※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
本日も xxx-titlesさまよりお題をお借りしています。 お題一覧はこちら 忘年会、と称して三杉から招待が来たのが12月初頭。ちょうどJリーグが終わり、クラブW杯出場チーム以外は休暇自主練のオフ。三杉邸への興味も手伝い、来たのが最後だった。 最初は格調高い豪邸だからと遠慮がちだった雰囲気も、占領したリビングルームの居心地の良さも手伝って、次第に混沌の渦に巻き込まれていった。ビールやチューハイでなくて、ワインだったのだけが、三杉邸らしい。 そして、それは貴公子三杉淳とて例外ではない。 王様ゲームで、付けられたリボンは既に三本。柔らかいくせっ毛にピンクのリボンを揺らし、三杉はその一本を解いた。 「若島津も髪の毛くくってあげる」 「良いって」 酒は入っていても、三杉一人くらい振り払うことはたやすい。だが、元心臓病の、しかも三杉を振り払うことのできるメンバーはここにはいない。 「日向さん・・・」 つい思いを馳せる。イタリアにいる彼の人ならば、助けてくれるのかも知れないが、遠い空の向こう。そして、同じくヨーロッパにいるはずのライバルならばここにいるのだが、助けるには程遠く、一緒になって囃し立てている。長く同級生だった反町を探せば、井沢と携帯で遊んでいる。・・・全然、使えそうにない。 「三杉くん、だめだよ。若島津の髪の毛は痛み易いんだから、そんな乱暴にしちゃ」 思わぬ助け舟に、ふと隣を見た。眠そうなくせに、ちょっかいを入れている辺り、昔と変わらない。そうだ、お前がいたんだな。 「じゃあ、岬くんの髪の毛、結ってあげるね」 台風一過。被害は隣に移ったようだ。もう既に抵抗する気力もなく、ピンクのリボンを一本結ばれたまま、岬は目を擦っている。 「じゃあ、あと松山に?」 ふらふらと三杉が歩き出す。3M、ピンクのリボンかよ。中盤というよりはチームの要のくせに。心の中で毒づきながら、そういうノリから遠くなっている自分を感じてしまう。一人、の存在はそれほど大きかったのか。 思った途端、肩に重みがかかった。 「岬、そろそろ寝室に行けよ」 隣の岬は既に沈没寸前で、ピンクのリボンを結ばれたまま、段々もたれてきている。 「ごめん、何かゆっくり話すの久しぶりだから・・・」 岬の言い分もよく分かる。大会でも合宿でも、岬の周囲には人が集まる。壁のような状態で、それ以外の者が岬に話しかけるのも難しい。疲れたんだな、可哀相に。 「ああ、確かに・・・」 言いかけた言葉は途中で途切れた。揺り起こした岬は起きかけたものの、途中で座り込んでしまったからだ。仕方ない、と本格的に岬を起こすことに決め、肩に手を伸ばして揺すぶったところで、手を止めた。もの言いたげに見ている、切れ長の瞳。 「おい、誤解するな・・・」 更に周囲を見渡す。他の者達の注目を集めてしまったらしく、浴びせられる視線。 「・・・二人、似合ってるな」 「うんうん、美しい」 石崎と森崎の口から発せられたそら恐ろしい誉め言葉に、思わず顔が引き攣った。そんなことを言ったら、またこいつのうるさい旦那が。明らかに既視感のある視線に振り返りかけた時、岬が目を開く。 「健?」 岬は時々そう呼ぶ。小学時代、岬にとっての明和は「小次郎」「健」「タケシ」だった。昔、恥ずかしくて、「太郎」を連呼してやってからは、「若島津」だが、酔った時などはふと「健」に戻る。岬が今日変にはしゃいでいたことを思い出した。 「健、だって。怪しーですね」 「岬せんぱーい、俺ともくっつきましょーよ」 新田と佐野がきゃらきゃら笑い声を立てる。・・・誰だ、こいつらにまで飲ませた奴は。
起こすことを断念した途端、岬はとうとう陥落してしまった。三杉に肩を貸した反対側、膝を抱えている横に丸くなっている岬は、サラサラの髪に、リボンを結んだまま。何気なく頭に触れて、小学校時代に拾った仔犬を連想した。そして絶句する。一緒にボールを追う、仔犬と子供と。あの頃から漫然とであるが、あの人とずっと一緒にいる気がしたのに、今は遠く離れている。こうしていると、距離よりも心理的な隔絶を感じる。今、何をしているのか見当もつかない。 一人でいるよりも、つい思い出すことが多くて、もう一杯グラスを空にした。岬とはあまり飲まないから、共通の記憶を思い出すのに違いない。感傷に浸ったところで、ふと、気づく。 「もう、岬を返してもらっていいか?」 いつのまにか側に来ていた若林に、つい目を剥いた。 「若林っ!」 感傷にふけっていたところまで見られたのかと思うと、相手が若林なだけに腹が立つ。若林はそう気にした様子もなく、眠る岬の髪に指をからめ、リボンをもてあそぶ。 「岬がな、お前の背中が淋しそうだって言うからな。少しは気が晴れたか」 したり顔に、何だかむっとした。確かに、こう人が集まれば、どこかで探している自分がいる。頭では分かっていても、心がついていかない。自分では平気なつもりだったが、見ている人間は見ているものだと気付かされてしまう。 「お前が出てくるまではな」 悔し紛れに言い捨てた俺に、若林はにやりといやらしく笑って、岬を抱き上げる。 「じゃあ、貸しにしとくぜ。俺はこれから忙しい」 周囲が潰れているのを良いことに、さっさと客用寝室に向かう憎らしい後姿に、三杉に言いつけてやろうかと思ってやめた。三杉自体、もう静かな寝息を立てているし、起こすのも面倒だった。何も言わずに側にいるのが岬の優しさなら、挑発していくのは若林の励ましで。
・・・すべての道はローマに通じるのなら。それがレッジョに通じないはずはない。バカップルに構っているよりも、見え透いた三杉の優しさに付き合うよりも、もっと大事なことを見つめなければならない。・・・この居心地の良い場所から出て行くのは淋しいけれど。目を閉じた時だった。
「若島津、おやすみ」 俺の肩にもたれ、ピンクのリボンを揺らして囁く三杉の声に、失笑した。
(おわり)
髪の毛リボンだらけの淳様を書けて満足です。それだけが書きたかったので。最初、松山くん視点だったのですが、ピンクのリボンに抵抗するさまが、違う話のようでしたので、やめました。若島津くん、本当に難しいです。予定していた倍の長さでもまだ終わらないとは。と言いつつ、実は明日も若島津くんです。
・・・これ、今日三回目の更新です。これだけの予定が、ついはずみで。 まあ、「いくらでも」は昨日聞き返したCDの影響で、 十分で衝動書きしただけですので、それをそのままupするな、ですが。 それにしても何だか、若林くん祭りです。何なんでしょう。
from past log<2008.12.28>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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