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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
挑戦
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 今日は練習五日目。初めてのメンバーもいるこの合宿最初の休み前日ということもあって、誰言うともなく懇親会が始まった。
「くれぐれも、明日に響かないように」
当然のように仕切っている三杉や、乾杯の音頭をさせられているキャプテン松山に苦笑しながら、若島津は隣に腰掛けている岬を見た。岬の隣が取り合いになったこともあり、岬は何となく若島津の隣にいる。フィールド以外でも何かと目立つ二人に比べ、もう一人の3Mは静かながら、さすがに人気がある。
「若島津は何か飲む?」
「ん、良いよ。俺は自分で取るから」
お互いに人の面倒を見るのが当たり前になっているらしい、と若島津は苦笑いを浮かべる。
「そうだよね。若島津、こういう時に小次郎がいないと、張り合いがないんじゃない?」
世話が必要な好例を挙げる岬としばらく雑談をした後、若島津は疑問に思っていたことを尋ねた。
「俺って嫌われてるのか?」
若島津の言葉に、岬は大きな目を見開く。ここまで印象の変わらない奴も珍しい、と思う。小学校時代から知っているし、その間に背もずいぶん伸びた。重みの違いこそあれ、大きな事故もお互い経験し、勝利の喜びも敗北の苦味も辛酸も嘗めてきたのに。
「若島津が?そんなことないよ」
岬は即答する。人当たりこそ柔らかいものの、現実家の岬の断言だけに、若島津も信用せざるを得ない。岬は人を気遣いはするが、その場限りの嘘をつくタイプでもなかった。
「どうして、そんな風に思ったの!?」
それどころか、けっこうな剣幕で迫る岬に、若島津は人選を間違ったかな、と少し閉口した。近すぎもしなければ、遠すぎもしない相手だし、そう深刻に取るタイプでもない。聞きやすいと思ったのだが。眉根を寄せる岬の表情に、どうやら心配されているらしいと、小さく息をつく。
「今日早田に『若島津と同じチームか』ってがっかりされちゃってさ」

「げ、若島津とおんなしチームなんか?」
たいそう失礼な早田に、若島津はむっとした。ゴールを守らせれば日本一、ゴールを攻めさせても日本二(日向に遠慮)の若島津に、何という言い草だろうか。とはいえ、若島津は武道家だけあって、自己制御には長けている。怒りを抑えると、紅白戦に臨んだ。もしここで早田が敵チームなら、思う存分鬱憤を晴らすことが出来るのに。いつものように、オーバーラップをした早田のカミソリシュートをすべて止めてやるのに。

