今日のきみとぼく寝待月

寝待月

※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「随分遅かったんだね」
ソファから身を起こして、岬は微笑んだ。

　お互いの合鍵は持っている。
　昔岬がフランスにいた頃、突然来ることがあって、渡したのが始まりだった。秋でも十分に寒いハンブルクで、家の前で待っていた岬の冷え切った手を握った時に、どうすれば良いのか分からないような、たまらない気持ちになったのを今でも忘れられない。
　それからすぐに、合鍵を渡した。受け取れないと拒む岬に、無理やり押し付けるように渡したせいで、次に会った時には、自分の家の合鍵をくれた。
　そんな岬も今は忙しいせいか、そんなに急に来ることもなくなっていた。恋人同士になって、合鍵を持っていることも不思議でなくなったのに。
「来てたのか？」
「うん。こっちに寄る用事ができて。シャワー借りたよ」
岬はそう言うと、静かに立ち上がった。髪も少し湿って見える。ヒーターは点けていたようだが、コートを膝に掛けていただけのようだ。
「ベッド使ってたら良いのに。風邪引くぞ」
抱き寄せると、いつもの通り柔らかい髪は少し冷たいようだった。
「どうせだから、顔見てから寝ようと思って」
そう会っていない訳ではないのに、目を合わせた途端に、懐かしさに似た感情が生まれる。
「それで月を見てたよ」
岬の指差す先には、少し欠けたような月が浮かんでいた。
「月が出てたのか」
「うん。遅い月だから、さっきね。寝待月って言うらしいよ」
窓の下の方に見えている月。確かに、寝て待つような時間だ。
「岬」
「ん？」
月を眺めていた岬を後ろから抱き締めた。こんなことなら、チームメイトと飲みに行かずに帰れば良かったと後悔ばかりが浮かぶ。
「今すぐシャワー浴びて来るから、１０分だけ待ってくれ」
昔、部屋の前に座り込んでいた岬を見た時のように、心の中から溢れる感情がある。とめどなく湧き上がる思いを抑え切れずに伝えると、岬は抱き締めた俺の腕に手を回した。
「じゃあ、待ってるよ。でも、ちゃんと温まって来てね」
窓ガラスに映る岬も、嬉しそうに微笑んでいた。

（おわり）

拍手ありがとうございます。
ねのつくタイトルが思い付かず。

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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック

[2016/04/12 22:00] | 書いたもの | トラックバック(0) | コメント(2)

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頑張って探してみましたが、もうすでに真さまが書かれてる物が多いような気がします。
切なくてきゅんとする今回のお話は特に大好物で、どのお話も密かに堪能させてもらってます。
何を選ぶかも含めて毎回楽しみにしています。

[2016/04/13 22:34] URL | 銀月星夢 #mQop/nM. [ 編集 ]

ねねね
星夢様、コメントありがとうございます。
最初、ねるねるねるね、とネス湖しか思いつかず、その後はネクタイとか考えたのですが、ご指摘の通り、結構書いているタイトルが多く、思いつかなかったのでした。
こんなにあるんですね…使えそうなタイトルばかりで、書いてみたくなりました♪
なかなか思ったような話は書けませんが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

[2016/04/14 23:31] URL | 真 #- [ 編集 ]

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