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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
ルール
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。



「何もしないから」
そう言って横になってから、一時間が過ぎた。それは自分に課したルールだった。

 付き合い始めてから、岬が俺の家に泊まりに来るのは初めてだ。

 今まで何度か、岬が家に泊まりに来たことはあった。
 最初に泊まりに来た時は、しばらくしてから俺の部屋に来た。
「若林くん、一緒に寝ても良い?」
一瞬夜ばいに来てくれたのかと期待して、思わず聞き返したが、パジャマの上に毛布を着ている色気のない姿で、ちょっと違う気がした。
「良かったよ!寒くて」
良いと言うと、岬はいそいそと俺のベッドに潜り込んで来た。確かに岬の手足は冷たくて、ひやっとした。
「寒かったのか?」
「うん、ごめんね」
そうか、寒かったのか。岬のパジャマ姿が可愛くて、色々考えていたのが、一気に吹き飛んだ。何だか恥ずかしくなって、岬の冷たい体を包むように抱き込んだ。
「こっちこそ、いつもの寒さで気付かなかったぜ。悪かったな」
「うわ、若林くんって暖かいね」
小さく細い体は冷たくて、心地好い。俺の勘違いを鎮めてくれるほど。その一方で、小学生の頃にほのかな想いを抱き、今は可愛い上にきれいになった岬を抱きしめていると思うと、段々興奮してくる。
「…若林くんに抱きしめられると安心する」
なのに、当の岬はそんなことを言いながら眠そうにしている。このすれ違いは仕方のないことかも知れない。岬は子供だ。下心のある俺に抱きしめられても、温かくて安心すると思うほどに。
「それなら、待ってやるよ」

 次に泊まりに来た時には、俺の方から聞いてみた。
「岬、今晩一緒に寝るか?」
そう尋ねると、岬はいかにも嬉しそうな笑顔になった。
「ありがとう。狭くなるのにごめんね」
「良いぜ。…岬に甘えられるなんて思ってなかったけどな」
狭くなるよりは、胸が苦しい方が辛い。純粋に甘えてくる岬に対して、邪念を抱いていることが申し訳ない。
「それにしても、嬉しそうだな」
すごい笑顔で忍び込んで来た岬に、つい口にした。岬は頬に触れてから少し恥ずかしそうにする。
「…そうかも知れないね。若林くんは慣れているかも知れないけど、友達と夜寝る前に話すのって、全国大会以来だから、楽しみで」
俺のことは全く意識していないらしい。好きな相手が清らか過ぎて辛いなんてことが、本当にあるとは思っていなかった。
「じゃあ、俺が甘やかしてやるから、ちゃんと甘えろよ」
「…何だか恥ずかしいけど、嬉しいな」
無邪気に笑う岬を抱き寄せて、俺の鼓動は激しくなる。しがみついてくる柔らかい温もりに、胸が苦しくなる。

 それから、泊まりに来る度に岬は俺のベッドに入りたがった。もちろん目的は体温だ。温かくて、安心して…俺は抱きしめてくるぬいぐるみではないが、岬の認識はそれに近いのだろう。
 岬は可愛い。中性的な顔に華奢な体つきで幼く見えるくせに、どこか気を張って背筋を伸ばすアンバランスさに心を惹かれた。そんな岬が甘えてくるのは夜だけで、友情と恋情を図りかねていた俺のバランスを崩すには十分だった。

 告白したのは俺からだった。少しでも意識してくれるかも、という期待もあった。
「えっと…僕も多分若林くんのこと好きだと思う」
岬は考えながら言葉を紡いだ。
「本当に?」
岬には悪いが、そんな風に思ってくれているとは思えなかった。岬は相変わらず俺の腕の中でよく眠っていたし、むしろ俺の方が眠れずに困った。
「誰かに抱きしめてもらうのって、子供の頃以来で、最初は嬉しくて仕方なかったのに、最近ドキドキするようになって困ってる」
それは本当に俺のことが好き、と解釈して大丈夫なのか?とも思わなくもなかったが、少し頬を染めて見つめてくる岬は、可愛らしくて、岬の勘違いでも構わないと思った。

 その夜も一緒に寝た。くっついてくる岬を撫でる度に、せつなくて苦しくなる。
「好きだぜ」
「うん、僕も」
キラキラする目で見つめ返された。柔らかい髪は甘い香りがして、俺の鼻孔をくすぐる。付き合っているんだから少し位、という気持ちと、岬に嫌われるのを恐れる気持ちは釣り合って、俺は身動きが取れなくなる。
「おやすみ、若林くん」

「ゆっくり遊びに来たかったんだ。お世話になるね」
部屋に荷物を置き、土産をくれる。岬の荷物はいつも通り少ないが、いつものようにパジャマは持参なのだろう。一度忘れて来た時は、俺のTシャツと短パンを貸したが、すぐ出る肩の白さが気になって、眠るどころではなかった。
「よく来てくれたな。どこか行きたいところはあるか?」
「どこでも良いよ。今回は君の試合がメインだから。楽しみだな」
試合は明日。その翌日に一緒に遊びに行く約束をしていた。俺としても、岬と一緒ならどこでも良い。
「じゃあ、考えておいてくれ」
「うん。何ヶ所か候補は考えてあるんだ。明日の夜にでも相談するね」