静かに語る二人の周囲では、すでに馬鹿騒ぎが起こっている。三杉の自重令などなかったに等しい扱いである。
「若島津・・・うらやましすぎ」
「何が」
頬杖をついていた岬は、目元だけを動かして、若島津を見やる。その仕草や表情は思いもかけないほどに大人びていて、そういえば、岬も同い年だと思い返す。小学校の時の印象が強すぎて、あまり年を感じなかった。
「僕ね、ワールドユース大会、ブラジル戦で合流したよね」
合流、と岬は軽く話すが、あれはそんな生易しいものではなかった。岬のことを「運命のプレイヤー」と評した雑誌があった程、あの時の岬は神がかってさえいた。
「その時に、実はちょっとまごついたんだ。イメトレはしてきたつもりだったけど、やっぱり手足の長さや敵の身体の大きさが、思っていたのと違ってた」
そんな風には全く見えなかった。岬の優しげな風貌に浮かぶ凛々しい表情に、一時は敗北を覚悟したチームはもう負ける気がしなかった。この華奢な双肩にどれだけのものを背負ってきたのか、フィールドで見る岬は、どんどん大きく強くなる。
「うちのFW見てどう思う?」
突然話を変えられて、若島津は周囲を見渡した。長く同輩だった反町に、弟子の新田、南葛以来の滝と来生がいる。
「この中に小次郎がいると、すごく目立つよね」
岬の言わんとすることはよく分かった。このチームのFW陣はDFに比べると体格に恵まれていない。イタリアに渡った日向小次郎を想像だけでこの場に置くのは、若島津にとっては本当にたやすい。目を閉じるまでもなく、鍛え上げられた肉体や精悍な容貌を並べ、そして岬の言に納得する。
「ましてや、君」
このチームの中でも屈指の長身を誇り、日向よりも背もリーチもある若島津がFWに入れば。
「紅白戦で勝っても仕方ないもの。それよりみんなやりたいんだよ。本気の君と」
DFとしては挑みたくなるのも仕方がない。それ程脅威に思われる選手は、やはり「うらやましい」と言わざるをえない。
「お前もか?」
若島津の言葉に、岬は意味ありげに微笑む。誰よりも、時に翼よりも勝利に執着し、熱くなる岬の炎は、今でもその柔らかい笑顔に隠されている。それをよく知る若島津としては、その笑顔を無邪気に信じる気にはなれない。
「若島津とはGKでやりたいかな。たぶん、君に一番負けているのは僕、だから」
南葛高校のエースだった岬は、今より更に華奢だった。若林、翼、と率いられてきた南葛は負けるのに慣れていないチームだった。その頃の痛みよりも、今の方がずっと辛かろうに、事故を乗り越えた後の岬は怖い位に透き通っている。
「返り討ちにしてやるよ」
今の岬にかなう奴はいないだろう。Jで対戦しても、岬がいるのといないのとでは、緊張が違う。殺気に似た気すらまとう今の岬を見ていると、昔の三杉や日向に通じるものを感じる。
「あ、そう。じゃあ、まず明日の紅白戦で新田に1ゴールは奪わせることにする。ねえ、新田?」
ちょうど酒や食べ物を運んで来た新田に、岬が微笑む。小首を傾げる動作も可愛い先輩だが、怒った時は圧倒的に怖いことを知る後輩、としてはすぐさま頷くほかない。
「新田、俺と2トップじゃないのか?」
しかし、今の師匠はもっと怖い。若堂流空手四段の若島津に逆らうなど、初段の新田には夢のまた夢。顔を真っ青にして立ち尽くす新田に、二人は破顔一笑して、悪い冗談を謝る。
「冗談だよ、新田」
「悪いな、新田。つい・・・」
日向がいた時には、むしろかばってくれた二人の、しゃれにならない冗談に、ぐずぐずと「心のキャプテン」浦辺のところまで撤退する辺り、新田も他愛がない。若堂流初段が泣くぞ、と石崎にまでからかわれている。

「岬と悪さすんのも久しぶりだな」
「うん。十年ぶりくらいだよね。やっぱり楽しい」
じっくり話したのも、久しぶりであることにはわざと触れず、二人は笑い合った。敵として対峙したことの方が多すぎて、馴れ合うにはお互い大人になり過ぎていた。それでも、プレーを続ける限り、こうして味方になることもある。
「GKの若島津は敵だけど、FWの君にはアシストするよ。小次郎が嫉妬するくらいのゴール見せて?」
「若林に取れないくらいのシュートを約束するさ」
堅く手を握り合った。いつまで続くか分からない呉越同舟。ならば、技量でねじ伏せるのも勝負のうち。
「よろしくね」
「こちらこそ」
二人は微笑み合った。目の保養だとほほえましく見守る周囲は、その真意を知らない。

(おわり)

若島津くん、お誕生日おめでとうございます。
去年はツートップデビューおめでとうございました。
期待のあった健岬書こうと思っていたのですが、私には無理でした。それよりは、アクティブなGKとしての彼と、大人の男の勝負を。この二人の約束が「究極の反則」につながります。岬くんとあまり馴れ合わないけれど、きっちり認め合っている、というキャラクターが珍しくて、すごく楽しく書きました♪タイトルはそういう意味も込めて。

今月3回目のお誕生日祝いです。
フルにやりました。源岬、と言いながら、疑わしい今月です。
でも、3人とも好きなんですもの。
今月の更新回数すでに45回。
おかげさまで、年内に1万hit到達しそうです。
キリリク受け付けますので、自分で踏まないように注意しないと。

C翼ラヴ同盟さまに加入いたしました。バナー目当てです。
拍手で三杉くんだけがいる状態でしたので、問題かな、と。
岬くんのバナー可愛いです。PCでは木の下にいるみたいに見えます。

今日は忙しいので、また明日。

from past log<2008.12.29>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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