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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
ル--ビックキュ--ブ
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。

 若林くんが来たのは、お昼過ぎのことだった。家の都合で一時帰国したから、とついでに寄ってくれた。
「忙しいだろうから、良いよ」
そう言ってはいたけれど、会いたい気持ちがなかった訳じゃない。だから、久しぶりに若林くんの顔を見て、涙が出るんじゃないかと心配になった。

 お茶を出すと、若林くんは机の上に置いていたル--ビックキュ--ブを手にしていた。
「最近周りで流行ってるんだよ」
森崎くん発信で流行り出して、他の友達もやっている。井沢も何種類か揃えているのを見せてくれた。
「これ、兄貴の部屋で見たことあるぜ。名前は忘れたけど」
若林くんはそう言うと、ガチャガチャ動かしてみせた。
「名前忘れるよね?ル--ビックキュ--ブだよ。6面の色を揃えるパズル」
受け取って、若林くんが動かした分を戻してみせた。
「森崎くんが貸してくれたけど、まだあまりうまくないんだ」
動かし方のパターンは大体分かったけれど、スムーズに動かす程ではない。まして他のことを考えながら、なんて離れ業とは程遠い。
「へえ・・・森崎が貸してくれたのか?」
「うん。森崎くんは他にも持っているから」
関心のない人が驚く程、ル--ビックキュ--ブの種類は豊富だ。色を揃えるタイプでも、この3列の他に4列や5列もあるし、丸いタイプのものも、全面銀色で形だけで揃えていくものもある。
「・・・遊んでばかりいないで、練習するよう森崎に伝えてくれ」
ため息をついた後、若林くんの発したのはお小言だった。言ったらまずかったかと心配した僕に、若林くんは小さく手を振ってみせた。
「岬はもう少し遊んで、気を抜いた方が良いぜ」
優しく微笑む顔に、また泣きそうになった。

 次の日、部活から帰った頃に、若林くんが来た。
「どうしたの、こんな時間に?」
部屋に上がるよう勧めても、若林くんは首を振った。
「明日には帰るから、顔見に来た」
そう言って、若林くんはいつもの通り、どこか懐かしい笑みを浮かべる。何だか名残惜しくて、僕は手を差し出した。
「わざわざ寄ってくれてありがとう。・・・元気でね」
いつもの距離だ。友達の距離にしては近くて、恋人の距離にしては遠い。若林くんはその距離を縮めるように一歩踏み出して来た。思わず見上げたところで、若林くんには珍しく忙しない動作で、抱き締められた。
「岬」
あまり心臓が跳ねたから、気付かれたかと思った。本当は好きなんだ。とっくの昔に気付いていて、でも気付かないふりをしていた。
 こんな感情を抱いていると知られたら、きっと君を困らせる。
 僕はできるだけ冷静を装って、若林くんに話す。
「熱烈にハグしてくれるのはありがたいけど、誤解される前に離れてね」
確かにアパートの玄関では人目がある。と言っても、こんな時間に帰って来る人なんか、父さんを含めていない。
 それでも、僕の言葉の調子から感じるものがあってか、若林くんはゆっくりと離れた。その腕に掴まりたい気持ちはあっても、できなかった。
「じゃあね、元気で」
いつもみたいに、また会おうとは言わなかった。若林くんはカバンをゴソゴソ探ると、重みのあるビニール袋を一つ僕の手に掛け、それから
「またな」
と去って行った。

 若林くんの後ろ姿を、引き留めたい気持ちを押し殺しながら見送った。わざわざ会いに来てくれただけでも、嬉しくて仕方なかったのに、その気持ちすらしぼんでいく。最初は会えるだけで嬉しかったのに、どんどん欲張りになる気持ちをもて余し、僕は部屋に戻った。

 部屋に戻ってから、若林くんに渡されたものに気付いた。近くのデパートの包装紙に包まれてはいたけれど、箱にも入っていないように見えた。
 よく分からないまま包装紙を開けてみると、入っていたのはル--ビックキュ--ブだった。しかも、バラバラの。
 念入りに動かしたようで、色はバラバラだ。黄色い面に何か付いているのが気になって、とりあえず気分転換に動かした。

 ル--ビックキュ--ブは5分位で完成した。現れた文字に戸惑いながらも、途中からは期待で胸が痛かった。それを押し切って、どんどん先を急いだだけのことはあった。

 好きだ

 シンプルなだけにストレートな一言に、胸の高鳴りが痛い程だ。それでも、たった一つの言葉だけは言えると思った。

 若林くんに電話をすると、すぐに出てくれた。
「岬、どうした?」
優しい声に、心がまた騒ぐ。
「若林くん、ありがとう」
「何だ、もう解けたのか?」
僕の声に何かを察したのか、若林くんが尋ねる。
「・・・うん。あのね・・」
「岬、すぐにそっちに行くからな!」
言い終わるか否かの内に、若林くんは電話を切った。

「若林くん、大丈夫?」
「ああ・・岬、好きだぜ」
駆け付けて来た若林くんは、僕の告白を制して、先に告白をしてきた。すぐには言葉にならなくて、若林くんを見つめた。
「・・・僕も」
今度も抱き寄せられた。それはさっきよりも更に慌ただしくて、そんな余裕のない態度がかえって嬉しく思えたのだった。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
「わ」から始めて「ろ」「れ」ときたので「る」。なかなか思いつかないものです。
「ルーレット」とか「ルール」とか、どうやって小噺にしたら良いのか微妙なものばかり。
それでいきなり商品名になってしまいました。
ちなみに、最近のバージョンだと白の反対面が黄色になります。
そして大体最初に習うやり方は白からそろえて、最後が黄色、という順です。
ということで、初心者あてのメッセージは白の反対面に、という話でした。
(ル--ビックキュ--ブに消えにくい文字を書くと恨まれますので、真似はしないでください)
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


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