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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
散髪
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「若林くん、髪の毛伸ばしてるの?」
岬の問い掛けに、一瞬言葉に詰まった。確かに俺の後ろ髪は伸びている。
「散髪に行く暇がなくてな」
首の後ろがチクチクするのは確かで、気になりついでに後ろ髪を触っていると、岬は不思議そうに首を傾げていた。
「駅前にも床屋さんあったけど、行く?」
岬は提案してきたが、即座に首を振った。
「行かない」
「どうして?」
「行きつけの店に行くからだ」
そう前置きして、俺は事情を話し始めた。

 ドイツに来て1ヶ月程経った頃、見上さんの勧めで床屋に行った。特にこだわりもなくて、スタジアム近くの店に入った。
 店に入ったところで、店主は奇妙な顔をした。確かに日本人に限らず東洋人自体が珍しい。そう思いながら席についた。
 言葉が通じないことは予想していたものの、ここまでとは思っていなかった。思った以上に短く切られた上に、店主は「こんなに太くて固い髪の毛なんかあるのか!?」と失礼なことを喚いている。
 二度とこの店には来ない、と決意して、俺は店を後にした。そして、すぐに他の町で日本人の営む店を探し、以来通っている。

 折角岬が来てくれているのに、一人で出かけるのが嫌なのもあるのだが。

「それは大変だね」
岬はそう言うと、すっと立ち上がった。
「若林くん、はさみは引き出しの中だったよね?」
岬は微笑むと、引き出しからはさみを取り出した。
「切ってあげる」
「おい・・・」
岬が器用なのは知っていても、髪の毛を切ってもらうのには抵抗がある。
「大丈夫だよ。いつも父さんの毛を切ってるもの」
岬は茶目っ気たっぷりにウインクをしてみせ、俺の首に、タオルを巻き付けた。

 岬の髪は細くて柔らかい。少し色が薄くて、陽の光の下では更に明るい色に見える。岬なら、あんなに失礼なことを言われることもなかっただろう。
 岬はそのきれいな髪をサラサラ揺らし、慣れた手つきで俺の髪を切り始めた。
「若林くんの髪の毛、触り心地良いよね」
細い指先で髪を梳き、岬はリズムよくはさみを動かす。そっと触れてくる手が気持ち良い。
 と、そこで気になった。
「そういえば、岬は髪の毛どうしてるんだ?」
岬の髪型は昔からあまり変わっていない。目にかからず、首がはっきり見える長さだ。そして、岬によく似合っている。
「父さんが切ってくれてる」
岬は予想通りの答えを返し、それからまた少し切った。

「これでどうかな?」
首尾よく髪を切り終えた岬は、髪を払ってから、小さな手鏡を出して来た。洗面所の鏡と合わせると、後ろ姿も確認できた。
「さすがだな。ありがとう」
自分から言い出しただけあって、岬はうまくやり終えてくれた。
「どういたしまして。これで、髪の毛が当たらなくなったよ」
岬は微笑むと、少しもたれて来た。いつもの位置で寄り添うと、確かに髪が邪魔になっていたのが分かる。岬の柔らかい髪の甘い香りに、抱き寄せずにはいられない。
「じゃあ、もっとくっついてもらおうか」
肩を抱いた俺に、岬は苦笑しながらも、身体を預けて来たのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
本棚から出て来た『びっくり先進国ドイツ』という本で、散髪についてのくだりが面白くて書きました。ちょっと前の本なので、情勢などが違っていることもありますが、生活についてなどはなかなか面白いです。

最近、録画プレーヤーを新調したので、アニメをよく見ています。古いオタクなので、ガンダムはUCしか見ていませんが、ZZ好きにはなかなか興味深いです。どこかで見たようなMSが多いので、安心しますし。ただ、ZZの主人公が好きな私としては、彼が出て来ないのは本当に寂しい。この作品時には22歳なんだとか考えると、見たくて仕方ない。「この人が左のCPならBLでもNLでもOK」などと思うのは彼だけなので。(若林くんの右は岬くんであってほしいですし、岬くんの左は若林くんじゃないと嫌なので)でも、やっぱり出て来たら、それはそれで違うとか扱いがぞんざいだとか思うに違いありません。
と、グランドジャンプを見て思う今日この頃。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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