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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
お題:「暑いんだからくっつかないでよ」
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

本日も xxx-titlesさまよりお題をお借りしています。 お題一覧はこちら

またもやJr.ユース編で合宿です。

「なあ、何してんのん?」
早田が聞くには理由がある。長電話の罰で当番に当たった反町は、食堂で長々と居座ってノートをつけていた。
「ああ、これ?」
名前の一覧の横には「先」「後」の文字が並ぶ。
「好物を先に食べるか後に残すか、つけてみたんだ。今日のおかずはハンバーグだから、ピッタリだろ?」
当番で拘束される時間すら退屈したくない反町の志に、早田はいたく感銘を受けた。
「それで、どんな感じなん?」
それに、その調査内容は結果が知りたくなる。
「ん・・・一人っ子は後に食べる傾向だな」
視線の先には、ナイフとフォークを優雅に使う三杉の姿がある。
「分かるわ。そうやろなあ」
三杉と談笑している岬もさすがにヨーロッパ仕込みだけあって、見事なテクニックを披露している。
「あと、裕福な家や女兄弟しかいない家も後だな」
なごやかに談笑して、楽しそうな食事風景の森崎ら修哲出身の他、松山の様子に、早田が頷く。
「まあ、合宿では通用しないけどな」
二人の見守る中、日向が松山と森崎の皿からハンバーグを奪う。早々に諦めた森崎と違い、松山はすくっと立ち上がると、一喝。
「何しやがる!」
奇しくも、また食堂。食堂の神様はどうしても二人に喧嘩させたいのか。
「残してるから、嫌いかと思ったんだ!」
日向の反論に、ツッコミを入れたのはもちろん早田である。
「そんなん言うてるけど、日向は三杉と岬の皿からは盗らへんよなあ」
そして、その一言が燻りかけていた爆薬庫の火種になったのは言うまでもない。

 この騒ぎの間中ずっと、平然と食事を続けていたのが、若林である。
「そう言えば若林って後先どっちやったん?」
「それが分からないんだよな。どれが好物なのかも結局分からなかった」
「何やねん、それ」
「とにかくよく食うことしか」
しかも素晴らしいフォーク捌きを見せつけ、泰然と食事をする姿には一分の隙もない。

「若林くん、聞いた?」
「何が?」
練習が終わり、家に帰った岬は、一緒についてきた若林に話す。
「さっきの喧嘩の原因、最後まで残しておいた好物を食べたことだって」
「バカな奴らだな」
一笑に付した若林に、岬が案じるように眉を寄せる。
「それより、若林くん食べ過ぎだよ。・・・やっぱりストレス?」
「ああ、それもあるかな」
合宿所では常に喧嘩腰の、嫌われ役も板についてきた若林である。それ故に孤独で、こうして人目を避けて岬の家に来るのが息抜きになっている。
「気をつけてね。ただでさえ重いのに、それ以上重くなられたら・・・僕潰れちゃう」
無意識に、微妙な発言をした岬に、若林がふくみ笑いをする。
「お望みとあらば、いつだって、腕立て伏せするぞ」
「当分要らない。失言でした。暑いんだからくっつかないでよ」
口ではそう言いながらも、広げられた腕に抗おうとはせず、岬はおとなしく抱きすくめられた。
 暑いのに、お互いの体温だけは別なような気がする。汗ばむほど暑いのに、何だか安心してしまって、心地よく感じた。
「それよりは、普段一人だろ?みんなで食べるのも何か楽しくて。食が進むよな」
「うん。それは思う」
だから、心配なんだ、とは言わずに岬は微笑む。
「じゃあ、今日一緒に食べる?たいしたおもてなしはできないけど、話はできるよ」
若林に異存のある訳はない。
「それは楽しみだな」
「じゃあ、三杉くんの許可だけ取って。僕支度するから」
台所に駆け出す岬の後姿を、若林は黙って見送った。岬はいつも優しいが、この合宿に入ってからは、若林の辛さを斟酌して、更に優しくしてくれる。村八分の今の状況が辛くないはずはないのに、こうして笑顔を向けられるだけで、心の底から笑顔が湧き上がってくる。

 若林源三。好物は岬太郎。嫌いな食べ物はなし。

(おわり)

from past log<2008.12.30>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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