※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 診断メーカーの○○をしないと出られない部屋を試してみたところ、結果が面白かったので、書いてみました。
診断メーカーの○○をしないと出られない部屋で
 「源岬は『相手のことを好きにならないと出られない部屋』に入ってしまいました。 80分以内に実行してください。 https://shindanmaker.com/525269」 という結果が出たので、その状況で閉じ込めてみることにしました。と言っても、カップル成立後では閉じ込めるのも無理そうなので、とりあえず、記憶を操作して、閉じ込めてみました。
「…ここはどこ?」 岬は辺りを見渡す。見慣れない部屋に、見慣れない相手と二人。とりあえず、話し掛けるには、最も適当な話題でもある。 「俺も知らない。どこなんだろうな」 もう一人が言うのを、岬は黙って聞く。 「気がついたら、ここにいたんだけど、君は?」 周囲を見渡し、自分の記憶をたどって、岬は首を傾げる。サッカー部の練習を終えて、石崎達と別れたところまでは覚えている。 「俺もそうだ…。俺は若林だ」 「…若林くん、はじめまして。僕は岬太郎」 にっこり笑って挨拶する岬に、若林も笑い返す。初対面ではとっつきにくいと思われがちな若林だが、礼儀を弁えた相手に対して腹を立てることはない。むしろ、相手の不安を打ち消すために微笑むだけの余裕はある。その若林から見ても、笑い返すに値する笑顔だった。 「よろしくな、岬。…それで、この紙気付いてたか?」 若林が指差した張り紙を覗き込み、岬は口元を押さえた。 「…何これ」 ドアに貼られた『お互いを好きにならないと出られない部屋』という貼り紙に、岬は数秒間絶句した後、口元を押さえたまま、尋ねる。 「若林くん、まさか女の子ってことはないよね?」 「それはないな。お前も男なんだよな」 きれいな顔をしているだけに、太郎という名前は意外で、若林の印象に残っている。 「うん。…男同士で恋愛しろって言われても困るよね…」 貼り紙を前に、思案に暮れる岬に対し、若林は腕組みのまま部屋の中を見渡し、長期戦に備える覚悟だ。 「だが、出られないのは困るな」 振り返った岬を、若林は眺めた。色が白く華奢で、派手ではないものの、整った繊細な容貌には清潔感があって、印象は悪くない。 「時間制限は80分だって。80分経ったらどうなるのかな?」 同意を求めるように、岬は若林を振り返った。落ち着き払った相手は、幾つか年上だろうと岬は思った。少し偉そうであるが、優しく笑う。口調も思ったよりは優しい。 「そうだな…。素直に出してくれるか…」 そう話しながら、若林は近くのソファーに腰掛けた。狭い部屋だが、調度品は悪くない。座り心地の良いソファーに、飲み物のサーバーまで置いてある。 「…もう出してくれないか、だね」 岬はそう言うと、飲み物の置かれているテーブルの前に立った。 「若林くん、何か飲む?」 とりあえず、糖分を補給しようと岬は考えた。ドリンクバーのような機械で、岬は自分の分のオレンジジュースを入れて、若林にも尋ねる。 「じゃあ、ホットコーヒーを頼む」 「ミルクとお砂糖は?」 「ブラックで」
「紙コップで悪いけど。ブラックなんて大人だね」 コーヒーとオレンジジュースをテーブルに置き、他に座るところもないため、岬もソファーの隅に座る。腰掛けるとゆっくり沈む硬さや、包み込むような軟らかさは見た目以上で、岬は少しだけ口元を緩める。知らない人と二人というのは、思ったより気を遣う。 「ありがとう。岬は気がきくな…俺の方はすぐにでも出られそうだぜ」 「えっ?」 とんでもないことを言う、と岬は思った。目の前の若林は、男らしく整った顔もさることながら、落ち着いた雰囲気もあって、女子にひそかに憧れられるタイプだ。運動部でいえばキャプテン。初対面の男にいきなり口説き文句を言いそうなタイプではない。 「さっきから見ていたら、人には気を遣わせないようにしてるけど、ちゃんと気遣ってくれてるよな。部屋から出るのに、どの程度好きになる必要があるか知らないが、俺の方は十分好きだと思うぞ」 「それはありがとう」 男同士でも、好意を寄せられるのは、やはり悪くない。それでも、普段から好意を向けられることに慣れている岬は、それをかわすことも慣れている。いつも通りに笑顔を向ける。 「若林くんこそ、頼りになるから、モテそうだね。スポーツか何かしてるの?」 全くのお世辞でもないのだろう、と若林は思った。そういう口調ではないし、観察したことを口にしているだけらしい岬に、若林も笑顔で答える。 「サッカーは得意だぜ」 「そうなの!?僕もサッカーやってるよ!」 それまでの笑顔が造花なら、これは満開の花だと若林は思った。初めて会う相手に好感を抱くこと自体若林には珍しい。それが、まるで嘘のようだ。見かけだけではなく、慎重な性格もよく働く頭も、興味深い。 「お前、ポジションは?」 「MFだよ。若林くんは?」 「GKだ。ボールがないのが残念だな」 「うん」 距離は、いつの間にか10センチまで縮まっている。