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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
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前触れもなく
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
恋が何かも分からないまま、恋に落ちたことは分かった。前触れもなく。
「それで、まり子ちゃんが俺の手を握って・・・」
井沢のうっとりした口調にまた始まった、と思った。滝も来生もそう言いたそうな顔をしている。
「これが恋、かあ…」
井沢がうっとりなら、他はみんなうんざり。井沢のこれが恋かあ、を聞くのはもう何回目か分からない。俺ですらそうだということは、クラスも一緒で幼なじみの滝や来生は耳にタコができていることだろう。
確かに、井沢はモテる。次々に親しい女子の名前が変わる辺り、さすがだと言える。ただ、もう聞き飽きた。お前の恋は何度目だと言いたくなる気持ちを抑えて、立ち上がる。
「さあ、練習行くぞ。明日は対抗戦なんだぞ」
「ええ~っ、南葛相手でしょう?」
誰かが声を上げた。おそらく来生。確かに、去年までならそうだった。全国大会優勝のこの修哲小と猿チーム南葛では、まともな試合になったことがない。
「去年までとは違うんだ」
相手は南葛ではない。大空翼ただ一人。
「若林さんが言うなら・・・」
そう言って立ち上がる奴らを急かし、グラウンドに向かった。
一通りの練習を終え、家に帰る。今日は結構キツイ練習になったが、まだ楽しそうな井沢に、ぞっとした。
自慢じゃないが、恋やら愛やら言われても分からない。周りの奴らも好きだし、ジョンは可愛いが、それは情や執着という言葉の範疇に大体収まる。相手に合わせたり、機嫌を取ったり、は真っ平で、それこそ俺には縁のない話だ。
・・・そう思っていたのだ。
対抗戦の日、角を曲がるまでは。
突然飛んできたボールを、それと認識するまでもなく受け止めた。それでも、良いボールだったのは間違いない。
「町ん中でむやみにボールをけるもんじゃないぜ!」
相手に言葉を投げかけると、その子はすぐに頭を下げた。
「ごめんなさい」
ゆっくりと顔を上げた相手と目があった。
考える脳は頭にある、と今では誰もが知っている。それでも、昔から心は胸にあるとされてきた。急に激しくなった鼓動に、驚く。
その後の対抗戦で再び出会って、岬という名前も知った。
岬は人目を引く存在だった。サッカーのセンスや技術だけではない。あんなに走り回っているのに、不思議な程色が白かった。華奢で色白で可愛らしい顔。決して目立つ訳ではないのに、ふと気がつくと視線を向けてしまっていた。
岬は多分印象的なのだ。あんなに細い身体のどこに、あの強い心が在るのか、すらりとした脚のどこに、あのパワーが宿るのか。
だが、自分から誰かと親しくなることのなかった俺には、同じチームという接点では親しくなることは難しかった。
時々目で追う。風と競うように走る岬の横顔に、サラサラの髪が揺れる。目の端で捉えた姿を、さりげなく追う。
その岬が、たった一人で河原でいるのを見かけたのは、偶然だった。いつも笑っている岬の瞳に光るものを見た時に、俺は動くこともできなかった。夕焼けから夜の闇に変わる景色の中、消えそうな背中を見ていた。
歳の離れた上の兄の部屋に用事があって行くと、兄は映画を見ていた。新しい映画ではないようだが、熱心に見ているのがすぐに分かった。
「兄さん、それ面白い?」
上の兄が映画を見る印象はなかった。見てもアクション映画というところだった。
「友達に借りてな」
その友達が、女友達なのは何故か確信できた。振り返った兄の目がうすら赤く見えたからだ。
「恋ってそんなに良いものなのか?」
井沢のことで辟易していたせいだろう、つい口に出して聞くと、兄は笑った。
