※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「なくしたくない」から続いています。 「今度はどれくらいいるんだ?」 連絡をもらったのは昨日。オフなのを幸いに、急いで掃除をした。そう物の多い部屋ではないので、さして手間ではない。そして岬はいつもの通り、小さなカバン一つで現れた。 「二日置いてもらってもいい?無理だったら言ってね」 岬が忙しいのはよく知っている。予定を調整してこっちまで足を運んでくれているらしいのも分かっていた。 「いや、大歓迎だ」 「ありがとう!」 大げさに喜んでみせ、岬は急に抱き着いて来た。いつもはそんな悪ふざけはしないのだが、今日は違った。ごく自然にハグをしてくる岬に、戸惑い動揺した顔を見られないようにふるまう。他の連中だと平気なものが、岬相手だと勝手が違う。細くて、しなやかな背に腕をまわすのもぎこちなくなった。
岬が来ると、たいてい話をしていることが多い。気に入った家具しか置かないため、広い部屋の中央に陣取る大きなソファに並んで座り、飲み物を片手に話をする。近況から始まって、互いのチームの話に変わるのは、缶ビール2本目くらいだ。本当に他愛のない話なのだが、大きな目でじっと見つめてくる様子に、つい期待をしてしては、肩透かしを食らうのが常だ。だが、今日は違っていた。逸らそうとしても、目が合ってしまっていた。 「岬、どうした?」 「若林くんって、誰かと付き合ったことある?」 急に尋ねられて、何事かと思った。 「まあ、人並みだな。どうかしたか?相談には乗るぞ」 何かあったのだろうとは思う。だが、できればあまり生々しい話は聞きたくないと思った。 「今まであまりうまくいったことがないから、聞いてみたくて」 岬からそういう話を持ち出したのは初めてだった。俺のチームの連中とかに言い寄られている時に、恋人がいると断っていたり、俺が聞いた時には別れたと言っていたり。電話がかかってくることもあった。同じ空間にいながらも、遠いのだと思わずにはいられなかった。それでも、そんなに続かないというのは、心当たりがあった。 「どうしてもサッカー中心の生活だし、その辺りは理解されないらしいな」 オフの日でも、予定がなければトレーニングに行く。俺からすると当たり前でも、そうは思ってくれない。もっとも、友達の紹介で数回会ったのが付き合う内に含まれるなら、だ。 「そうだよね。それと・・・今まで付き合ったのは自分から?それとも相手から?」 話している内に、白く透き通るような頬が、淡く染まった。その様子に目を奪われて、慌てて逸らす。 「好きになった相手と付き合ったことはないな」 もし、好きな相手が言えたなら。とめられない衝動に胸が疼く。俺と岬は純粋な友人関係だ。男女問わず付き合っている様子の岬だが、詳しく聞いたことはない。こうして来るくらいだから、嫌われてはいないのだろうが、岬にとって特別な存在であるとは言い難かった。 「そうだったら幸せだろうな」 向かいに座る岬を捕まえられたら、好きだと言えたかも知れない。だが、その手は届きそうになかった。
(つづく)
拍手ありがとうございます。 すっかり続き物に。
スポンサーサイト
テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
|