fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
恋愛経験
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「若林くんって恋愛経験豊富そうだよね」
岬に言われて、俺は少々戸惑った。
 まず、想いを寄せる岬にそんなことを言われたのがショックだ。…遊んでいるように見えるのか?まあ、実際にそこそこの経験はある。10代で親と離れて海外に行き、そこそこモテたら、タガが外れるのも無理ないだろう?
 一方で、普段恋愛に全く関心のなさそうな岬から、そんな話を持ち掛けてきたことに、変に興奮したのも確かだ。ああ見えて、岬も恋愛に興味があるのかとか、もしかして俺の恋愛に関心があるのかと、ひどく気になった。
「人並みだな」
そう返した俺に、岬は不思議そうな表情で覗き込むように俺を見上げた。
 テーブルを挟んでいるとはいえ、岬家のテーブルはそう広くはない。頬杖をついて見上げる岬の顔が近い。
「そうなの?」
何気ない仕草ひとつに、引き付けられる。そんなにまっすぐな顔で見られると、後ろめたくないはずなのに、責められている気がする。

 岬とこんなにすぐに再会すると知っていたら、心の中に仕舞った宝物のような初恋を、もっと大切にしたかも知れない。

「それがどうかしたのか?」
尋ねた俺に、岬は口元だけの笑みを浮かべた。
「僕って恋愛経験が少なく見えるらしくて」
そうじゃないのか?問い詰めたい気持ちを封印して、頷くだけに留める。
「まあ、転校してばかりだったし、恋愛経験なんてないけど」
岬としては、良い話として話した訳ではないだろう。それでも。
「確かに分かる気がするな。岬はもっとキレイなイメージだな」
「えっ?」
思いもよらぬ言葉だったのか、聞き返した岬を眺める。
 柔らかそうな淡い色合いの唇を尖らせている岬を、誰かに盗られることを想像できなかった。誰も触れたことのない甘そうな唇に、奪いたい気持ちは膨れ上がる。
「岬は恋にウツツを抜かしたりせずに、夢を追ってそうだ」
誰も触れられない岬の心の中にあって、ずっと輝きを失わない光。繊細で儚い印象すらある外見にも、意志の強い岬の内面にも、およそ恋愛に溺れる印象はない。
「若林くんは本当に恋愛経験が豊富みたいだね」
からかうように岬が笑う。経験なんか役に立たない。この恋心を伝えることすらできていない。
「恋って、そんなに良いものなの?」
よりによって、そんなことを言う岬に、この気持ちを思い知らせたい。甘くて苦くて、例えようもないような幸せな気分にもなるこの気持ちを、お前に知らせることができたら。今、目の前にお前がいることの喜びを。
「そうだな、岬がいるだけで幸せな気持ちになるな」
「えっ!?」
大きな目を見開き、瞬きをした岬に流し目を送る。
「俺はお前のことが好きだぜ」

 初めて会った時から、特別だった。ボールをぶつけて来たくせに、その優しい笑顔で、岬は俺の心に入り込んで来た。そして、その印象は色褪せることがない。

「本当に?」
聞き返す岬の目を見つめた。日本人にしては全体的に色素の薄い岬の目は、少し薄めの茶色で、少し甘そうに見える。まっすぐ向けられる瞳に、もの言いたげに僅かに開かれた口唇は、まるで誘っているようだと思った。
「ああ、初めて会った時からな」
岬が誘っているつもりがなくても、挑むような目に、誘いに乗るしかないとないと思った。まるで陳腐な口説き文句だが、紛れもなく真実だ。
「経験豊富な君が言っても、信憑性ないよ」
いかにも可笑しそうにくすくすと笑いながらも、岬の瞳はまっすぐに俺に向けられている。
「あいにく、今までは向こうから来てくれてたからな。簡単になびきそうにない奴を口説くには、どうしたら良いんだ?」
視線を合わせたまま、岬の肩に手をかけた。引き寄せても、岬は俺を見つめていた。
「僕は、この気持ちが恋なのかも分からない」
柔らかそうで、いかにも手触りの良さそうな頬をほのかに染めて、岬が口にした途端、俺のメーターは振り切れた。いざとなれば、些細な恋愛経験など、何の役にも立たないと思いながら、絶対に嫌われたくない俺は、途方に暮れた。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
恋愛経験なくても、天然で誘惑しているような岬くん、というのが書きたかったんですが、やっぱりこれじゃない感が。

以下、拍手お礼
くるみ様、コメントありがとうございます。
何とか復帰しました。無理はしないように頑張ります。
バラエティに富んでいる、というよりは飽きっぽいだけですが…楽しんでいただけると嬉しいです。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
スポンサーサイト




コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1357-02ca4cd1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)