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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
笑えよ(1)
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。



 岬が笑っている。だが、それが本心でないのを、俺はよく知っている。

 ドイツに来た時とは違い、無理に笑っていると思った。ここには、岬の友達がたくさんいるのに、ふとした拍子に見せる瞳は影を帯びている。
 最初の日はそんなことはなかった。それが、日を追うごとに段々と辛そうになってきたように見える。
 どうしたのか聞きたくても、俺はチームの奴らと敵対している立場で、おいそれと聞けるものではない。岬はそれを察してか、積極的でもないが、様子を見てはさりげなく話しかけてくれる辺り、やっぱり変わっていない。
 どうしたものかと家に帰る岬の後ろ姿を見送ったところで、三杉と行き会った。
「…岬くん、様子が変だよね」
「お前もそう思うか?」
三杉は中立的な立場で、俺からは何も言ってはないが、こいつも察しているのか、平然と話しかけて来る。とは言え、今回のことは微妙で、自然と小声になる。
「岬くんは辛い時でも笑ってみせる人だからね」
岬はいつも笑顔を浮かべている。辛いこともあるだろうに、笑顔で隠してあまり見せない。それは小学生の頃からで、今も変わらない。
 だが、よく見れば岬がちゃんと笑っているかどうかはすぐ分かる。
「三杉、悪いが聞き出してくれないか?」
俺からは無理だった。接触を図ろうものなら、岬に反対に問い詰められる気がした。あのやたらきれいな目からは逃れられる気がしない。
「良いけど、僕じゃ逃げられるよ?」
三杉の言葉は正しい。三杉は鋭いがそうお節介ではない。岬が否定すれば、それ以上は踏み込まない。
「…日向や若島津も気にしている風だったが、あいつらには頼みにくいしな」
「そうだね。日向くんは岬くんに弱いし、若島津くんは今大変だからね」
三杉の分析を聞きながら、確かにあの岬にお節介を焼くというのは難度が高いのだと気付く。だが、岬がそう見せかけているほど、ごまかしがうまいようには思えない。あの可愛い笑顔に惑わされなければ、岬の背中は時々泣きそうに見える。
「…分かった。とりあえず、あいつの家に行って来る」

 岬とは手紙のやり取りをしたことがある。三杉に用意させた地図で簡単にたどり着いた。
 普通のアパートだったが、廊下は妙な空気だった。何やら叫んでいるじいさんの前を通り抜けて、2階のドアを叩く。絵の具の臭いがするから、間違いないと思ったが、何度叩いても出て来る様子はない。
「岬、若林だ」
ノックの後に名乗ると、岬はそっとドアを開けてくれた。
「ごめんね、お待たせして」

 通された部屋の中はすっきりしていた。親父さんは不在の様子で、岬はコーヒーを出してくれた。
「どうしたの、急に?よく家分かったね」
「前に手紙やりとりしただろ?それより、あのじいさんどうした?」
どう見ても家にいた様子の岬が出て来なかった理由、俺が来てから心なしか落ち着いて見える理由。それは一つしかないように思えた。
「たいしたことじゃないよ。僕が全日本で出るのが納得いかないらしくて」
岬の話によると、岬はサッカー好きのじいさんとは元々親しかったが、日本代表になったことで、じいさんの怒りを買ったらしい。じいさんからすれば、岬が日本のようなレベルの低いチームに入るのが許せないのだろう。
「それで、時々押しかけてくるんだ」
複雑な事情なのは分かったが、この話をしている間、岬がほとんど笑顔だったことが気に食わない。
「お前、俺はそんなに頼りないのか?」
思わず発した言葉に、岬は驚いたように俺を見た。
「若林くん、どうしたの?」
岬が笑顔でいるのは、人をひきつける一方で、人を寄せつけないためだとはっきり分かった。人に頼りたくないのだと、その笑顔は語っていた。
「なあ、助けてくれって言えよ」
この笑顔を剥がしたいと思った。笑っているふりをしている岬の仮面を剥がし、本当に笑っている岬太郎が見たいと思った。
「君に言われる筋合いはないと思うけど。芝居下手すぎだよ」
しかし、そんな気持ちは一瞬で消え失せた。俺が睨んでも、岬は平然としていた。
「岬、合宿所に行くぞ!お前一人位寝るスペースはあるからな!」
…別に岬に感謝してもらいたいとは思わない。それでも、このままにはしておけなかった。
「無理だよ、空き部屋ないって言われたし」
「何とかする!とにかくついて来い」
俺の勢いに押されて、岬は荷造りを始めた。
「岬、紙もらうぞ」
近くにあった紙に、岬を合宿所で預かると親父さん宛のメモを書いて、俺は岬の手を掴んで飛び出した。
 大体こんな奴なのは知っていた。確かに中学生の男としてはありえない位可愛い顔をしているし、高い声だし、チームで人気があるのも分かるが、気はきつくて、頭も良いから怒らせると厄介、時々ものすごくキレると三拍子揃っている。
 そのくせ、困っていると一言友達に相談することもできない奴だ。助けたいと思っている奴はたくさんいるのに。
「俺の同室が空いてるから来い!続きはそこで聞いてやる!」
「うん、上等だよ。楽しみだね」
岬は笑って言った。数日ぶりに見る本心からの笑いだが…何だか不穏な気配がするのは…気のせいだな。

(つづく)

拍手ありがとうございます。
できていない二人です。
以下、拍手お礼。
おりょうさま、コメントありがとうございます。
お風呂でイチャイチャはしているのですが、エロくないな…と思っていましたので、甘いエロスと言っていただけて、こちらこそ嬉しいです。
性格分析って案外面白いですよね。こちらこそ勉強になりました。同じようなことでも、表現する人が異なれば、使う語彙も違いますので、なるほどと思いました。是非参考にさせていただきたいです。
そして、ブログ拝見しました。C翼のイラストが下絵段階でもかっこよくて、完成したらどんなに素敵だろうと想像して楽しかったです。モンストもデレマスも好きな私は、最初2ページで楽しくて仕方なかったので、今晩ゆっくりお邪魔させていただきたいと思います。

岬太郎くんbot管理人さま、こちらでは初めまして。コメントありがとうございます。
今回は勝手なお願いを快く了承いただき、ありがとうございました。どの文言も素敵で、楽しく書かせていただきました。
官能的にならなかったと反省してはおりますが、むしろ励ましとして受け取らせていただいておりました。(一応、頑張りました!)
そして「いて座」是非書きたいと思います。「不安になる岬くん」はよく書いているのですが、星座を絡めるのはまだ書いたことがありません。プレゼントになるかは分かりませんが、(呪いの産物になったらすみません)頑張ります。
そして「岬桃太郎」!数日前のツイートでその素敵な字面に期待感でいっぱいでした。今日やっとPCを開けましたので、是非拝読させていただきたいと思います。

拍手のみの方もありがとうございます。励みになります。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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