※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「おうし座」の続きのような話。 「じゃあ、いて座の占いも見る?」 ベッドに俯せて、上半身だけを起こして、岬は尋ねる。 冗談で点けたホテルの占いチャンネルだが、流しておく分には悪くない。愛し合った後は、たいてい眠たがる岬がこんなに起きていること自体珍しいのだ。
いて座は俺の星座だ。それは知っていても、自分の占いも見たことはない。あまり関心を持ったこともない。それでも、何であれ、岬が俺に関心を持ってくれるのは嬉しいことだ。 「ああ、見ようぜ」 腕を回して引き寄せた白い肌は、まだしっとりして暖かい。こんな時の岬は、いつもより甘えてくる分、どうしても愛しさが込み上げてくる。 「こうしたら見やすいだろ?」 起き上がって、自分の膝を枕に寝かせると、岬は俺を見上げて柔らかく微笑む。 「若林くん、甘やかし過ぎだよ」 掛け布団に包まって、頭だけを俺の膝に預け、横たわる岬は、安心しきったように身体の力を抜いている。いつもこうして甘えてくれたら、苦労はしないんだが。 「えっと…『陽気な楽天家、何事においてもスピーディーで、過ぎたことをクヨクヨしない』…うん、ピッタリだね」 確かに、間違ってはいない気はする。悩むよりは、その原因を取り除く方が早いし、動く方が楽だ。 「それで…『束縛される事は大嫌いで、どこに居ても、誰と居ても、自分の信念を貫く人でしょう』…後半はよく分かるけど、前半はそうでもないかな」 首を傾げる岬に、確かにそうだと思う。昔から、自由でいるためには、それだけのことを果たすように教えられてきた。星座や血液型よりは、そんな教えの方が血となり肉となっている。 「この占いより、君はずっと大人だね」 「そうだな」 岬はまだ眠くないようだ。柔らかい髪に手を置いて、頭を撫でると、岬はくすぐったそうに眼を細めた。 「次は恋愛か…『恋愛は追いかけるタイプ。熱烈にアピールしますが、一度手に入れると、飽きるというよりも次のターゲットにすぐ心が向いてしまいます』…そうなの?」 リモコンのキーをリズムよく滑る岬の指が恨めしい。わざわざ振り返ってまで岬がじっと見つめてくるのが、こんな時でなければ嬉しいのに。 「そうだな…どちらかと言えば、一度気に入ったら、ずっと置いておく方だけどな」 自分の部屋を思い浮かべる。物欲の乏しい分、愛着の湧きそうなものを探した。使い勝手や触り心地で選んだ。おかげで、もう何年も家具は換えていない。家では、望めば何でも与えられた。与えられるに値する価値を示せれば良かった。だから、欲しいものはそうはなかった。愛着のあるものは別として、物欲とは縁がなかった。その分、こだわりは強いと思う。そして、気に入ったものには執着する。 「…そうなの?」 岬は繰り返した。11歳の時に出会って、14歳で再会して、確かにしつこく追いかけた。なかなか手に入らずに、するりと身をかわす岬を追いかける内に、一緒にいたいと思い、幸せにしてやりたいと思うよりになった。 「そう言って、心までは寄越さない気だな」 岬はなかなか好きだと言わない。恥ずかしいからと口では言うが、それだけでもなさそうだ。 「…そんなことないよ」 目だけを上げてみせて、岬は俺を見た。確かに、岬は気軽に恋愛を楽しむタイプでもない。こうしていること自体が、岬にとっては何より愛の証明で。 「じゃあ、もっと甘えろよ。俺に遠慮なんかするな」 膝に抱き上げると、岬は体を起こした。巻いていただけの掛け布団がはだけて落ちる。 「甘えているよ。若林くんがいなくなったら、生きていけなくなりそう」 冗談なのか、本気なのか。俺の首に手を回し、しなやかな背を反らして、岬は俺を見つめる。甘い茶色の目は揺らめいて、俺を映す。 きっと、いつまで経っても見飽きることはないだろう。俺の前だけで甘えて、艶っぽくて、子供っぽくて、幸せそうに笑って。 「それでも良いぜ。俺だけに、もっといろんな顔を見せろよ、岬」 岬との恋愛は、岬が隠していることを暴くことでもあった。笑顔の裏の辛さ、人を寄せ付けない頑なさ、俺への恋心。 「お前のことが分かる度に、お前のことを好きになるから」 好きだとは言ってくれなくても、好きだと囁く度に、はにかみながらも嬉しそうに微笑むようになった岬が好きだ。最初は臆病で頑なに信じなかった俺の気持ちを、今では喜んでくれる岬が好きだ。一つ扉を開ける度に、岬はどんどん可愛くなっていく。
それはまるで、飽きっぽいといわれるいて座のための罠。
「まあ、岬みたいに放浪癖があれば、探して捕まえる喜びはあるな」 岬に会えると楽しみに合宿に参加してみれば、監督に追い出されたからと不在で、しかも行先も分からない。後から聞けば、世界を旅していたと言う。小学生時代の転校だけでも堪えたのに、自覚はないらしい。 「もうっ、せっかくの感動が台なしだよ」 俺の胸を叩きながら、岬は愉快そうに笑う。俺の想いを吐露した告白よりも、腑に落ちたらしい。 「僕がどんなに逃げても、ちゃんと捕まえてね、若林くん」 いたずらっぽく微笑む岬をまず一回捕まえた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 先日「おうし座」を書いた後に、岬太郎botさんの管理人さまから「いて座」のリクエストをいただいたので、書いてみました。 それにしても、個人的には若林くんは飽きっぽい印象があまりありません。挑戦者だとは思いますし、逃げたら追いかけたくなる性格、なのは間違いなさそうですが。ABで父の放浪癖を受け継いでいるようにしか思えない岬くんにはピッタリの人だと思います。追いかけるまでに躊躇なさそうですし。本当に男前。
以下、拍手お礼。 おりょうさま、いつもありがとうございます。 「笑えよ」はいつもより精神的に未熟な二人でしたので、落ち着きがなかったのですが、ピュアと言っていただけて嬉しいです。 130000、いつの間にか超えてしまっていたんですね…気付いていませんでした。教えていただけて助かりました! 先になると思いますが、休みになったら、早速ご連絡させていただきたいと思います。
拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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