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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
俺のわがまま 僕のわがまま
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。



「後で電話するね」
岬の口の動きで分かった。俺は客に軽く頭を下げて、病室を出る。去り際に岬を一瞥すると、岬は気遣わしげに俺を目で追い、それから何事もなかったように、客に笑いかける。

 岬の母親が来る度に繰り返されるやりとりだ。

 ワールドユース大会が終わって、岬はまた入院生活に入った。俺は入院までは必要ないが、腕の治療が必要だということで、しばらく日本に留まることになった。それで、こうして見舞いに通っている。
 一時期は多かった見舞客も、このところ落ち着いた。岬のベッドの横に座り、ゆっくり話していても、もう差し支えない。用事のない日は日がな一日そうしていたい、と言うと、岬は笑って、ベッドの空きスペースをぽんぽんと叩いた。
「お昼寝も許してあげるよ。ずっと話すのも疲れるんじゃない?」
岬が俺を甘やかそうとする時は、たいてい岬の方が甘えたい時だと、経験上知っている。俺はベッドサイドの椅子に座ったまま、岬の横に上半身だけ倒した。
「手も良いか?」
「若林くんが無理しないなら」
ブラインドを絞っているため、淡い光の入る病室で、ゆっくり横たわっている岬はいっそう儚く見える。このまま消えてしまうんじゃないかと怖くなるほど、きれいだ。
「岬こそ無理するなよ」
「無理なんかしてないよ」
そう笑っている岬の目の色を、俺は覗き込みたくなる。

 岬の母親は時々見舞いに来る。そして時々娘を連れて来る。
 岬の事故の原因になったという岬の父違いの妹を、その家族を俺はまだ許すことはできない。
 だが、わざわざ責めるような真似はしない。俺は会釈だけして席を外す。それ以上もそれ以下もない。
「…洗濯とかは君に頼めないからね」
頼めば良いのに。岬が俺の腕を心配しているのは明らかで、俺は言いかけた言葉を引っ込める。だが、岬が一言いえば、俺は日向や若島津にだって、三杉にだって頭を下げるつもりだ。東京の連中は岬が頼んでいると言えば、みんな喜んで面倒をみてくれるだろうに。
「本当に心配してくれているんだよ」
岬は困ったような、泣きそうに見える笑顔で言う。そんな笑顔で笑う位なら、追い出してほしいと言ってくれ。岬は蟠りもないから会っていると言うが、俺はその顔も見たくない。

 一度、聞かれたことがある。

 二人が帰ると、岬は電話をくれる。それで、本屋に寄って買って来た本を差し出すと、岬は礼を言った後に、尋ねて来た。
「君は、どうしたいの?」
「本心を言え、と言いたいのは事実だな」
もし俺がそう言ったら、岬が困るのもまた事実だ。
「ごめん」
「お前に謝ってもらうことなんかないさ。お前の妹を責めてお前が良くなるならそうするけどな。お前が望まないことはしない」
一番辛いのは岬だ。それは間違いない。俺がいくら助けてやりたいと願っても、無理な話だ。
「許してはくれないんだね」
「…許すことはできないだろうな。お前の望みでも」
赦す権利があるのは岬だけだ。俺はあくまで勝手に憤っているだけに過ぎない。単なる俺のわがままだ。
「だが、お前が許すことを反対はしない」
「分かったよ。ありがとう」
岬の優しい性格は愛おしい。だが、その優しさは他の者に向けないで欲しいと思う。その優しさで、自分自身を守ってくれ。そして、どうしても他の者に向けたくなったら、俺に優しくしてほしい。
「岬」
「何?」
「何でも言えよ。俺はお前にはわがままを言ってほしいんだ。誰にも言えないようなわがままも」




 僕が入院しているのを良い事に、そして自分の治療も言い訳にして、若林くんはお見舞いに来てくれる。

 だから、聞いてみた。
「君ね、こんな僕のどこが良いの」
しばらくはこの病室から出してもらえない。若林くんが前に持って来てくれた画集が素晴らしいから、ゆっくり楽しませてもらっているけれど。
「いつもよりは逃げずに側にいさせてくれるところだな」
若林くんはそんなことを言いながら、僕の手を握る。僕が素直に甘えたいと言えないのを分かっていて、若林くんは僕に甘えるふりをしてくれる。そうして僕を甘えさせてくれる。この世で僕が甘えられるのは、若林くんだけだとちやんと分かっている。
「もう立てないかも知れないんだよ?」
僕の脚はもう動かないかも知れない。今だって、しばらくは人の力を借りなければ生活することすらできない。…サッカーができるようになるまでは、きっとすごく時間がかかる。君は僕のプレーも好きだと言っていたのに。
「ずっと甘やかしてもらえるな」
「僕が甘やかす方なの?」
若林くんは時々僕に甘える。怖いものなんかなさそうな若林くんにも辛い時だってあるし、背を伸ばせない日だってある。僕をただ黙って抱き締める時なんかはそうなんだろうと思って、僕は若林くんの背中を撫でたり、座っている若林くんの頭を撫でたりする。
 そんな時の若林くんの笑顔は、いつもあんなにかっこいいのが嘘のように、ちょっと可愛く見える。僕が若林くんの側で落ち着けるように、若林くんにとっても、僕の側が居心地が良いと嬉しい。
「じゃあ、治したら寂しい?」
…ちょっと意地悪を言いたくなった。若林くんがあんまり男前だから、自分の小ささに腹が立って、拗ねたくなる。
「お前が元気なら俺は嬉しい」
若林くんは何だか嬉しそうに笑いながら、僕の頭を撫でてくれた。若林くんを色々言う人もいるけど、僕の知っている若林くんはいつも優しい。いつも笑っているか戦っている。どっちも僕の好きな若林くんだけど、戦っていない時には笑っていてほしいといつも思っている。
「まあ、岬が生きて、笑ってくれているだけで良いんだけどな」
「無駄にイケメンだね、若林くんって」
ため息が出た。何でこんなにカッコイイかな、この人は。凛々しく整った男らしい顔立ちや、男なら誰でも憧れるような筋骨隆々の堂々とした立ち姿、いつでもまっすぐに人を捉えることのできる強い眼差しや、勝負に挑む時の真剣さだけじゃなくて、心の中までが強くて優しくて、光に満ちている。
「何だ、惚れ直したか」
「今更惚れ直すまでもないけど」
…本当に君といるだけで元気が出るんだから、僕は単純だ。
「好きだよ」

(おわり)


拍手ありがとうございます。
調子悪い上に忙しいのに、ワールドユース編を読み返しています。…辛くてなかなか先に進みません。書く方も止まっていますし…。
有名選手の移籍で、ズビロが話題になっていて、嬉しいです。左の選手が増えているのもポイント高い!!
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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