※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 「温泉?」 若林からの提案を、岬は疑問符混じりに聞き返した。 「日本に帰るの?」 フランスから来たところを温泉に誘われた岬が誤解するのももっともだと、若林は説明を始める。 「そっちだと風呂自体が珍しいみたいだが、ドイツは温泉があってな、スポーツのトレーニングにも利用されていたりするんだ」 「へえ・・・」 それは知らなかったと感心する岬だったが、温泉というものが具体的にイメージできるにつれ、次第に赤面していった。 「お、温泉って裸じゃないの?」 「ドイツは水着着用のところが多いぞ。熱さもぬるい感じで」 顔を見ないで聞いていたら、特段違和感を覚えなかったのだろうが、若林の表情を目の当たりにした岬は、間髪入れずに答えた。 「いや、行かない」 脊髄反射でも早いレベルといえるスピードに、若林は苦笑した。水着、と言った時についにやついてしまったのは失敗だった。 「プールみたいな感じだぞ?それなら大丈夫だろ?」 食い下がる若林に冷ややかな眼差しを向け、岬はすげなく答えを返す。 「僕泳げないから」 「プールみたいなだけで、泳ぐ必要はないぞ」 対する若林の答えも早かった。岬が泳げるかどうかは知らないが、水に対する恐怖よりは羞恥心による答えなのは明らかだった。 「僕、水着持ってないし・・・」 「それくらい買ってやるから」 追い縋るように言葉を重ねたものの、自分がいかに必死になっていたか気付き、若林はこほんと一つ咳ばらいをした。 「Jr.ユースの時は、普通に一緒に着替えてただろうが」 「あの時はそういう間柄じゃなかったし・・・」 二人が付き合い始めたのは最近のことだ。それまでは平気でも、意識した途端に恥ずかしく感じることがある。白い頬を真っ赤に染めて口ごもる岬はいかにも可愛らしく、若林はこれはどうしても温泉に行かなければ、と決意を新たにする。 「あ・・でも、よく考えると、あの時も若林くん結構ジロジロ見てたよね」 岬の指摘に、若林も当時のことを思い起こす。 岬が、着てきたシャツを脱ぎ、ユニフォームに着替える、たったそれだけの動作でも、うっすらと筋肉のついた細い身体や上気した白い肌をさらし、背中を反らせる様は、目が離せなかった。わざと隣に行き、鎖骨や胸乳を盗み見たこともあった。 「・・・絶対に行かない」 まして恋人関係になった今、二人で温泉に行こうものなら、どんなことをされるか分かったものではない。身の危険を感じ、岬は何度も首を振った。 「そうだな。今回はやめておこう」 若林は岬が拍子抜けするほどあっさり答え、次の計画の話を始めた。古城を見に行くという案に賛成しながら岬は首を傾げたものの、若林が翻意してくれたことに安堵していた。 そして、若林は安心している岬をよそに違うことを考えていた。
プールのように開けた温泉では、二人きりになれないこともさることながら、岬の半裸を他の連中にも見られてしまうことは避けられない。そしてドイツはその手の連中も少なくない。 「行くなら、日本の温泉だな」 力強く言い放った若林に、一旦は安堵し落ち着いた岬が、ツンと首を背け、その機嫌はしばらく直ることはなかった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 タイトルは悪い、ではなくドイツ語の「温泉」。最初、男の性(さが)とか付けようかと思っていました。困ったものです。 忙しいので、しばらく短編中心にします。更新はします。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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