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今日のきみとぼく
源岬への愛だけで構成されております。
新春スペシャル
※女性向け二次創作です。苦手な方はご注意ください。


「若林くん、起きたまえ」
不吉な声を聞いたような気がして、こわごわ目を開ける。
「おはよう、目は覚めたかい?」
目の前にいたのは予想通り三杉だった。朝から不吉なものを・・と目を逸らしかけて、ふと気付いた。三杉はスカートを履いている。
 思わず二度見をする。三杉はブレザーにスカート、ブレザーの腕の腕章には「生徒会長」と書かれており、・・・おそらく日本の高校生の服装だ。
「三杉、どうしたんだ!?」
三杉の高校の制服は見たことがない。それでも、スカートでないことは間違いない。
「君こそ、どうしたんだい。そんな大声を出して」
スカート姿の三杉は、俺がいかにもおかしなことを言ったという表情で、聞き返した。
「そりゃ、女子の僕が起こしに来たから驚くのは分かるけどね。理事長の孫でたった一人の男子の若林くんがなかなか起きないから、生徒会長の僕が起こしに来たんじゃないか」
三杉、女子なのか!?確かに、いつもよりは声が高い気はするが、丁寧にブローされた髪や身のこなしはいつもの三杉にしか見えなかった。それより、その説明的すぎる台詞は何だ。・・・あまりの意外さに声も出ず、まだ醒め切っていないまま周囲を見渡すと、どう見ても昨日のままの合宿所の自室にしか見えないが・・・三杉の後ろにもイレギュラーな人影を認めた。
 ブレザーなしの白いカッターシャツにネクタイ、真っ黒の頭に白いハチマキ。これはどう見ても松山だ。スカートをはいている以外は。
 とそこで、俺の頭は急速に回転し始めた。どうやらこれは夢だ。三杉の説明からすると、自分の周りがみんな女になるという、下の兄さんが好きなPCゲームのような事態だ。そして三杉、松山ときたら。
 俺はすぐさま起き上がると、クローゼットを開け、そこにかかっている制服らしいものを着始めた。
「ちょっ、僕達がいるのに着替え出すなんて・・・」
「若林、覚えておけよ。先生に言うからな」
相変わらずな二人が慌てふためいて部屋を出た直後に、着替えた俺も部屋を飛び出した。

 岬は、どこだ?

 合宿所にしか見えない寮を出ると、隣にはクラブハウスにしか見えない建物が見えた。日本の高校をよく知らない俺の意識としてはこんなものだろうと近付くと、門の側には見慣れた修哲の連中がいた。
「あ、若林さん、おはようございます」
挨拶したのは、井沢だ。続いて、来生や滝が挨拶を被せて来る。
「おはよう。あれ、お前らはジャージか?」
「はい、朝練です」
返事をしたのは高杉で、ジャージ姿で助かった。見慣れた連中だけに、違和感は三杉や松山の比ではない。そうか、と返事をして周囲を見渡す。
「岬を見なかったか?」
「岬ですか?岬ならたぶん、花壇ですよ」
森崎の答えに、片手を上げてから走り出した。

 クラブハウスのすぐ前には確か花壇があったはずだ。記憶をたどって歩き出したところで、誰かにぶつかった。
「っ痛・・・ってめえっ!」
今までの面々とは違う、ドスの効いた声ですぐに分かった。俺がぶつかった相手は日向だった。予想に違わず、ブレザーの前は留めずにネクタイは緩く結んでいる。そしてスカートだが、この色の黒さは見間違えようがない。
「日向さん、大丈夫ですかっ!」
そして、駆け寄って来る奴も予想通りだ。長い髪を結わえた長身。若島津だ。日向は少しめんどくさそうな顔をしたが、大いに同感だった。日向はさっさと態勢を整え、歩き出した。若島津の方が振り返ってまで睨んで来た。
「ったく、気を付けろっ!!」
女になっても、言葉遣い等は変わらないらしい。自分たちが正義とでも言わんばかりに肩で風を切り、道の中央を歩いて行く。関わりにならない方が良いと判断して、花壇の周りを見渡した。

