※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。 駅に着いた若林は、腕時計を見て顔をしかめた。電車が早く着く可能性もあるからと、早く出たところ、早く着き過ぎたためである。
岬を待たせるわけにはいかないと、早く出過ぎたのがまずかったらしい。待ち合わせ時間まで随分ある。だが、早く来過ぎた理由はそれだけではない。
岬と会う。あいつも忙しいと分かっているが、会いたい気持ちを押さえ切れずに、約束を取り付けた。 「若林くんは普段かっこいいのに、どうしてこうなんだろう・・・」 弱った口調で岬は零していたが、「普段はかっこいいと思ってくれてるのか」と聞き返すと、途端に慌てた様子になった。 「い、いや、そういうんじゃなくて。その、あの、今度の日曜日だね、うん」 慌ただしく電話を切り上げようとするのが可愛かった。 岬と会うのが楽しみで、今朝は早く出て来てしまったのだった。
岬のことが好きなのは間違いない。初めて会った時から気になる奴だったし、再会してからは特別な存在になった。 断られても、誘い続けたのも岬くらいだ。 口説いても、冗談のように受け取られ、まだ友達の域を越えられない。それでも、一緒にいる時は楽しいし、心が休まるのに、心のどこかには爆発しそうな塊があって、ジリジリパチパチと火花を上げている。
恋の喜びなんて未だ遠い。焦げる熱さばかりで、この渇きが癒されるのは、会っている時だけ。
そして考える。 今日は岬はどんな表情で来るのか。 どこに行って、何を食べようか。岬の気に入りそうな場所を考えるのはいつも楽しい。岬が驚き、喜ぶのが嬉しくて、待ち遠しい。
まだ待ち合わせ時間には早いな、と腕時計を見やった時、こちらを見ている相手に気付いた。
「岬!」 若林に呼び掛けられ、岬は足早に歩み寄った。 「少し早く着いちゃって、どうしようと思ってたんだ」 顔をほのかに染め、近付いて来た岬に、若林も手を振った。 「岬、よく来てくれたな」 破顔一笑の若林に、岬は困った顔で微笑む。
若林くんに早く会いたくて、僕はいつもよりも早い電車に乗ってしまった。それなのに、いざ着いた時には、早く来すぎた自分が何だか恥ずかしくなって、戸惑ったところで、若林くんを見かけた。 金髪やそれに近い髪の人達の多い中、若林くんの黒髪は目立っていた。柱にもたれ、男らしく整った顔で、何か考えている様子に、胸が一つ音を立てた。
本当に忙しいのに、僕のことを心配して声をかけてくれる若林くん。若林くんと会うようになって、どんどん惹かれていくのが分かる。次に会うのが怖くなるくらいに、心が奪われていく。男の僕から見ても、あんなにかっこいい人だから、いつも会いたいなんて冗談が苦しいほど。
真剣な顔で何を考えているのか、怖くて声を掛けづらいと思った時に気付かれた。すぐにあんなに優しい笑顔を向けられて、またドキドキした。
「こちらこそ。早く来てくれて、ありがとう」 淡く色づいたままの頬で頭を下げた岬に、若林は少し複雑な表情を浮かべた。 「いや、あっという間だった」 どこに行こうか、何しようかと考えていたら、本当にあっという間だった。それは楽しい時間だった。 「岬のこと考えていたからな」 「えっ・・・」 絶句した岬の手を取り、若林はまた笑顔になった。
(おわり)
拍手ありがとうございます。 待ち合わせ、長く待っている方が惚れている、と言われますが、この二人は互角ということで。 考え込む岬くん、百面相の岬くんを楽しむ若林くん、バージョンも考えたのですが、真剣な表情で考え込んでいる若林くんの方が書きたくなったので、こちらを。 視点がコロコロ変わってまとまりがなくなってしまってすみません。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック
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