fc2ブログ
今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
5日間の思慕(3)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
3日目。


 大会3日目は、アルゼンチン戦。ロベルトのことで翼くんが動揺し、前半出遅れた。そんな時、若林くんの檄が飛んだ。
 翼くんのいるチームは、どうしても彼に頼ってしまう。実力的にもムードメーカーとしての意味でも。逆に、翼くんの動揺にチームも左右される。僕は静かに前を見据える。焦る気持ちがある時ほど、プレーは焦らずに、丁寧に。僕は小学生時代の準決勝、三杉くん率いる武蔵との試合を思い出した。あの時も、若林くんに叱られたっけ。
 大丈夫、僕はやれる。あの時もそうだったように。

 3点ビハインドから同点まで追い付いた。追加点を取られたものの、三杉くんも入ってくれて、とても心強かった。同点、そして逆転へ。その間も決して楽な展開ではなかった。けれども心が折れずにいられた。

 試合後、一旦家に帰って、新聞をチェックした。翼くんに頼まれたのは、ロベルトのことだった。アルゼンチンとの試合中も、刺さったままのトゲに、早くケリをつけてしまいたかったけど、翼くんは考えあぐねている様子だった。一人にしてあげる方が良いかも知れない。
「じゃあ、僕は帰るよ」
明日の試合はフランスが相手だ。ピエールとの対決を思えば、緊張感がみなぎる。

「岬、帰るのか?」
物思いにふけっている翼くんに手を振って公園を出たところで、若林くんと行き会った。
「若林くん!」
こんなところで会うとは思っていなかったから、びっくりした。翼くんは誰にも話していないと言っていたから、偶然だと思うけど。
「これから帰るところだよ」
「じゃあ、送って行く」
僕の家はここからそう遠くないし、慣れた道だ。それでも、せっかくだから送ってもらうことにした。何より、僕が若林くんと話したかった。
「ありがとう」

「明日の相手はフランスだな」
「うん」
ピエールとの因縁は、若林くんには話していた。全日本に参加する前に、フランスJr.相手に腕試しをしたことも。
「頑張れよ、岬。ピエールなんかに負けるな」
軽く言ってくれる。僕はこの三年間フランスでサッカーをしていて、何度もピエールの名前を聞いた。実際に対戦した。体格差を考慮すれば、良い線で渡り合えたとジャンは言う。でも、実際の試合ではそんなこと考慮されない。
「まあ、今の時点で、勝っているものがあるよ」
だから、僕が勝てるとすれば。
「僕の方が、良い仲間がいることだよ。翼くんもいるし、みんなもいる。それに若林くんも」
隣を歩いていた若林くんが振り返った。薄暗くて表情は見えないけれど、こちらを見たのは明らかだった。
「俺は何も…」
「励ましに来てくれてありがとう」
試合前の励ましはこれで2回目だ。アルゼンチン戦の時の檄も入れたら3回目。
 この大会で、もちろん日本を優勝させたい気持ちはある。でも、そんな大それた目標は別として、いくつか考えていたことがある。自分のできるだけのことをすること、ピエールとの約束を果たすこと、若林くんの力になること。自分を犠牲にしてまで、日本の勝利を望む若林くんのために、力を尽くすことに喜びさえ感じた。若林くんに対して、特別な感情がなかったとしても、今回自分の心を殺してまでチームを強くしようとする若林くんは尊敬に値する。そんな彼の代わりになれるとは思えないけど、手足となって、戦うことはできる。
「岬、ありがとう」
横から腕を引っ張るように、抱きしめられた。若林くんの心すべてを受け止めることはできないけど、少しでも届いてくれることを祈った。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
グラジャンでのアルゼンチン戦は、久しぶりに面白い試合でしたが、Jrユース編はやっぱり傑作だな、と再認識させられました。あと、Jrユース編は結構小学生編全国大会とかぶるな、と思いながらの再読でした。
スポンサーサイト




コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
→http://sukinamono11.blog63.fc2.com/tb.php/1313-6d0e030a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)