 岬はいつものように隣で寝ようとするだろう。俺の気も知らずに。チームの連中は天使に手を出した俺の非道をからかうが、天使と付き合うということを分かっていないのだ。きれいな天使に手をかけられる訳がない。泣かせたくはない。
「一緒に寝ようぜ。何もしないから安心しろ」

 岬の分の枕も用意した。いつものように抱き込むのではなく、紳士的に並ぶことにした。

 今日は何もしない、そのために触れない。迂闊に触れるのは歯止めが効かなくなりそうで、そう決めたはずだった。だが、自分に課したルールのせいで余計に意識してしまった。隣で笑う声、時々向けられる笑顔、合わさる視線。無理がある。岬の話が聞けない。自分でも何を話しているのか分からない。
 ふと気付くと、岬がこちらを見つめていた。
「どうした、岬?」
「若林くんこそ、大丈夫?」
大丈夫じゃないだろうな。目の前の餌に食らいつけずに、飢えていく俺は。
 急に身を起こした岬に、慌てて俺も半身を起こす。すると、岬は急に抱きついて来た。
「若林くん、何もしてくれないの?僕達、こ…恋人なんだよね?」
…天使のいる甘い地獄だとばかり思っていたが、実は据え膳だったらしい。いつもより近い岬の肌の匂いと暖かさに、たまらなくなった。
「岬」
岬の背中に回していた腕を離し、岬の顎にかけた。ゆっくりと唇を近付けると、岬は頬を染めて受け入れてくれた。柔らかい唇の感触は、思い描いていた以上で、心の中の堰が切れる。

 岬が覚悟して来たのなら。もう我慢することもないだろう。

 俺は岬をベッドに埋めた。細い肩に力を入れれば、岬は身動きできない。初々しい唇がキスに慣れて、次第に赤く色づく頬に、食べ頃なのは明らかだった。首筋に舌を這わせ、パジャマの上着の裾から手を入れた。岬の肌は柔らかく、甘い匂いがする。岬は恥ずかしそうに身をよじった。
「若林くん、ダメだよ…僕たち男同士だし…」
岬の理解がキスまでだということは分かった。そして、俺はもうそれには従えなくなっていた。ルールを破ったのは、岬の方だ。
「恋人、だろ?」
折れそうに細い手首、喉仏の目立たない白い首。天使のフィルターを外した岬は、相当に美味しそうだった。蕩けかかった目を上げて、岬は俺を見た。
「うん…恋人だよ」
ギュッと固くつぶった目に、体の前で固く握り合わされた手に、岬の恐れが見え隠れする。それでも、今まで我慢してきた分、押さえ付けることはできそうになかった。むしろ岬が恥じらい、怖がるほど、俺の欲望は高まった。
「あ…若林く…ん…や…やだっ…そんな所…あっ…んん…」
「そんな所って?…ここ?」
「だから、ダメだよ…」
問い詰めるまでもなく、顔を真っ赤に染めて、岬は首を振る。今まで本当に天使そのものだったらしい。この初々しい反応ときたら。…もっと堕としたくなる。
「可愛いぞ。こんなに敏感になって」
そうからかうだけで、岬の目が潤む。僅かに色付いた頬も可愛いが、この反応だけで、赤くなった顔を見られまいと隠す仕種の可愛さときたら。
「も…う、や…あっ」
弾けるまで弄る手にも力が入る。もっと、可愛がりたい。もっと、泣かせたい。もっと、鳴かせたい。
「そんな顔するなよ」
泣き出す寸前まで潤んだ目が俺を映して、咲いた唇が俺を呼ぶようだ。
「俺達は愛し合ってるだけなんだから」

 最初は触るだけのつもりだった。すべすべした肌の感触や岬の甘い声、泣きそうな表情に、つい手は伸びた。
「岬、大丈夫か?」
ぐったりしている岬を何とか抱き起こすが、岬は黙り込んで返事もしない。
「とりあえず、風呂入ろう。それで…」
「若林くん」
岬の声はいつもよりも低く嗄れていた。口を塞ごうとする岬の手を掴み、高かった声が途切れがちになり、悲鳴に変わるまで、離さずにいた。
「ひどいよ…」
しゃくり上げている岬の背中をさすりながら、火を点けたのは誰か分かっているのだろうかと思った。俺は我慢する気でいた。岬が望んだことだったはずだ。
「すまなかったな。つい焦ってしまって。次はもっと優しくする」
だが、岬を責めるよりも、涙を止めたいと思った。俺にひどいことをされたはずなのに、抱きついて泣いている岬は可愛くて仕方ないけれど。
「本当に?」
恐る恐る顔を上げた岬の頬に、これ以上ないほどソフトなキスをした。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
今年は長期に休止したりで、あまり活動したとはいえない年でしたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。
来年はもう少し頑張りたいと思います。
どうぞ、よいお年をお迎えください。
そして、来年もよろしくお願い申し上げます。

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