望む気持ちはよく分かる。国際大会ともなれば、岬は翼とコンビを組み、1+1を3にも4にもしてみせる。その姿に勇気づけられるのは、若林も同じだった。
 ただ若林は、翼は間違っているとも思う。翼は岬を恋しがる一方で、あねごこと中沢早苗と付き合っている仲だ。サッカーのパートナーとしてではなく、岬が恋しいと言われても、説得力がない。
 若林も岬と連絡をとっている。岬がフランスにいた頃に、何度か会っていたこともあって、若林が日本に帰って来た時には、必ず会う一人だ。そして、岬も世界への旅に出る前に、若林に会いに来た。

「好きだ」
突然告白した若林に、岬は驚いた様子もなかった。
「うん、知ってた」
若林と同い年には見えない、中性的な可愛らしい顔で、岬は微笑んだ。
「だって君、日本に戻って来る時でさえ、他の仲間を呼ばないで、二人だったじゃないか」
理由を聞く若林に、岬はいたずらっぽい笑顔で言ってのけた。確かに、修哲のみんなとは次の日に会うから、と言って押し切ったのは若林だった。結局、次の日も井沢から連絡を受けて、岬も輪に加わることになったが。
「岬」
それでも二人で会うことを了承したのは岬だ。抱きしめようとした若林に、岬は腕を立てて抗った。
「若林くんのことは好きだよ。でも、今はそんな気持ちになれないんだ」
岬は静かに言った。昔から知っている若林だからこそ、はっとするほど大人っぽい表情で、岬は言葉を選びながらゆっくり話す。
「若林くんには随分引き離されちゃったからね」
「そんな話じゃないだろ?」
「ううん。今は心が萎んでいるからね。…自分を、自信を回復した時に、改めて答えを返したいんだ」
岬が急に現れた理由までは聞いていなかった。それでも、大会を控えた時期にしてはおかしいと察するべきだった。久しぶりに岬と二人きりで、腕の怪我を気遣ってくれることに気をよくして、判断を誤ったのだと、若林は自分を恥じた。

 そして、若林があの時の答えを聞く前に岬は事故に遭い、戦線を離脱した。

「決勝戦には行くよ。…小学生の時と反対だね」
声を聞いているだけで、電話の向こうの岬の笑顔を思い浮かべることができた。花のような笑顔で、瞳を輝かせる岬を想像しただけで、若林は堪らなくなる。それでも戦おうとする岬の健気さに、優しさに、想いは募る。
「俺が完封するさ。そうすれば、俺がヒーローだろ?」
らしくない口調で、わざと明るく言った若林に、岬が笑い声を立てる。
「それは心強いね」
出るな、とは若林は言えない。決勝戦に向けてリハビリを行ってきた岬の思いを知るだけに、岬が出る必要もないような戦いをすれば、岬に負担をかけずに済むのだろうかと考えずにはいられない。
「任せておけ」
自分を鼓舞するように、若林は力を込めて言い切った。

「岬くんと走るのが楽しみだよ!」
「そうだな」
熱っぽく語る翼に相槌を打ちながらも、若林の思いは違う。翼は目を伏せた若林を覗き込むように見上げた。
 若林の心のありかなど、翼にはとっくに想像がついていた。まだ中学生の頃に、岬は若林に会いに行き、若林は二人で撮った写真を翼に送ってきた。その時の表情だけで、すべて分かっていた。
 それでも、翼にはまだ勝算があった。若林の性格からして、その頃から岬にアプローチしていたに違いないが、優しそうに見えて岬はプライドが高く、人を頼るような性格ではない。若林のように支配的な性格の人間とは深い付き合いにならないはずだと思っていた。
「翼と岬の黄金コンビは、全日本の要だからな。頼りにしてるぜ」
そう言いながらも、若林の表情が晴れないのは、岬のことを案じているからに違いない。明るい声で駆け付けると言った岬との電話を思い出して、翼は自分の予想が正しいことを確信していた。

 そして、勝負の幕は上がる。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
前回の「勝負の行方」を書いた後、翼くんと若林くんの腹の探り合いが書きたくなりまして。
一気に書きました。…先にこっちを書けていたら良かったのに。
ということで、目次的にはこちらを先に置こうと思いました。

ついに、Golden-23まで来ました。公式が最大手再び、源岬な23。色々ありますが、好きです。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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