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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
それも、君のせい。
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
今日は、 「秋の切なさ。」でも使った僕から君へ、あいの言葉を試したところ、結果が素敵だったので、使ってみました。


 秋は寂しい。気温が下がるとともに、あれだけ眩しかった太陽の光も穏やかになり、街は鮮やかさを失う。
 パリの秋は嫌いじゃない。芸術の都といわれるだけあって、秋の景色もまた他の季節とは違う風情がある。パリに住んで三年目。秋のパリは絵になるし、気候も良いから、去年は父さんの真似をしてスケッチに行ったりした。…それでも、今年は違った。

 夏は楽しかった。大会に出た。何度かドイツにも行った。こんなに暑かった夏は久しぶりで、そしてこんなに短い夏もなかった。
 秋の訪れを待つことなく、大会の熱は冷めて、僕はこの街で、また一人ボールを蹴っている。

 彼が来たのは、そんな時だった。

「岬、久しぶりだな」
「…どうして、ここに?」
それは、以前彼が口にした言葉で、今度は僕が言う番だった。確かに家の住所は教えたし、何度か来てくれたことはあったけど、練習している場所まで話した覚えはない。
「岬はどこでも有名人だな。近所の人が教えてくれたぞ」
若林くんはあっさりと答えて笑う。納得もいかないまま、それでもそれ以上聞く気になれなくて、僕はリフトしたボールをキャッチすると、若林くんに近付く。
「若林くん、忙しいんじゃないの?」
「せっかくのオフだから、お前に会いに来たんだ」

 ハンブルクに僕が会いに行ったのは、初夏。パリよりも涼しいハンブルクでも、明るい日差しに木立は伸びて、いっそう涼しい日陰を作ってくれていた。
 今は、落ち葉が舞い散る中を、二人で歩く。積み重なった落ち葉の上は、踏むとカサカサと賑やかだ。柔らかい日差しの中、茶色い落ち葉でラッピングされた道が続いている。
「遠くまでありがとう」
「俺が岬に会いたかったからな」
若林くんの言葉は、いちいち胸に刺さる。肩を並べて歩く間、離れ過ぎないようにと伸ばしてくれる指にさえ、縋り付きたくなる。
「元気だったか?」
しばらく会っていないことすら感じさせない口調で、若林くんは言う。夏に別れてから、確かにしばらく経っている。
「…うん」
頷いたけど、正確ではない。健康ではあるけど、元気でもなかった。

 本当は、もう会わないようにしようと思っていた。

 若林くんと過ごす時間は楽しい。夏には、パリから少し遠いハンブルクまで足を運んで、若林くんに会っていた。サッカーの話、南葛の話、翼くん達の話、チームの話。若林くんは話し上手で、話すのも楽しいし、優しいし、サッカーをしたり、一緒にご飯を食べたりするのも、楽しかった。何より、あまり気を遣わずに済むのが良かった。一緒にいた時間はそう長くなかったのに、波長が合うというのか、背伸びも無理もしなくて良いのは楽だった。
 それだけに、Jr.ユース大会が終わって、他のみんなを見送った時に、いつかは若林くんとも離れる日が来るのだと気付いた。…急に怖くなった。
 このまま会っていたら、いつか訪れるだろう別れは、いっそう辛くなる。

「岬、大丈夫か?」
気付くと、若林くんは足を止め、前に回り込んでいた。若林くんは目を逸らさない。目を逸らすことを許さない。
「元気ないみたいだな。どうした?」
一歩踏み出されて、半歩だけ下がる。その分一歩踏み込まれて、抵抗を諦める。
 僕達の間を隔てるように、風が吹いた。体温を奪う冷たさに、自分を抱きしめるように腕をまわした。
「…君のせいだよ」
まっすぐ若林くんを見つめて、精一杯の笑顔を浮かべた。
「寂しいって、君が教えたんだ」
もし若林くんと再会しなければ、きっと気付かないままでいられた。八つ当たりだと分かっていても、言わずにはいられなかった。
「岬!」
抱きしめられたと気付いたのは、その暖かさに包まれてからだった。胸が苦しいのは、力が強過ぎるからじゃない。
「好きだ」
泣きそうになるのは、抱いてくる腕が優しいせいだ。
「…僕も」

(おわり)

拍手ありがとうございます。
診断メーカー僕から君へ、あいの言葉を試しました。
「源岬の愛の言葉:
落ち葉が舞い散る季節に、力なく微笑んで「寂しいって、君が教えたんだ」

これを見たせいで、書いてしまいました。いや、書いてしまいますって。
それで、次の日も試したところ、
「源岬の愛の言葉:
日も昇らない凍える朝、躊躇いがちに手を伸ばして「君がいるから、僕は幸せだ」
これですよ!時間が進んじゃった…ということで、また書いてしまいました。

(おまけ)

 目が覚めたのは、まだ明け切らないうちだった。窓の外の鳥の囀りすら、まだのようだ。眠れなかった訳ではない。ここのところ、急に冷え込んで、寝付きが悪かったが、今日はよく眠れた。
 壁に掛かった時計を見て、まだ眠れそうだと布団に潜り込む。

 昨夜、若林くんと結ばれた。寂しさでいっぱいだった胸が、好きな気持ちで満たされるまで、愛してくれた。
 若林くんはよく眠っている。普段は広くて寒いベッドは窮屈で温かい。今だって、こうして強くて優しい腕で、僕を抱きしめてくれている。
 規則正しく上下している胸に僕の方からも手を伸ばす。躊躇いがちに、顔を擦り寄せる。その暖かさに安心して、受け入れられること、守られることに安堵する。
「ねえ、若林くん」
気持ち良さそうな寝顔に囁いた。
「君がいるから、僕は幸せだ」
これは、君のおかげ。

(おわり)
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