※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。
本日も xxx-titlesさまよりお題をお借りしています。 お題一覧はこちら メール着信。
「何の気なしに聞いた事でも、気に触ったのなら謝る。 だけど「言わないといけないの?」なんて言われたら、 これからは何も聞けなくなってしまう。 確かに岬には俺の質問に答える義理も義務もないけどな。 こっちからは何も聞かない方が、気が楽か? 遅くまで悪かったな。おやすみ 若林」
謝るように見せかけながらも、突き放したようなメールを読み返す度、息が止まりそうになる。相当、怒っているらしい。
発端は、さっきまでの電話。来週の予定を尋ねる電話は、少々執拗で、ごまかしても食い下がりそうにない。来週は、予定がある。 「予定?俺と会うより大事な予定か?」 茶化すような口調ながら、声が笑っていない。電話越しでも分かる、緊張の色。 「そうだよ。言わないといけないの?」 つい、面倒になった。一つ説明しようと思えば、最初からする必要がある。どうしても気が進まず、質問に対して、質問で返した。 「・・・そうか、おやすみ」 いつも電話を切るのは、僕から。名残惜しそうに投げかけられる若林くんの「おやすみ」を聞いた後、それが耳に残っているうちに、電話を切る。それが、今日は違っていた。いつもの甘い余韻を残さぬ「おやすみ」の後、急に切断される音。
いつもなら、すぐに電話がかかってくるのに。それきり音沙汰もなくて、少し不安になった。 だって、仕方がないじゃないか。 来週は、高校の模擬試験がある。進学する気はないけれど、そういうのを受けるのも学校行事。そして、それを説明しようものなら、若林くんが烈火の如く激怒するのは目に見えていた。画一的な日本の教育を、そして、そこに安住して世界に出て行く勇気のない僕自身を。たぶん、どちらも説明しても分かってはもらえない。だから、避けたのに。 冷たいメールを見返す。 義理、義務。そういう言葉で置き換えてしまえば、途端に僕たちの関係は味気なくなってしまう。 好き、と言った訳じゃない。言われた訳じゃない。ヨーロッパにいた時は頻繁に、日本に帰ってからはそれなりに、行き来して遊ぶ友達だった。 「何かに縛られたくない」 いつものように予防線を張ったくせに、縛られるどころか、いつも約束すら果たせないことに怯えていた。若林くんはそんな僕に、ため息混じりに笑ってみせると、手を握った。 「分かった。でも、俺たちは友達だろ?」 一緒にいるのは楽しくて、その言葉につい甘えてしまっていた。縛られるのは嫌だと言いながら、特別扱いをされる心地よさに、慣らされてしまっていた。
それでも、メールを返信することはできなかった。謝って良いのか、説明すれば良いのか。考えているうちに、来週の日曜のテストのことなどどうでもよくなっている自分に気づいた。もう一回だけ機会がもらえるなら、僕は素直になれるかな。 「若林くんへ。来週の日曜日、ヒマなのですが、ご都合はいかがですか?岬」 返信するネタができたことに安堵した途端に、瞼が重くなった。君がそうしたいなら束縛されても良い、なんてことはまだ言えないけれど。義理も義務もない、なんて言われるくらいなら。 何年越しになるか分からない駆け引きの中、僕の方が圧倒的に形勢不利だと悟る。それでも、すぐに響いたメール着信音に安心して、僕は眠りについた。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 営業のテクニックで、 「ごく小さな要求を承諾させると大きな要求を承諾させやすい」 というのがあります。詳しくは省略しますが。 そういうのを書きたかったのに、失敗しました。 反対に、大きな要求をして比較的小さな要求を通す、というのもあります。 こちらも書いてみたいと思っていますが・・・。 仕事思い出しちゃうので、休みに入ってから。
from past log<2008.12.25>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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