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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
『夜明け頃』
おりょう様から、若林くんお誕生日話をいただきましたので、飾らせていただきます。
今回、ちゃんとしたお誕生日話を書けなかったので、本当にありがたいことです。


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・暁


誕生日はいつも誰かと一緒だった。
幼い頃は家族や友達と、日本を離れてからは、チームメイトや悪友と。
そして、大切な気持ちを覚えてからは、誰よりも大切な相手…岬と一緒に。

…だが、去年の俺の誕生日は会えなかった。
その上、今年の岬の誕生日も会えなかった。
立て続けに会えないと、フラストレーションが溜まる。誕生日が特別な日という概念は、岬と恋人同士になってから俄然強くなった。
そして今年の誕生日、満を持して俺は帰国した。ようやく一緒に過ごせる。しかも前日から後日までのフルコースだ。一緒に過ごせるようずいぶん手を回したが、同じ時間を共有したい気持ちは一緒だから問題ない。
多少アコギな手を使った俺に、岬は怒りながらも笑ってくれたからな。

岬と一緒にいるだけで、その日その時間の幸せが確固たるものになる。
誕生日なら尚のこと。岬の存在は、確固たる幸せを特別な時間へと変えてくれる。
岬ははにかみながら、『やっと一緒に祝えるね』とかわいいことを言った。照れ混じりの笑顔は、何にも代えがたい最高のプレゼントだった。

そして、ふたりの時間を埋めるには、ふたりだけの時間が必要だ。
だからこそ、初日の夜は際限なく求めてしまう。お互いリミッターも効かずに。
今宵も情が抑えられない。欲しがり、欲しがられ、時間を忘れて貪り合っていた。

不意に、岬のスマホが震えた。
「…なんだ?こんなときに」
昂る熱に水を差す振動音に、俺の眉が我知らず寄る。岬は傍らに置いてあるスマホを手に取り、操作して振動を止めた。
「…アラームだよ。今、日付が変わった」
俺の腕に囚われている岬は、目を細めながら告げた。おそらく夢中になることを想定して、予めセットしたんだろう。現に俺も岬も時間のことなんて気にしていなかった。
『12月7日』
日付が変わり、俺はひとつ年を重ねた。腕の中のお前と、少しの間同い年になる。
「無粋、だったかな…?」
俺の頬を包む繊細な掌。
「…いや、嬉しいよ」
左手を取り、指や甲に口づけた。ささやかな瞬間を切り取り大切にしてくれるお前が、本当に愛しい。
俺は岬の身体を抱きしめた。目の奥が甘酸っぱく痛む感覚は、お前と出会っていなければ、知らなかっただろう。

「誕生日、おめでとう」

「…ありがとう」
澄んだ声に返した俺の言葉は、みっともなく震えていなかっただろうか。
「…ねえ。顔、上げてよ」
俺の目尻に触れる岬の指は、いつもより柔らかくあたたかかった。

-ふと目を覚ましてベッドサイドの時計を見たら、ずいぶん時間が経っていた。
ぼんやりと辿った記憶は朧で、岬が起きていたのか寝ていたのかすら覚えていない。
…どうも初日は飛ばしすぎてしまうな。
俺に寄り添って眠る岬も疲れたんだろう。今日はずいぶんはりきっていたから、尚更だ。
俺は岬を目覚めさせないよう気をつけながら身体を起こし、窓の外を見た。暁の頃、空も夜色だ。

じきに空が明るくなり、東から陽が昇る。
静かな寝息を立てる岬に触れながら、俺は空を見続けた。


・明星


ふと目を開けたら、窓の外を見つめる若林くんの姿がぼんやり映った。
…いつの間に寝たんだろう、全然覚えがない。でも若林くんが傍にいるだけで、起き抜けの怠さも心地よい幸せに変わる。
僕に触れてる大きな掌はあたたかい。動きたくない、このまま体温を感じていたいけど。
「…起きたのか」
動いたわけでもないのに、若林くんは僕が起きたことに気づいた。

