※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「5日間の思慕」の若林くん編。
やっと二人になった。さっきまでの喧騒が嘘のように部屋の中は静かで、あまり上等とはいえない空調の音が、かえって静寂を意識させる。
岬はぐるりと部屋を見回してから、窓辺に置かれたベンチに腰掛けた。 「何とか取れた割には良い部屋だね」 岬の言っていることは分かるのに、頭には入っていかない。
二人きりだ。
Jr.ユース大会が終わって、まだ興奮も覚めやらない内に、岬と想いを確かめ合った。
「父さんにも電話したから大丈夫」 岬が電話をしていたのは、騒がしいロビーだった。確かに、盛り上がって鎮まる様子のない合宿所と似通った雰囲気ではあったから、アリバイ作りとしては間違いない。 「良いのか?」 「何が?」 俺が尋ねると、岬は俺を見上げてにこにこと笑ってみせた。男にしておくのはもったいないような可愛い笑顔は、試合で見せる顔とは随分違っている。
岬がこの大会中、いかに勇敢だったか知っている。まっすぐに前を見て、自分のするべきことを淡々とこなす岬の強さは、試合に出られず応援するしかできない俺には、岬の優しさでもあると思えた。
元々好きではあった。岬は可愛いし、優しいし、一緒にいて楽しい相手だった。再会してから、希望的観測として、もしかして俺のことを好きなのかと思ったこともあったが、男友達に抱く感情としてどうなのかと打ち消していた。
それが変わったのは。 はっきりとは言われなかった。それでも、岬が俺の力になりたいと思ってくれているのは確かだった。その天使のような笑顔で、その強さと優しさで、岬は安らぎをもたらしてくれた。その岬の献身にどれだけ救われただろう。
岬の心に癒されて、愛しくて愛しくて仕方なくなった。すぐにでも打ち明けたい気持ちを封じて、5日間。
俺の想いを岬は受け入れてくれた。ただでさえ勝利の喜びに興奮していたのだ。その上高ぶった感情は、簡単には抑えられそうにない。 「もう少し一緒にいられるか?」 一旦は送ると言いながらも、ねだった俺に、岬はこくんと頷いた。 「うん。ここは合宿所に近すぎるけど…ついて行くよ」 街中は騒がしいし、あまりゆっくりはできそうにない。どうしても二人になりたかった俺は、その近くにあったホテルに部屋を取ることにした。昨日フランスが敗れた時点で、帰って行った応援団も多いと聞いていたからだ。それでもさすがはパリ。2軒目でようやく空き部屋に巡り合った。
「ほら、夜景もきれいだよ」 窓の外には、岬の言う通り、色とりどりの明かりが点り、すっかり暗くなった街を彩っている。 それで気付く。何日か、岬を送って街を歩いたが、夜景がきれいだったという印象はない。思えば、岬の顔ばかり見ていた気がする。 「きれいだな」 窓に近付いて、見上げた岬の顔を覗き込んだ。 「若林くん…」 「やっと二人だな」 俺の言葉に、岬は首を振る。 「ううん、ずっと二人だったよ。若林くんと走ってた」 岬はいつも可愛い。だが、こうして向かい合う岬はいつもよりももっと可愛く思えた。すぐに抱きついても、岬は驚いた様子もなく、俺の肩に手を伸ばしてきた。
公園でもキスはした。それでも、人目を気にする岬は、キスを早めに諦めた。 その分、何度も何度も、数えていられない程キスをした。
合わせた唇の柔らかさに酔う。絡めた舌の心地よさに溺れる。
キスをしたまま、岬を横抱きにして持ち上げた。華奢な体は呆気ない程軽くて、ベッドに寝かせるのも、自分の興奮の方が差し支えるようだった。
二人きりなのに、つい声を潜めてしまう。岬にしか聞こえないように微かな声で囁く。 「お前は怖くないのか?」 腕の中に閉じ込めた岬は、俺を見上げて、ふんわりと笑った。何だかくすぐったそうに見える笑顔だと思った。 「怖い気持ちはない訳じゃないけど…それよりは嬉しくてドキドキしているよ」 少し目を細め、口元を優しく緩めた岬の顔には、確かに緊張は見えない。 「ねえ、僕のこと、好き?」 顔に添えた手に、頬を擦り寄せて岬は尋ねる。甘えるような仕草が可愛くて、合宿所で「可愛い」と言われる度に怒っていた岬らしくないと思った。そして、俺にはちゃんと甘えてくれるのだと、喜びが込み上げて来る。好きに決まっているだろう! 「足りないなら、何度でも言ってやるぞ。俺は岬が好きだ」 「嬉しいよ。僕も本当に君が好き。だから、僕をちゃんと受け取ってね」 岬は腕を伸ばして横たわり、そのまま目を閉じた。まな板の上の鯉というよりは、眠りの森の姫という風情だ。 「一回キャッチしたら、絶対に離さないぞ」 「知ってるよ」 くすくす笑う岬を抱きしめて、二人で幸せになろうと思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 「5日間の思慕」を書いたら、若林くんはこれでは収まらないだろうと思って。若林くん誕生祭ということで、積極的な岬くんで。
グランドジャンプ発売日です! ドイツVSブラジルの試合中のため、全日本は現在観戦中。1コマ登場する若林くんがかっこいいです。左を向いている横顔で、おそらく翼くんの方を向いて話しているのですが、その前号で、翼くんの隣には岬くんがいるのです。ということは、翼くんを挟んで、並んでいるの??それが気になって、夜も眠れません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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