※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「岬、何か欲しいものはあるか?」 突然言い出す若林に、いつものくせが始まった、と岬は苦々しい表情を浮かべた。 誰憚ることのない友達の頃から、何かと理由をつけてはプレゼントしたがる若林である。まして、人目を忍ぶ甘い仲になってからは、歯止めが効かない。 岬が冷たい水を飲み干すのを待って、抱き寄せてから尋ねる辺りは、随分進歩したものだ。昔なら、会った途端に抱き上げて行動を封じ、一通りことが済んでから、用件を切り出すことも多かった。今では会う間隔さえ開かなければ、そこまでの惨事になることはないと悟った岬の経験則により、会ってすぐ、ということは少なくなった。 「ないよ」 できる限り素っ気なく答えた岬だが、若林はいつも通り諦める様子はない。すぐに食い下がって言葉を返す。 「誕生日プレゼント何が良い?」 「あっ・・・」 今気がついたのかとばかりに、若林はカレンダーを指した。カレンダーを見るまでもなく5月は目前で、岬の誕生日も近い。 「今年はちょっと忙しくてな。こっちに来れそうにないから。プレゼントで勘弁してくれ」 答えないという選択肢はない。公然とプレゼントを贈ることのできる誕生日において、若林はしばしば暴走した。部屋に入れるために、扉を外したことも、冷蔵庫に入り切らずに周囲に配り歩いたことも、部屋に入らなかったことさえある。 「それは良いけど・・・何が良いかな・・」 岬は必死に考えようとする。若林が忙しいのは分かっているし、気を遣わせないように、リクエストを考え始める。 岬とてプレゼントをもらうのが嫌いな訳ではない。綺麗にラッピングされた包みを開く時の感動はいつも新しいし、それを選んでくれたことも、お礼を言った時の若林の誇らしげな表情も好きだ。 だが、壮大過ぎるプレゼントに悩まされることは好きになれない。そもそも清貧を極めた育ちから、過剰に物を持つこともなく、諦め癖もあいまって物欲の強くない岬である。一年に一回も欲しいものがある訳ではない。 「僕の欲しい物か・・・」 長考に入った岬に、若林は予想していたこととはいえ、罪悪感を覚えた。岬に欲しい物がないのは分かっている。思い出や友達や・・岬の欲しいものは、形にできない。 「・・金メダル?」 咄嗟に口にした若林の顔を、岬は二回見直した。その次の瞬間、笑い出したのは同時だった。
「・・それ誕生日プレゼントにしてはすごすぎない?」 「そうだな。お前の手を借りない訳にはいかないしな」 会話が成り立ったのは、ひとしきり笑ってからだった。確かに、岬が欲しい物、には違いないが、それくらいしかないのが、恋人泣かせだ。 「じゃあ」 笑いの発作の収まった岬はそう切り出した。 「来年の僕の誕生日は必ずお祝いしてくれるっていうのはどう?」 さっきまで冗談に笑っていたのとは、まるで違う優しい笑顔に、若林は思わず瞬きをした。随分可愛いわがままもあったものだ。それは、自分の希望でもある。 「やっぱり今年の誕生日も祝わせてくれ!!」 「君忙しいんだろ!?」 そうして今年のプレゼントも決まらないのであった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 お誕生日話を書くつもりが、ネタになってしまいました。金メダルネタ書きたかったに見えますが、違いますよ。 ともあれ、岬くんお誕生日おめでとうございます。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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