※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「思わぬ雪見になったな」 若林くんの言葉に、ついため息がこぼれる。誘われて来た温泉で、送迎バスも動かないほどの雪に見舞われた。その上、最寄の路線では電車も止まっているらしい。 それなのに、若林くんは平然と露天風呂に行こうと言い出したのだった。 「まあ確かに綺麗だけど」 高台になっているため、雪に被われた麓の町が眼下に広がる。分厚い湯気の向こうには、更にチラチラと雪が舞う。 「折角の湯治だからな。こんなのも良いさ」 こんな時でなければ、温泉で羽を伸ばすのは難しい。気ばかり焦るよりは、リラックスした方が確かに良さそうだと思って、諦めて目を閉じた。気休めかも知れないけれど、体の芯まで温まることで、胸の中にも何かが補われるように思える。それだけでも、ここまで足を運んだ意味はあった。 「雪、このまましばらく降ったら良いのにな」 他のお客さんはまだ来ないと女将さんからは聞いていた。広い露天風呂を二人で占領しているのは、確かに贅沢そのものだった。 「本当に贅沢だよね」 相槌を打ったつもりが、手を押さえられた。目を開けると、すぐ側まで若林くんの顔が近付いていた。 「岬とこんなに長く一緒にいられることなんか滅多にないからな」 握られた手を振り解けずに、そのまま隣に座っていた。いつもなら、こんな穏やかに並ぶことはない。 「そうだね」 皮肉も交えて頷く。若林くんはゆっくり手を伸ばして来て、僕の頭の上の雪を払ってくれた。お湯の中に落ちた雪は、すぐに溶けて消えていく。 「寒くないか」 そのまま、温まった腕で抱き寄せられて、胸の奥の雪も溶けていく。そしてまた暖かいものが満ちていった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 温泉を書くつもりが、湯治になってしまいました。疲れています。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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