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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
うなだれても許さないから
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
同棲シリーズ


「だから嫌だって言ったのに!!」
「練習試合だから大丈夫だ」
「君に言われたくないよ!無失点キーパーめ!」
「だって、昼間にあんなすごいプレー見せられたら、興奮するだろうが!」
…残念ながら、若林くんの言っている意味が分からない。

 今日は練習試合だった。前日は控えてくれと僕もお願いしていたし、カルツからも要請があった位だ。ところが、若林くんは昨夜も僕を押し倒した挙げ句、無体の限りを尽くした。
 朝の時点で立つことも辛かった僕がまともに動ける訳もなく、絶好調の若林くんがゴールを守り切って、試合は引き分けとなった。
 若林くんが言っているのは、その前日の練習だった。カルツとボールの奪い合いをしていた僕は、フェイントのフェイントでカルツを抜き去った。自分でもビックリする位の決まり具合で、拗ねたカルツにドリンクを奢らされた程だった。
「あれ、見てたの?」
「ああ。途中からはみんな見てたぞ」
まあ、僕はこっちに来たばかりで、まだまだ未知数だ。品定めも当然だと思う。それでカルツを抜いたんだから、及第点かな。
「で、それが昨夜僕を押し倒したこととどう関係あるの?」
練習試合でも、移籍したばかりの僕には、勝負の場だ。まあ、今日は空気を読んだカルツが、試合まで温存しようと言ってくれたおかげで、僕はずっとベンチで、若林くんが貸してくれた予備のタオルを座布団代わりに座っていられたけれど。
「右足で転がして止まりかかったのを、左足ですくって拾って走った時のお前がキラキラして見えて、すごく好きだな、と」
あれは楽しかった。サッカーというよりは、ボール遊びの類いだ。フットサルのテクニックの応用で、止める回転、速度を上げて。
「…反省してると思うけど、今後のために一つだけ」
多分、反省はしてるとは思うけど。うなだれている若林くんに、そのままとどめを刺す。
「一週間、僕に触らないで」

「ゲンさんから理由を聞いたぜ。それで、ああなのかよ」
カルツが指差す先には、下を向いてブツブツ何事かを呟きながら、ゴールを守っている若林くんがいる。
「…どうして君にいちいち相談しているんだよ」
カルツに何でも相談し過ぎじゃないのかな。そう言っても、カルツは若林くんを憐れみの目で眺めている。僕の指摘は無視するつもりなんだろうか。
「まあ、お前さんが来るまでも散々聞かされてたからなあ」
うわっ絶対恥ずかしいこと言われてたに違いない。カルツの様子をちらりと窺うと、カルツはニヤニヤ笑っていた。
「お前さんが来るまで、あんなゲンさんは見たことなかったなあ」
まあ、ずっと一緒に暮らしたいとは言われていた。僕としては現役終えてから、と思っていたけど、風邪を引いた若林くんの看病に来たら、ほだされてしまった。僕が思ってるより、ずっと若林くんは僕を必要としてくれていると思ったら、何だか嬉しかったんだ。
 それで、一緒に暮らし始めたけど、若林くんはどう思っているんだろうか。そう思っていた矢先だった。僕が一緒に暮らしているのは決して体だけのことではないはずなのに。
「一週間ぐらい何てことないと思うよ」
遠距離だったころは、そんなに会えなかったんだから。

 洗濯物を取り入れていると、若林くんの気配がした。
「手伝おうか?」
「良いよ、それより買ったものを冷蔵庫に入れておいて」
お互い一人暮らしは長いから、家事の負担は軽い。家賃は要らないと言ってくれるから、せめて生活費だけは折半している。試合に負けた日とかに甘えてくっついてくることや夜のことを除けば、若林くんは良い同居人だ。
 洗濯物をたたみ始めたところで、若林くんはまた側に来た。
「どうしたの?」
くっつきたいのだということは分かる。そういう空気を醸し出している。まだ五日目だ。約束の一週間は経っていない。
「一緒にたたむ?」
普段は聞かない。若林くんの触り方がおかしいのもあるけど、僕は自分の洗濯物を見られるのが好きじゃなくて、洗濯は全部自分でする。若林くんは隣に座ると、僕が取り分けておいた僕の洗濯物を取ろうとする。
「君のはそっち」
「せめて洗濯物には触らせろよ」
意味の分からない主張をスルーして、素早くたたみ終えた。
「そっちも手伝うね」
「ありがとうな」
若林くんの服は大きくてたたみ甲斐がある。自分の服より心持ち丁寧にたたんで、重ねた。

 一緒に夕食を作る時も、後片付けの時も、若林くんは落ち着かない様子だった。いつも一緒に作業する時間だから当然かも知れない。
「落ち着かない?」
食後のコーヒーを出すついでに聞くと、若林くんはさも当然のように頷いた。
「当たり前だ。お前、俺がどれだけ我慢しているか分かるか?」
残念だけど、半分しか分からない。君に甘えられないのは寂しいけど、こうして一緒にいて、笑ったりしょげたり落ち込んだり、そんな君を見ているだけで楽しい。
「お前に触れないんだぞ!」
…僕だって我慢しているんだけど。
 若林くんの胸以上に居心地の良い場所はない。物理的にも精神的にも。人に抱きしめられることの安心感や心地よさ、幸せを知ったのは、若林くんのおかげだった。
 僕は、若林くんに近付くと、いつものように膝に座った。
「岬ィ!」
当然のように腰を抱こうとする手は抓る。
「僕は触って良いんだもん」
そのまま厚い胸にもたれる。完全にいつものスタイルだ。
「温めては欲しいな」
その言葉を待っていたように、いそいそとまわされる腕に包まれて、僕はとても満足した。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
で、一緒に住んでもらいました。イチャイチャしている(自分比)二人です。この後若林さんが満足できなくなり、モジモジするまでがデフォ。

グラジャンを買う決心がつかずに困っています。
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