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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
笑えよ(3)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
本日最終回。



 昨日岬が来てから、自室での時間が楽しくなった。特に何を話す訳でなくても、人のいる気配は安心できた。岬は俺の様子をよく見てくれているようで、時々声をかけてくれる。
 岬も落ち着いたようだった。今日親父さんが訪ねて来た時に、しばらくここにいると言ってからは特に楽しそうにしている。その親父さんにさえ、笑っていたのが気に障るが、俺から言うことでもない。

 そして、二人ともあの話はしない。

 くすぐられて苦しそうに笑う岬が可愛く見えて仕方なかった。岬の性格なんか知っているし、素直じゃないが、良い奴なのもよく分かっている。それが一瞬素に戻った時の無防備な様子にやられた。
 無言で腕を立てた岬に、俺も無言で離れた。岬は唇を無造作に腕で拭って、さっさと荷物の整理にかかる。その様子を眺めながら、まだ唇に残る感触を思った。
 キス自体の経験はある。それでも、衝動的にしたのは初めてだった。
 岬の表情は分からなかった。普段は分かるのに、こんな時に表情を読ませない岬に、逆恨みのように苛立つ。怒れば良い。泣けば良い。俺のことを詰って責めれば良い。
 それなのに、岬は淡々と荷物を整理していた。もし日向の乱入がなければ、どうにも居心地が悪かっただろう。その上、岬は日向に対して俺を庇ってくれた。

「暑いなら、窓開けようか?」
不意に岬が言った。二人で使っている部屋だが、岬はいつも静かで、部屋でも本を読んでいるか勉強しているかだ。うるさい奴が嫌な自分としては助かる。岬は昔からそうだった。それなりに人の中にいるが、一人の時は静かで、騒ぐこともない。見かけの割には大人びている。
「ああ、助かる」
色々考えていたせいで、汗をかいていることにも気付いてなかったようだ。岬は俺のベッドの側を通って窓を開けた。風が通って、岬の髪を揺らす。
「いい風だね」
微笑んだ岬を見た途端に、頭に熱が上がる感じがした。別に、何の感情もないはずなのに、あの柔らかい唇の感触が蘇る。
「岬、怒ってないのか?」
「どうして?」
岬は振り返って、歩み寄って来た。簡単に掴めそうな華奢な体を見ないようにする。
「昨日はすまなかった。調子に乗ってキスまで…」
「あれは良いんだよ、合意だったんだから」
岬は軽く言うが、合意だったはずがない。俺が一方的に奪ったキスだった。
「いや、あれは…」
言いかけた俺に、岬は微笑んでいた。
「若林くんに助けられた分は返さないといけなかったから」
あくまで借りを返したのだと言い張るらしい。
「その後に庇ってもらったのは俺だろ?」
日向の一人や二人どうってことはないが、岬の対応によっては、まずいことになりかねなかった。
「それくらいは良いよ。家から連れ出してもらったのは、初めてなんだ。何だか嬉しかった」
笑いながら話す岬に、こちらの方が嬉しくなった。
「だって、岬困ってただろ?」
今の岬は年相応に見える。年相応の表情で、笑っている。
「でも助けてもらったのは初めてだよ。最初はどうしてバレたのかと思って、悔しかったけど」
それはお前のことを見ているからだ、と言いかけて気付いた。岬の表情に気付いていたのは付き合いの長い二人と、あの三杉、そして俺。どうして俺は気付いたんだ?
 そういえば、俺は南葛SCで、よく岬を眺めていた。一人の時は寂しそうな背中や、笑っていない顔を見ていた。
 どうして、そんなに見ていた?
「…俺はお前のことが好きなんだと思う」
そして、あのキス。否定し切れないこの胸のもやもや。
「…そうなんだ?」
岬は驚く様子もいやがる様子も困る様子もなく、本当に素っ気なく言った。
「まあ別に良いけど、昨日みたいなのはやめてね」
それだけ言うと、岬はさっと立ち上がり、部屋を出て行った。その横顔が赤いように見えたのは、目の錯覚だろう。
 そして俺は、昨日みたいなの、がくすぐったこととキスのどちらに該当するのか考え込むのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
鈍い若林くんと素直じゃない岬くんで。若林くんが決心したら、すぐに進みそうな二人です。頑張れ。

尊敬するクレスリウム王国さまで、来たる10月3日の建国10周年を記念して、企画をされています。10年間続けて下さって、本当にありがとうございます。そして、おめでとうございます。私も感謝をこめて、『風と翼』の続編を寄稿させていただきました。…早すぎた上に、書きすぎたので、お祝いというよりは、かえってご迷惑をおかけしてしまったのですが…。

以下、拍手お礼。
おりょうさま、いつもありがとうございます。
微妙な距離感の二人でしたので、日向くんに割って入ってもらいました。合宿話はこういう点で便利で、つい頼ってしまいます。
サイトの作画がまた進んでおられるようで、楽しませていただいております。覇者の塔もおめでとうございました。私はいつも20辺りで力尽きてしまうので、本当にすごいと思いました!
源岬モノはいつでも大歓迎です。自己紹介ページにメールアドレスを書いておりますので、そちらからアクセスいただいても大丈夫です。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント

宣伝ありがとうございます。
若林くんの以前のキスの相手が気になって仕方がありません。
この若林くんはもう全て経験済みなんでしょうか?
[2016/09/24 23:54] URL | 銀月星夢 #mQop/nM. [ 編集 ]

ありがとうございます。
銀月星夢さま、コメントありがとうございます。
あまり効果のない、心ばかりの宣伝ですみません。
この若林くんは、キスの経験はありますが、恋愛経験があるような気はしません。
でも、若林くんのこと、きっと大丈夫です!(強い確信)
[2016/09/26 21:47] URL | 真 #- [ 編集 ]


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