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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
『黄金忍者』
おりょうさまに、10月11日から11月10日は「GC月間」だと吹き込んでそそのかしたところ、いただきました、イラストとお話!
黄金忍者
という訳で、乞うご期待!


「若林くん!岬くん!忍者ごっこしようぜ!」
おざなりなノックをして気持ちよくドアを開け放った翼は、ふたりのムードなど気にも留めずに部屋に入り込んできた。
「…え?」
「…は?」
ふたりっきりの時間を潰された若林は眉をしかめて睨んでいるが、岬はどことなくホッとした表情だ。
「…えっと、何をするって?」
岬は翼と向き合い、改めて問いかけた。
「忍者だよ、忍者!三杉くんに話したら『ふたりが暇してるから相手してもらえ』って」
「…三杉のやつ、わかってて言ったな」
忌々しく呟く若林の声も、ハイテンションの翼には届かない。喜色満面の翼を目の前に追い返す言葉も出てこず、若林はやれやれと首をかいた。
「でも、どうやってするの?忍者ならいろんな武器や服が必要だよ?」
「大丈夫!俺いろいろ用意してきたんだ」
翼は手にしていた大きな紙袋の中身を広げた。若林と岬は飛び出してくるものを見たり手に取ったりして、各々首をかしげた。
「紙の手裏剣と楔がこんなにたくさんある。…ん?テニスボール…?」
「縄跳びと、…石鹸ネット?なんだこりゃ」
翼の持ってきたアイテムの中には、ちょこちょこ謎めいたものがあった。中でも石鹸を入れて吊るす『石鹸ネット』が激しく意味不明だ。
「石鹸ネットなんて、何に使うんだ?」
「これ?こうして使うんだって」
翼は石鹸ネットの先を破り、腕に通してみせた。
「三杉くんに教えてもらったんだ。忍者の装備なんだろ?」
「鎖帷子ってことか…」
「三杉くんも、何を考えてるんだか…」
おそらく忍者ごっこのアイテムを用意したのは三杉だ。手裏剣や楔を緻密に作れるのも、テニスボールを用意できるのも、石鹸ネットを防具にする珍案を思いつくのも、彼以外いない。
「服装も教えてもらったから大丈夫。だからやろうよ、忍者ごっこ!」
どうやら鼻息荒く勢いづいた翼を止める術はなさそうだ。若林と岬は揃ってため息をついた。

「俺と岬くんが忍者で、若林くんは悪者ね」
「…なんで俺が悪者なんだよ」
「悪者がいないと戦えないだろ?それに、俺と岬くんはいつでもゴールデンコンビ!」
「……」
塩表情の若林を尻目に、翼は岬の腕を引いて準備に取りかかった。
「岬くん、靴下貸してくれる?長いやつ」
「いいけど、何に使うの?」
「ジャージを中にしまうんだ。岬くんはハーパンだから…、そのままでいいや」
「それは俺も異論なし」
若林が同意した途端に岬がきつい視線を飛ばしたが、いつものことなので気にしない。岬もわかっているので早々に睨むのをやめた。
「…上はどうするの?」
「あ、こうするんだった」
翼は岬のTシャツの袖を掴み、ぐりぐり捲った。
「…これ、小次郎スタイル…」
どこぞやの猛虎ばりに肩を露出させられ、岬は微妙な表情だ。
「で、首にタオルを巻いて…、あとはこれをつけたら完成だよ」
翼が眩しい笑顔で石鹸ネットを差し出す。もうどうにでもなれ、岬は乾いた笑みを浮かべて石鹸ネットを受け取った。
「翼、俺は準備しなくていいのか?」
着実(?)に忍者へと変身していくふたりを眺めていた若林が問いかけると、翼はまたもや眩しい笑顔で言い切った。
「若林くんはそのままで十分悪者だよ」
若林のこめかみが、ピクリと戦慄いた。

