※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「知恵の輪なんて珍しいな」 待っている間にやっていたのか、岬の手が弄ぶ金色のリングを若林は見遣った。 「うん、もらったんだ」 岬は手を広げて、その知恵の輪を見せた。若林も子どもの頃には祖父母にもらったこともあったものの、今はあまり目にすることもない。岬は若林の目の前で、一つをくぐらせ、ひょいと合わせてみせた。 「うまいもんだな」 「やり始めると楽しいよ」 岬は解いた一組をもう一度組み合わせて、若林の掌に置いた。若林は渡された知恵の輪を一瞥して、岬の手に戻す。 「解けない時はどうするんだ?」 「頑張って解くよ」 微笑む岬に、若林は少し悪戯心を刺激された。冗談めかして、少し意地悪な質問を投げる。 「本当に?お前最後は力任せなところあるからな」 「そんなことないよ」 笑う岬に、若林は複雑な表情を浮かべた。 いざという時我が身を省みない岬、を何度も見た覚えがある。それどころか、強行突破してみせたこともあった。
その度に、背筋が冷えるような思いをした。そんな風に傷つく岬を想像するだけで、胸にひやりとした塊が落ちる。
「まあ、そうだろうな」 だが、岬の機嫌を損ねてまで、わざわざ指摘しなければならないことではない。そんなことをさせなくて済むように守ることができたなら。納得はしていない表情で、若林は岬の手元を眺めた。 「無理に外したら、知恵の輪だけじゃなくて、指まで傷めるからな。やめてくれよ」 これだけじゃなくて。口にしたら岬が反発することを若林は分かっている。核心は避けて話した若林の思いを知ってか知らずか、岬は静かに頷いたのだった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 強行突破する岬くんはかっこいいけど、見ている方は生きた心地がしないだろうと思いながら書きました。
(おまけ)
「若林くんもやってみる?」 今度は岬が悪戯っ子のように笑った。黙って大きな手を出した若林の目を覗き込むように、金色の一対を落とす。 「どうぞ」 「どうも」 若林は手を握り込み、一旦受け取ってから、開いた手の平を滑らせ、指に引っ掛けた。興味深そうに見つめる岬の目の前で、自分のそれよりも細い指に引っ掛ける。 「解かない限りは一緒だな」 その笑顔は悪戯にはとても見えず、岬を困惑させたのだった。
(おわり)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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