※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 眠れなくて、テレビのスイッチを入れた。無理に寝ようとするのが辛いことも経験上分かっている。サッカーでなくても、何かスポーツでもやっていれば、と思っていたけれど、映っていたのはフランスの古そうな映画だった。
帰らない恋人を待つ女性が雨のやまない空を見上げて、何度もため息をついているシーン。
窓から外を見たところで、何が変わる訳ではないのに、眺めずにはいられない、その気持ちをよく知っている。来ないと分かっていても、待ち望んでしまうことも知っている。
いつの間にか、こんなに好きになっていた。若林くんのことを思えば、涙が出そうな程。そんな女々しい自分は嫌いなはずなのに、どうしても捨て切れない想いは、心の奥底に沈めてもまた浮かび、たゆたう。
昔、恋愛ドラマが苦手だった。絵空事ばかりで、恋愛のことばかり考えているような映画を軽薄だと思っていた。それなのに、いつの間にか映画に見入ってしまっている自分に気付く。
まるで、三文芝居だ。
映画では、恋人が帰って来た。開いたドアから戻って来た人影に、胸が弾む。この嬉しさも、抑えようのない喜びも、胸の中で暴れるようなときめきも、若林くんに会ってから知ったことだった。
ハッピーエンドで終わった映画のエンドロールを見ながら、ゆっくりと目を閉じる。想うだけで、心に花が咲く。その花のことを、いつか伝える日が来るんだろうか。そう思った時だった。
電話が鳴った。
「岬?」 聞こえたのは、若林くんの声だった。いつもなら、寝ている時間。そんな時間の電話は今までなかったことで、背筋に冷たいものが流れた。 「若林くん、どうしたのっ!?」 夜中だから、声は潜めている。それでも、つい心配になってしまう。 「さっき、岬からワンコールだけ電話が入ったから、心配になって」 「えっ!?」 電話をかけた覚えはなかった。それでも、リモコンを操作しようとして、手を伸ばした時に、携帯電話に手が触れたような覚えはある。 「・・・ごめん、間違って触ったみたいだ」 時差があるとはいえ、確かにびっくりするだろうな。こっちが夜中なのは分かっているだろうから。 「いいぜ。何もなくて良かった。岬、困ったことがあったら、いつでも言ってくれよ」 声を落としている僕に合わせたのか、若林くんはいつもよりも携帯電話に近い距離で、囁いた。僕の好きな声で、うっとりするような口調で。 「俺は岬の声が聞けて嬉しかったぜ」 いつもよりも艶っぽく聞こえる囁きに、体の奥の方から震えた。振幅の大きい鼓動に、息すらできない。押しつぶされそうな中で、かろうじて言葉になったのは、欠片だけだった。 「・・・僕も」 抱き合う場面を想像してしまったのは、映画の影響だったに違いない。それでも、そんな未来がいつか訪れるような気がした。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 タイトルを先に決めたので、そういう話を書いてみました。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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