若林くんは僕に敏感だ。
それこそ、僕以上に。

「…ずっと、起きてたの?」
「いや。どこかで寝たみたいだけど、暁の頃に目を覚ました」
今さっきまで窓の外を見てた若林くんは、今僕を見てる。優しい視線は明け方の薄明かるい空間に溶けそうで溶けない。優しいだけじゃなく、強いから。だから、どんなときも眼差しが霞むことはない。
僕は窓の外に目をやった。空が少しずつ明るくなる。星たちが薄らいでいく様子はキレイで、少しだけ淋しくもなる。
「…暁なんて、久しぶりに聞いた。今時間のことだよね?」
確か空が明るくなり始めた頃のことだ。
「ああ、現代語ではな」
「現代語?じゃあ違う意味があるの?」
僕が更に問うと、若林くんは小さく苦笑しながら頷いた。
「古語では、空が明るくなる前の頃を指すんだ」
そして、若林くんはもう一度苦笑した。
「…そうなんだ…」
…若林くんの言う暁は、きっと古語の方だ。僕よりずっと前から起きてたんだと思うと、申し訳なくなる。特別な日なのに、いきなりひとりの時間を過ごさせてしまった。
「…ごめん」
僕が謝ると、若林くんは僕の頭を撫でてくれた。『気にするな』って気遣う掌と、『淋しかった』って拗ねる指先。どちらの君も素直で嘘偽りがなくて、たまらなく愛しい。
僕はのそのそと身体を起こし、若林くんの右腕に身体を寄せた。僕の鼓動が若林くんの腕にダイレクトに響いてると思うと恥ずかしいけど、僕から触れると喜ぶんだ。
案の定、若林くんは口許を柔らかく綻ばせた。
「心臓の音、すごいぞ?」
「うるさいなあ…」
「いいって。嬉しいからさ」
抱きしめられると照れ隠しの悪態も無駄だと悟る。君の望みを叶えるふりをして、僕は自分の望みを叶えてる。いつもこうだけど、今日はダメだ。若林くんの誕生日が僕得になる前に、宣言しないと。
「今日は若林くんの望みを、なんでも叶えてあげる」
「…本当か?」
「無理なものは無理って言うけど」
「だよなあ」
若林くんはおかしげに笑って、僕の鼻先にキスをした。
「じゃあ、まずはこのままでいてもらおうかな」
そんなの、お安いご用。
「で、岬に口説かれたい」
…え?
「口説くの?」
「そう。無理難題じゃないだろ?」
それ、無理難題だよ…。
でも約束は約束だ。言いたかった言葉もある。
僕は若林くんの強く熱を持つ瞳を見つめて、言葉を紡いだ。

「…君が生まれてくれて、嬉しい」
顔が赤くなる。体温が上がる。
「…ああ。生まれた甲斐があったよ」
心も赤くなる。体温が下がらない。
きっと、お互いに。

「ありがとう。…愛してるよ」
若林くんはとびっきり優しい笑顔を見せてくれた。僕はなんでか泣きそうになって、咄嗟に抱きついて顔を隠した。
「なあ、顔を見せてくれよ」
僕は首を横に振り、若林くんの望みを断った。今君を見たら、きっと泣いてしまう。
君のせいで、僕は泣くことを覚えてしまった。
「それでいいんだ」
若林くんは静かな口調で呟いた。

…そっか、これが君の望みなんだよね。

そっと窺うように若林くんを見ると、伏せた睫毛に絡むように、明けの明星が煌めいてた。
いつもより潤んだ光を放ちながら。


・そして


「おはよう」
「…おはよ。相変わらず早起きだね」
「もう昼だぞ。で、腹が減ったんだが」
「あー…。何食べたい?」
「岬」
「…そう言うと思った。昨日散々…しただろ?それ以外ないの?」
「ない。だいたいお前、俺の望みを叶えるんじゃなかったのか?」
「事と次第によるよ。それに、僕もおなか空いたから、ちゃんとしたもの食べたいんだけど」
「なら俺の-…いてっ!」
「起き抜けの下ネタやめて。ごはん抜きにするよ?」
「ごはん抜きでもいいから岬が食べたい。-俺の望みだ、叶えてくれ」
「………わかった。けど本っ当にごはん抜きだからね」
「了解」

「でも、今日だけは特別」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない」


-HAPPY BIRTHDAY!!-

おりょうさま、いつもありがとうございます!
窓の外を眺めて、夜明けを見つめて誕生日を迎える若林くんが何ともらしい、と思いました。
そして、岬くんが目覚めた途端に若林くんの夜が明けたように思えました。
何より、岬くんの口説き文句が可愛い!最高のお誕生日祝いですよね。

という夜のパートから、一転してイチャイチャな昼パート。
そうそう、お誕生日だから、大目に見てあげて、若林くんを甘やかしてあげて!と岬くんに言いたくなってしまいました。
…ちょっと、問題発言ですけどもね。

二人の誕生日には、特に幸せでいてほしいと思うので、とても幸せな気持ちになりました。
おりょうさま、素敵な作品をありがとうございました。
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