※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 若林くんは不意に僕を抱き寄せると、後ろから肩に顔を埋めた。 「疲れたの?」 見ているだけで肩が凝るような、大変な試合だった。若林くんのチームが勝ったから良かったものの、負けていたら眠れなかったことだろう。 「そうだな。慰めてくれよ」 「仕方ないね」 毛先が首筋に当たって、くすぐったい若林くんの髪を、手を伸ばして撫でる。僕よりも大きな体の緊張が、少し和らいだような気がした。 「重くないか?」 「大丈夫」 僕だって、鍛えているし体力はある。それは若林くんもよく知るところだろう。 「話も聞こうか?」 「いや、しばらくこのままが良い」 後ろから抱きつかれているせいで、顔は見えない。それでも、声で察することはできた。 「やっぱり若林くんはすごいよ」 囁きながら、回された腕に指を絡ませる。逞しく、固い腕だ。この誰もが憧れる強い腕の持ち主が、こんな風に弱みを見せてくれるとは思っていなかった。 「こんなに、お前に縋り付いているのにか?」 確かに、人に見せるにはアンバランスな姿だ。若林くんの大きな身体を支えるには、僕の身体はちょっと頼りない。 「若林くんはもっとカッコつけだと思ってた」 昔は、自分が人に頼れるとは思えなかった。人に甘えて弱さをさらけ出すことができるとは思っていなかった。 それを教えてくれたのは若林くんで、そんな自分を許せるようになった頃には、若林くんにもっと頼ってほしいと思うようになった。そして、張り詰めたような背中に手を伸ばし、引き締められた口元を緩めてあげたい。 「何だよ、それ」 「…でも僕は嬉しい」 二重になった窓の外には、雪がちらついている。暗い空に真っ白な雪が舞うのを見ていると、世界に二人きりのような気持ちになってくる。潜められた息遣いも、優しい声も、僕の思いも隠すことは難しい。 「…そうか」 若林くんの声がまた少し優しくなった。 「うん」 いつもこうして、すぐ側で慰められる訳ではない。それでも、僕の側では若林くんが少しだけ気を抜いていてくれたら、嬉しい。僕自身がそうであるように。 「じゃあ、失礼して」 「ちょっと、若林くん…」 抱きしめるというには不埒な手を捕まえる。せっかくの雰囲気がだいなしだもの。 「…寒くないか?」 若林くんがそう尋ねて来る時は、僕に触れたい時だと、よく分かっている。照れ隠しにしては、大胆な触り方だったはずだ。 「寒くないよ」 ちょっといじわるをして答えを返し、若林くんを見上げた。 「でも抱きしめてほしい」 若林くんが口元を緩めて、腕を広げる。そっと身体を滑らせると、若林くんはしっかりと支えてくれた。 「おかげで元気出た」 囁く声はいつも通りで、胸の中にまで暖かさが満ちる。この暖かさを、若林くんも感じてくれていたら嬉しいと思う。 「ありがとう。僕もだよ」 呟いた僕を、若林くんは強く抱き締めてくれた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 甘えながら甘やかしてくれる岬くんが書きたくて、書きました。その結果、若林くんを元気にしたい岬くんの気持ちが空回り、特に一部を元気にしてしまった、という話になりました。年末年始疲れていたせいですね。明日から仕事ですし…。
目次の一部を整理しました。2016年分を追加。去年は相当書きました。今年は少しペースが落ちると思いますが、何とか続けていきたい気持ちはあります。ただ、体力的には心もとないので、あまりきついようでしたら、少し休んだりするかも知れません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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