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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
カード
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


 久しぶりの帰国だからと、若林が用意したのは、遠距離恋愛中の恋人のための土産の数々である。トレーニングかと言われるほどの荷物とともに帰国した若林だったが、用意周到な彼にも忘れていたことがあった。

「若林くん、何その荷物!?」
岬が声を上げる。幸い岬の父親はスケッチ放浪中で当分帰って来る恐れはないが、元々そう広い部屋ではない。
「寒くなる前にコート持って来たぜ!」
トランクから出て来るコートの数々に、岬は絶句した。ここのところ風が冷たくて辛い、と漏らしたことはあったが、ここまでの結果になるとは。
「僕の体は一つしかないんだけど」
「だから風邪なんか引かせたくないんだ」
岬の皮肉を正面から受け止めて、若林は岬の肩を抱いた。そのたった一つの身体を温める腕は、確かにコートよりもしっかり包み込んでいる。
「あ、ありがとう。そうだ、せっかくコートを持って来てくれたことだし、買い物行かない?」
このまま抱き込まれた後のことを、予測できない岬ではない。いくつも言い訳を重ね、若林の腕を器用にすり抜けて、岬は一番上のコートを羽織ってみせた。
「さ、行こ?」

 自分の見立てのコートを羽織り、手を差し出す岬に、久しぶりに会う若林が抗える訳がなかった。岬と二人だと思うと、確かに外出も楽しい。いつも岬が生活している道を一緒に通ると、まるで一緒に暮らしている気分になれる。
「どうせだから、何か食おうぜ」
商店街とは反対側の道を指して、若林は尋ねた。
「今日はそんなにお金持って来てないよ」
倹約家である岬らしい答えに、若林の矜持が刺激される。
「俺の奢りだ」
恋人に、まして常に質素に暮らしている岬に、金を出させるのは恥だと若林は思う。恋人を喜ばせる甲斐性に関して、絶大の自信を持つ若林だ。
「でも、両替しそこねたって言ってなかった?この辺ではユーロは使えないと思うけど」
岬の言う通り、この辺りには、ファミレス、居酒屋、カラオケが軒を連ねている。およそユーロが使えそうには見えない。それこそ、駅前のホテルまで行く必要がある。
 若林が自己の信条をかざすなら、岬も常のスタイルを貫くつもりである。恋人だからといって、黙って奢られるのをよしとしない岬の清廉さも、若林は嫌いではないが、今回は譲りたくなかった。
「大丈夫だ、カードがある」
「…君の持ってるカードって…」
井沢が以前ネットのニュースを解説してくれたついでに話したことを、岬は思い起こしていた。岬はクレジットカードなど見たこともないし、全く知識もないが、比較的詳しい井沢によると、若林は自分のカードを持っていて、しかもブラックカードといわれる信用度の高い種類らしい。そして、それは滅多なところで使ったら、怪しまれて、最悪止められるらしい…真剣な顔で話していた井沢の口調を思い出して、岬は若林の腕を掴み、回れ右をした。
「家でゆっくり食べよう?若林くんの好きなもの作るよ」
「じゃあ、魚が食いたい」
「良いよ。焼き魚?それとも煮付け?」
若林のご機嫌取りは、岬にはお手の物である。とりあえず、若林のブラックカードの出番は消えた。岬は安堵しながら、商店街のポイントカードを用意する。一方、若林は夕食と岬とどう美味しくいただくか思いをめぐらすのであった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
某著名人が少額の使用のせいでなりすましを疑われてブラックカードを停止された、という話題に対し、twitterで、富豪キャラが不憫キャラにファミレスで奢ったら、同じことになっているのでは、というつぶやきをされている方がおられました。何その源岬、と思ったら、突発的に書いてしまいました。
とはいえ、若林くんはドイツで生活していることもあって、個人的にはクレジットカードというと、三杉くんのイメージがあります。
一方、岬くんは商店街のポイントカードを使う点では、C翼一だと思います。そして、金持ちキャラに奢られてそうなキャラNo.1。…決して名誉称号とは言えませんが。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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