「楽しい時もあるし、辛い時もあるな」
「辛い?」
「自分は無力だなと思うとな」
兄の恋は辛いものだったのかも知れない。ままならないものだったのではないかとも思えた。上の兄が、無力という言葉を発したのは、俺の知る限り、後にも先にもその時だけだった。
その時、俺は何故か岬のことを思い出した。
対抗戦が終わって、岬のことがいろいろ分かってきた。対抗戦に来ていたOBが、途中交代の補欠とは思えない選手の所属について確認を迫ったからだ。
「南葛小の児童には間違いない」という情報の他にもたらされたのは、岬の家庭の事情だった。父子家庭であること、画家の父親について引っ越しばかりの生活で、家財道具もほとんどないこと。古くからの住人の多いこの町では、新しく越してきた家の情報はすぐに伝わって来る。
「子供が一人で買い物に出ていたな」
「転校手続きも子供が一人で来たそうだぞ」
「またすぐに引っ越す気だろう」
耳を傾けるまでもなく、なだれ込む情報は、凡そ今まで聞いたことのない類いのものだった。
試合の時のいかにも楽しそうな笑顔と、そうでない時の静かな表情と。その対比は明らかで、二つの表情を思い浮かべた途端に、胸が苦しくなった。
南葛SCが発足したのはそんな時だった。参加しないと岬は最初言っていたらしい。確かに、いつ引っ越すか分からない状態では、難しいだろう。そう思っていたが、結局参加してきた。まだしばらくは転校しないらしい、と何故か安心した。
岬は見た目よりも気が強くて頑固だ。そう気がついたのは、同じチームになってすぐの頃だった。
何しろ、初対面でボールをぶつけられそうになっている。その時には殊勝に謝っていたし、その様子も可愛くて、何とも思わなかったが、顔に似合わない部分があるのも分かっていた。
遠くから見ていた時には、岬はニコニコ笑っている印象があった。ところが、よく見るとそうでもない。翼とはよく話しているが子供っぽい翼に対して、岬は時々物思いに耽っている様子があった。
岬は自分からはあまり話しかけない。周囲に随分気を遣い、周りをよく見ている。常に自分の意見があって、声高にではなく、優しい物言いで周囲の意見を変えることができた。
岬の見た目は可愛い。そう目立つ訳ではないが、印象的でふと目で追いたくなるような雰囲気がある。
庇ってやりたくなる見た目とは違い、中身は骨があって、むしろ周囲を守りたがっているような印象を受けた。
「お前は怖いものはないのか?怪我したら、どうするんだ」
練習の時、かなりきわどいところまで踏み込んで来た岬に尋ねた。対抗戦でも思っていたことだった。
「僕のせいで負けたなんて思われるより良いよ」
泥だらけのユニフォームよりも、白いカッターシャツが似合いそうな大人しそうな顔で、岬は笑ってみせる。整った小作りの綺麗な顔が、泥で汚れても気にする様子ひとつない。平気でヘディングで突っ込んで来るのだから、困る。
「受け止めることないのに」
「いや、今のは受け止めるだろ!」
これも何度目かのやり取りだ。そう血の気多い訳ではない。だが、間隙を縫って攻撃するのには長けていた。チャンスを逃がさず、その時には我が身を省みない。その辺りが上手いのは、敵味方ともによく見ていたからだろう。
笑っているように見えて、笑っていない、岬のそういう頑なな部分が、俺を必死にさせたのかも知れない。俺はやっぱり岬に笑って欲しかった。一人になった時にふっと気を抜くように、笑ってくれたら。
練習で岬と顔を合わせることが増えて来ると、つい岬を見ていることが多いことに気付いた。岬の表情が気になって仕方なかった。笑っているのか、それとも。それとなく様子を伺えば、岬は誰かといる時は笑っていても、一人になると遠くを見ていることが多かった。かと言って、自分から話しかけることもできず、佇む岬の横顔を眺めた。それだけで絵になるような姿でありながら、岬はその光景のどこにもいない気がした。目を離せば、たちまち消えてしまいそうな、そんな気がして、俺は気がつくと歩き出していた。
「・・・どうしたの?」
