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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
洋館
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

「若林くんの家って、すごいらしいね!」
SCの練習が終わり、翼が走り寄って来た。開口一番の台詞に、つい絶句する。何をもって、すごいと言っているのか分からない以上、確認しようがない。
「どういう意味だ?」
尋ねたところで、翼の横から保護者が現れた。MFの岬は翼と同じ学校で、しかもコンビを組んでいるだけあって、言葉足らずを通り越し、不可解レベルの翼の言動をフォローすることが多い。そのため、チームでは保護者と言われていたりする。
「石崎くんが、若林くんの家は広くて、和室も洋室も混じっているって言ってたんだよね、翼くん」
さすがに、岬の説明はよく分かった。頷く翼に、岬はニコニコと笑顔を向けるが、気もそぞろな様子だ。まだ後片付けが残っているから、真面目な岬としたら気になるだろうな。
「何なら見に来るか?」
「うん!行く!」
翼が即答したところで、立ち去ろうとした岬の腕を取った。振り返る岬に、告げる。
「悪いが、岬も一緒に来てくれ」
「う・・・うん」
俺の言わんとすることが分かったのか、岬はためらいがちに頷いた。

 俺の家は、確かに変わっている。増築やら改築を繰り返したせいか、洋間と和室が入り混じっているのだ。部屋だけではなく、外観も角度によって違えば、敷地内の建物も和洋折衷、節操がない。
 という説明をしたが、翼は俺専用サッカーグラウンドを見た途端に一目散に駆け出し、戻って来る気配はない。おそらく屋敷の説明をしても興味はないだろうと思われた。
「岬、ジュース用意してあるから来いよ」
「でも・・・」
「翼がグラウンドにいるのは間違いないからな。放っておいてやろう」
そう言い切ると、岬はくすくす笑って居間について来た。

「今日はごめんね」
先に切り出したのは岬の方だった。
「いや、こっちが巻き込んだようなもんだから気にするな。それより、お前も大変だな」
翼の保護者、という影のあだ名が定着して久しい岬だ。今日も素直について来ていた。
「ううん。僕は一人っ子だし、よく転校してるから、みんな面倒みようとしてくれるんだ。だから、新鮮で楽しいよ」
りんごジュースを片手に微笑む岬に、確かに転校生じゃなくても、庇護欲が湧きそうだと思った。
「確かにそうだよな。岬も何か仕出かすんじゃないか、目が離せないもんな」
「それはあの時だけだよ!もうっ」
岬は大人びた優しい奴だと、みんなは言う。それでも、初対面でボールをぶつけられそうになった俺の意見は違う。こんな風に膨れる顔は可愛いが、色々抱え込んでいるものが大きくなり過ぎないように処理する術を持っていて、本当に大人だ。簡単にはそれを見せないところも。
「だから俺には何言っても良いからな。全部受け止めてやる」
そう言った俺に、岬は目をぱちぱちさせて瞬きをした。
「・・・若林くんってチームのお父さんみたいだね」
どうやら自分が特別扱いされているとは、思ってくれないらしい。
「そう言う岬こそ、翼の保護者だって言われてるぞ」
我ながら、子供っぽい反論だった。岬は大きく目を見開いて俺を見つめ、それから笑い出した。
「何だよ、それっ!」
「お前こそ失礼だろ」
チームの父親と母親。そう思った瞬間、心臓が急に大きく動いた気がした。

 岬と目があった。

 笑いすぎて、少し赤くなっている顔も可愛いと思った。
「みさ・・・」
言いかけた時に、庭に面したテラスのガラスを開けて、翼が顔を出した。
「二人とも遅いよ。待ってるのに!」
翼、お前はやっぱりサッカーしに来たのかよ。

 玄関に戻る途中、岬と二人になった。さっきの続きを伝えようとして、何が言いたかったのか分からなくなった。それでも、何か言いたくて、隣を歩く手に触れた。
「岬、また遊びに来いよ」
「うん」
岬の笑顔を見て、これで良いのだと思った。自分でも分からないこの気持ちは、形になってから伝えたいと思ったのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
若林家の謎。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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