しかも距離を縮めたのは岬の方で、若林はすぐ隣に寄り添うように並ぶ肩に、手を伸ばしたい衝動に駆られた。 「好きなチームは?」 「俺は今ドイツにいるから、ハンブルクだな」 「そうなの?ドイツもサッカーが盛んな国だから、うらやましいな」 それでも、親しげに話してはいるが、岬は決して気を許してはいないと若林は判断していた。その証拠に、カギはまだ開かない。 「岬は?お前のことを聞かせろよ」 若林は時間のことを気にし始めていた。時計はないが、若林の体感時間では30分位過ぎている。解放してくれるなら良いが、このまま閉じ込められる訳にはいかない。若林が無意識にドアの方に視線を向けたことに気づき、岬は下を向いた。 「…カギ開かないね」 「岬…」 「…迷惑かけてごめん。今まで人を好きになったことがないんだ」 岬は顔を伏せたまま話す。他の課題なら、何とかなったかも知れない。それでも、これは本当に難しい課題だと思った。 「僕は転校続きでね、人に限らず、あまり好きになると辛いから、そういう風に思わないようにしているんだよ」 そう言って笑ってみせる岬の笑顔が可愛らしいだけに、若林は見ていられなくなった。ソファーの隣に手を伸ばし、岬を強引に抱きしめてしまう。この顔を見るよりは、この声を聞くよりは、抱きしめたいと思った。 「気にするな。大体、男同士で恋愛は無理なんだろ?俺の方はお前を好きになったし、このまま閉じ込められるのも悪くないぜ」 「…僕は困るよ」 「じゃあ、早く好きになれよ」 強い腕に、逞しい胸。顔を押し付けられるままに、岬は体を預けた。こんなに早く誰かと心が近付くのは初めてで、制限時間が一日なら、きっと恋に落ちていた。力強い脈動と暖かさに、盾が揺らぐ。 「…僕だけじゃなくて、若林くんまで出られないのは困るよね」 「それは気にせず、ゆっくり考えろよ。そうだ、今の内に連絡先交換しておこうぜ。時間は有効に使って」 「ふふ、そうだね」 岬は顔を上げ、若林を見上げる。目と目が合った途端に、遠くから金属音がした。 「もしかして」 声を上げたのは若林の方だった。岬は顔を隠したが、真っ赤になった耳のせいで、少しも隠せていない。 「俺のこと好きになってくれたのか?」 「そ、そんなんじゃないよ!若林くんに迷惑かけて悪いな、と思っただけで」 岬の言葉には、省略された部分がある。迷惑をかけている自分を責めることなく、声を掛けてくれた若林の優しさに、心は動いた。 「そうか。俺のことをそんなに…」 「もう、違うったら」 顔を覆って否定する岬の手を掴み、若林は顔から引きはがそうとした。それを嫌がり、下がろうとして、岬は硬すぎず軟らか過ぎない、ソファーに倒れ込む形になった。 「岬」 腕を掴み、見下ろしている若林に、岬も視線を合わせた。 「なあ、もう少し、ここにいないか?」 「…うん。良いよ」 さっき、顔を合わせた時に、若林ともう少し一緒にいたい、そう思ったことは言わないでおくつもりだった。カギが開けば、この時間は終わる。痛いような胸の疼きも、収まるはずだった。 「連絡先交換してくれよ」 見上げる若林は笑顔で、岬は胸の鼓動が一段と激しくなるのを感じた。 「どうして…」 「交換するって言っただろ?俺は、岬とまた会いたい」 「…僕も」
そこで、記憶は途切れた。
とりあえず、時間内には恋に落ちてくれそうです。という訳で、記憶を戻してみました。
「…何の実験だって?」 聞き返した岬に対し、若林はカメラの下に貼られた紙を指差す。 「そこに書いてあるだろう?『お互いを好きにならないと出られない部屋』だと。制限時間は80分だそうだ」 岬はカメラの下の貼り紙を一瞥すると、さっさと部屋の出入口に向かった。 「じゃあ、出ても良いんだね?…カギも掛かってないよ」 あくまでそっけなく言ったつもりの岬だったが、若林を刺激するには十分だった。若林は出ようとする岬の肩を掴むと、部屋の中に戻す。 「岬!」 「えっ、ちょっと、出るんじゃないの?えっ!?」 「お前も俺のことを好きっていうことで良いんだよな?」 「だから付き合ってるんじゃないか…って何する気だよ!ちょっと!」 二人が出て来るまで、80分で済まなかったことは言うまでもない。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 どう考えても、閉じ込めるのが難しい状況でした。
いつもの二人→カギがかからない(小学生編でも普通に出られそうな気がする) 若林くんの記憶がない状態→岬くんにフラグが立っているし、若林くんは原作からおそらく一目惚れなので、すぐ出られる 岬くんの記憶がない状態→岬くんのことを知り抜いている若林くんが、あっという間にフラグを立ててくれるので、すぐ出られる
そこで、二人ともに記憶を失ってもらって、条件提示して、とやってみたのですが、若林くんが最初からぐいぐいいってくれて、1時間位で出られてしまいました。チョロいな、太郎。 突発で書いて更新してしまったので、後の予定がぐちゃぐちゃに…。いや、ストックが増えるのは良いんですけど、旬が過ぎたものがいくつも…。それもそのうち出します。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|