驚いた様子で、岬は足早に近付いた俺を見上げた。
「いや、何でもない」
何を言うつもりだったのか分からなくなった。
「変な若林くん」
我慢できない様子でくすっと笑い声を立てた岬に、一瞬鼓動が激しくなった。
「お前、無理して笑わなくて良いぞ」
気がつくと口に出していた。岬はゆっくりと顔を上げ、それから笑わない顔のままで口にした。
「どうせ少ししかいられないから、仲良くしたいんだよ」
今まで会った誰からも、そんなに感情を殺したような声を聞いたことはなかった。それから、岬はまっすぐに顔を上げた。
「君ともね」
岬は笑っていた。だが、その声は今にも泣き出しそうに聞こえた。
俺は自分が残酷なことをしたのに気付いた。釘を刺した岬は辛そうに見えた。随分悲しいことを言わせてしまった。後悔は腹の中で渦を巻き、考えは全くまとまらない。
「友達になろうぜ。それなら、俺の前で無理する必要なくなるだろ」
そう言うのが必死だった。
「・・・いいよ」
岬は僅かに口元を動かした。苦笑する岬に、俺も笑い返す。笑う顔に目を奪われた。笑わない顔に、心を奪われた。
恋は苦いものだと思い知る。それでも面影は心から離れない。
「いよいよ決勝戦だな」
試合前に順番に声をかけていく。武蔵野戦の時に、チームが崩れかけた時があった。それを支えたのは岬だった。
「岬、ありがとうな」
「…僕は何もしていないよ。自分にできることをしただけで」
大人びた表情は、顔の幼さを引き立てた。
「今日もよろしくな」
「うん、よろしく」
岬の顔が引き締まったのが分かった。泣いても笑っても、決勝戦だ。
岬がゴールポストにぶつかったのを見て、一瞬ヒヤリとしたものを感じた。ホイッスルが鳴るのと同時に飛び出して、岬に駆け寄る。倒れている岬の姿に、胸が痛くなった。
ゴールを守ってくれた。怪我さえ恐れずに突っ込んで行った岬に対する感謝はある。それよりも、このまま岬が起き上がらないのではないかと、怖い気持ちもあった。
自分の足が満足に動かないのがもどかしい。岬を早く助け起こして、その目が開き、茶色い瞳が見えるのを確かめなければ。
近付くと、岬は顔だけを上げていた。ほっとしたのと同時に、じっとしていられないほど胸がドキドキして、俺は岬を抱き起こした。
「岬おわったぞ。やったんだ!おれたちは勝ったんだ!」
「うん」
岬の体は驚くほど軽かった。背の高さが違う分、半分持ち上げるみたいに、岬の腰に手をまわして固定する。
こんな細い小さな体で、ゴールを守ってくれたんだよな。
「傷、痛くないか?」
「大丈夫だよ」
岬は気丈に笑う。みんなに優しくて、弱みを見せないのに、今はこんなに頼りのない体で。
岬に触れている肩や手が熱い。岬に気付かれそうなくらい心臓の音が大きい。この落ち着かない気持ちは、何だろう。
もうすぐ、岬は転校していく。もう見ることのないかも知れないこの白い顔を、柔らかい頬や、睫毛の長さが印象的な横顔を、忘れられるんだろうか。
「岬、」
「どうしたの、若林くん?」
首を傾げて、肩を組んでいる俺を見遣る岬に、何が言いたいのか分からなくなる。岬はもうすぐいなくなる。
井沢の例の話も、ちゃんと聞いておけば良かった。こんな時にどう言えば良いのか、分かったかも知れない。
「今日のことは、一生忘れない」
「…僕も」
引き止めることも、うまい別れの言葉で送ることもできない。だけど、一緒に祝ったこの瞬間を、俺はずっと忘れない。
岬と次に会うのは、三年後のこと。前触れもなく、目の前に現れた岬に、俺はまた恋に落ちるのだが、それはまた別の話になる。
(おわり)
拍手ありがとうございます。
若林くんはロマンチストだと良いと思います。でも、好きな相手ができたら、途端にリアリストになるともっと素敵。
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[2018/02/05 22:00]
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