ふたりの準備が整い、いよいよ忍者ごっこが始まった。
「岬くん、悪者だ!」
「うん、行こう」
わざわざ部屋の死角に身を潜めた黄金コンビは、胡座をかいている若林の前へ駆けてきて、ポーズをとった。楔帷子代わりの石鹸ネットがあまりにも間抜けだが、ふたりは真剣だ。岬など、先ほどまで呆れ返っていたのが嘘のように、気合いに満ちている。やると決めたら全力で取り組むところが、真面目で勇ましく潔い岬らしい。
「黄金忍者、推参!」
岬がカッコよく決めたのに。
「悪者め!おとなしく諦めろ!」
「翼…。お前の台詞、変だぞ」
妙な決め台詞にツッコミを入れずにいられない。
「だって俺、よくわかんないもん。とにかく御用だ!」
「もはや忍者でもないぞ、それ」
「悪者のくせに細かいぞ!」
「あのなあ…」
若林が更なるツッコミを入れようとしたが、岬が遮るように声を上げた。
「問答無用!行くよ、翼くん!」
「おー!」
言うや否や、ふたりは悪党若林に襲いかかり、紙で作った手裏剣や楔を投げて攻撃を始めた。メイド・オブ・三杉の武器の威力は強烈で、明らかに作り主の性格が乗り移っている。危険を察した若林は咄嗟に身を起こし、セービングで応戦した。
だが。
「おい!俺は丸腰だぞ!?」
若林は武器をひとつも持たせてもらえていないのだ。
「男だろ!?いいわけしない!」
「そーだそーだ!」
「…なら全部取ってやるからな!」
若林は天性のキーパー力を発揮して武器をキャッチするが、ふたりは使われる前に奪い取り、ひたすら若林を攻め立てた。
そして岬がとうとう縄跳びを手にした。
「ま、待て岬…!縄跳びはさすがに痛いぞ…!」
「天才ゴールキーパーなんだから、セービングしなよ。いくよ!」
「待て待て…うわっ!」
若林は岬の痛烈な縄跳び攻撃を必死に防いでいたが、
「忍法目眩ましの術!」
今度は翼にテニスボールを投げつけられた。
「こら!そんなもの直接投げつけるな!いてっ!」
黄金忍者の攻撃は留まることを知らず、次々と攻撃を仕掛けてくる。手数が多い上に、かなり痛い。果てにはコンビ技まで繰り出し、若林に反撃の隙すら与えない。恐るべし、黄金コンビ。
(俺…なんかやらかしたのか…?)
若林がそう思ってしまうのも無理はなかった。

「あーもうわかった!俺の負けだ!首を持っていけ!」
一方的な攻撃を受け続けた若林は、やけ気味に白旗を上げた。超がつくほど劣勢な上、それなりの年端の自分たちがこんな子供じみた遊びに真剣になっている現状は、どうにも情けなかった。
「やったー!岬くん、俺たちの勝ちだよ!」
「やったね、翼くん」
黄金忍者は勝利の喜びに浸っている。
だが、苦汁を舐めさせられた悪党が、このままおめおめと引き下がるはずなどなかった。

「またやろうねー!」
翼は忍者アイテムを紙袋に収め、鼻歌混じりで部屋を出ていった。
「んー、けっこう楽しかったなあ」
岬は袖を戻しながら満足げに言った。
が。
「…おや、こんなところに無防備な忍びがおるではないか」
背後から抱き竦められ、耳元で囁かれた。
「若林くん…!?」
「-なあ、知ってるか?」
「何…?」
「悪党はな、次の手くらいきちんと考えてるんだぞ」
若林の掌が岬のTシャツの中に潜り込み、悪戯に蠢く。岬は小さく息を飲み、身体を固くした。
「いい反応だな。…今からは、色の時間だぞ?」
「…えっと…んっ」
「んん?お主、よい香りがするな。柔肌も吸いついてくるぞ」
「若林、くん…」
「よいではないか、よいではないか」
悪党というより助平じじいのような口調がむず痒い。岬は腕の中で身体を反転させ、頭を垂れて顔を隠した。
「もう…、普通の口調に戻してよ」
「…しょうがないなあ」
岬の身体が熱を帯びている。この先を続けることに異論はないようだ。
若林はいつものように甘い台詞の術をかけ、かわいい忍者を蕩けさせた。

一方、翼の部屋の前。
「…若林くんをいたぶれた?」
ドアに凭れて佇んでいる人影が揺れた。
「うん。いつも岬くんを独り占めしてるんだから、痛い目に遭ってもらわないと」
三杉のいやらしい笑みに、翼はやはり眩しい笑みで応えたのだった。

(おわり)

無邪気なGC忍者たちの可愛さもさることながら、GCには逆らえない若林くんが素晴らしい!
GCのファン筆頭ですから仕方ありませんよね。
でも、岬くんにきっちり仕返しをする大人げなさとスケベさも楽しい。「甘い台詞の術」も素敵。
そして、意地悪な翼くんに陰で糸を引いている三杉くんまで揃っていて、とても楽しませていただきました。
イラストも凝った衣装もさることながら、岬くんの足に目が釘付けでした。確かに、これでは悪いGKに捕まっちゃいますよね…。一体どんな目に…(ワクワク)

GC月間割と参加していますが、こんなに豪華なことは今までなかったです。
おりょうさま、素敵な作品を本当にありがとうございました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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