※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 最終回です。 「ちょうどその頃に、絵画コンクールの結果も発表されるから、期待していたんだけど、落選でね。クリスマスの頃なのに、ネロは一人ぼっちで、教会に入って。見たかったルーベンスの絵を見ながら、パトラッシュと天国に行くんだよ。そして、クリスマスの朝に、ネロを引き取ることにした村の人や、ネロの絵の才能を見抜いた人が迎えに来る中、冷たくなったネロとパトラッシュが見つけられるの」 およそ救いはない。だが、みんなその話を知ると一様に思うらしい。 「・・・似ているって言われたって顔だな」 自分こそそう思った顔の若林に、岬は小さくため息をつく。 「うん。忘れた頃にまた話が出て来て、困るよ」 岬の言葉に、珍しい感情を垣間見て、若林は微笑む。そう言えば、そんなことも知らずにルーベンス展に誘ったことがあった。岬は何も言わずに、とても楽しんでくれていた。だから、何も気づかなかった。それに今、困る、と呟いた岬の表情は柔らかくて、困っているようには見えない。 「へえ、岬そんなコンプレックスがあったのか」 愉快げにからかうような若林の言葉に、岬は首を振る。 「コンプレックス、ほどじゃないよ。ただ、ちょっと、ね」 悲劇の主人公と重ね合わされるのは、あまり愉快な話ではない。特に、父親より他に身寄りのない自分が、同じように一人になったら、と想像した夜を思い出してしまう。だが、それも、今は遠い話。一人で震えていた夜の恐怖よりも、友達との思い出が積み重なって、暖かい連想ばかりが心に浮かぶ。
「今は似てないと思うぜ」 全国大会の時に日向と松山に言われた。ちょうどその頃放送していた、ネロは昔の翻訳では清という名前だった、という番組を見て、二人は岬を思い出したそうだ。 「太郎じゃないのか、と思ったけどな」 ひどいことを言う日向に、岬は腹を立てながらも、心配されるよりはずっと嬉しいと思った。
「まあ、安心しろ」 若林は岬を抱き寄せた。たまにしか会えない恋人を寡黙にさせておくのは本意ではない。自分はいつだって味方だし、頼ってくれたなら、むしろ嬉しいくらいだと思う。 「いつでもどこにいても、助けに行ってやるから」 自信たっぷりに微笑む若林に、一緒なら、きっと不幸にも孤独にもならせてもらえないな、と岬は思う。誰かといる、一緒の幸せを知ってしまってから、天国に向かうネロが淋しくなかったような気がしてならない。それを教わる為に、自分も旅を続けてきた。 「ありがとう。大丈夫だから、この手は離してね」 それでも、頼りがちのありすぎる腕に捕まったら、今日の予定はこの部屋で終わってしまう。 「何かあったら、ジョンに頼むよ」 「って、それ心中コースだろっ!」 ふざけながらも、腕も心も広くて暖かい恋人に包まれて、岬は次にこの話を思い出す時、笑顔を浮かべてしまうだろうと思った。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 ・・・クリスマス前に終わりました。 この部分が一番最初に出来ていたのに、20日の分をつけたら、他を書きたくなって。 若林くんの部分が一番薄くなってしまったのは、どうしてでしょうか。 フランダースの犬は原作ではあんな子供ではないし、変人扱いの方が強くて、 だいぶニュアンスが違うのですが、ここはあえて岬くんとイメージの近いアニメ版で。 岬くん(特に最近の)はもっとたくましいし、現実的な人だと思います。
ところで、ジョンオチは二度目なのですが(前回はクレスリウム王国さまの『雪山』) 「犬」ときたら、これ以外のオチはないと思うので、どうかお許し下さい。
from past log<2008.12.22>
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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