 そこに天使がいた。

 朝の淡い光の中で、手入れの行き届いた花壇に水やりをしているのは岬に間違いなかった。普段より更に和らいで見える表情で、短く柔らかい髪を風になびかせている。ブレザーの代わりに、紺のカーディガンを着て、スカートが少し短めなのが実に岬らしい。華奢なラインを目立たせるように、少し体を捻った姿勢なのも実に絵になる。じょうろから出た水が虹を作り、早起きのモンシロチョウが岬の耳元に留まったところで、もう我慢できなかった。
「岬っ!!」
「あ、おはよう、若林くん」
すぐ側で呼びかけると、岬は笑顔で振り返った。短めのスカートが勢いでふんわりと風に舞い、俺は自分の背の高さを生まれて初めて悔やんだ。
 だが、それ以上に振り返った岬は可愛かった。淡い色の口紅が白い肌を際立たせ、日差しでほんのり染まった頬は愛らしい。そして、普段より甘い香りがするのもたまらなかった。
「岬、結婚しよう!!」
「えっ!?」
岬の笑顔が固まる。それはそうだ。本来「好きだ」と告白するつもりだった分、自分でも驚いたが、今更言い間違えたとは言えない。岬の笑顔が可愛すぎて、より本心が出てしまっただけだ。これが夢なのは最初から分かっていた。だから、前後の脈絡など関係なしで岬を探した。こうなった以上、告白でもプロポーズでも怖いものはない。
「すぐにでも、結婚しよう。好きなんだ」
「あの・・・若林くん・・・」
普段は手を握ることも難しい岬が、目の前にしかもスカート姿で立っている。これは我慢しろという方が無理だ。
「えっ、ちょ、ちょっと!」
岬の肩を押さえ、背中に腕を回すと、岬は身を反らして逃げようとする。だが、それを許すような俺ではない。キーパーのホールド力をなめるな。そのまま腰を抱こうとしたところで、思わぬストップがかかった。
「待て、若林っ!」
日向と若島津が駆け寄って来る。お前らは退場したはずだろうが。
「岬を離せ」
喚く日向を睨みつけ、若島津を牽制しながら、俺は岬を更に抱き締めようとし、そしてそこで記憶が途切れた。


「若林くん、起きたまえ」
・・・聞き覚えのあるセリフだ。しかも、不吉な気配が漂っている。二度と目を覚ましたくない響きに耳を押さえるものの、強引に揺さぶられ、仕方なく目を開けた。三杉にしては珍しいやり方だと思っていたが、それもそのはず、俺を揺すっていたのは日向だった。
「お前、何しやがるっ」
何か良い夢を見ていたはずなんだ。そうだ、岬がスカートで可愛くて・・・と呟いたところで、視線を感じた。周囲を見渡すと、三杉に日向だけではなく、若島津と松山が俺を凝視していた。夢でも確かこいつらがいたな・・・みんなスカートだったな。
「何だ、どうしたんだ」
視線だけではない。空気も冷たい。思わず聞くと、三杉が静かに言った。
「それを君が聞くのかい?」
深いため息の後、三杉は話し始めた。
「片桐さんの依頼で、最近人気のサプライズ番組、とかで、自分の周りがみんな女の子になっているとしたら、という企画に参加することになってね。それで、若林くんをみんなでだましたんだよ。そうしたら、いきなり岬くんを襲おうとするし・・・」
理解には数秒間要した。その数秒後には、すっかり事態が飲み込めた。
「つまり、夢かと思っていたら、現実だったってことか」
「ああ、その通りだ」
松山が力強く頷いてくれたのが、それは何の救いにもならない。つまり、俺は岬を。
「・・・もっと触っておけば良かったって顔だな」
言ったのが若島津だと分かったのは、殴られてからだった。

「すまん、本当に悪かった」
岬に会わせてもらえたのは、それから2時間後のことだった。岬は顔に貼られた絆創膏に驚いたものの、若島津と日向にやられたと話すと、少し顔をしかめていた。岬が怒っていないことに安堵して、俺は頭を下げて謝った。
「うん・・・若林くんも夢だと思っていたんだもんね」
今となっては、それだけが救いだった。普段は指一本触れることすらできない。岬を困らせるのは本意ではなく、近付けば逃げられる、そんな関係のままだった。
「でも、お前のことが好きなのは本当だ」
岬は息を飲み、そして小さく頷いた。
「・・・うん、分かってる」
夢だと思って飛びついたあの時、岬は身をよじってはいたが、本気で逃げようとはしなかった。少し潤んだ目で誘うように見つめられたから、俺はそれが夢だとばかり思ってしまったのだった。
岬が頬をほのかに染めて顔を伏せた瞬間、胸が高鳴った。前とは比べものにならないほど、想いを自覚する。
「岬・・・」
抱き締めたい気持ちを抑えて、拳を握った。あの瞬間までも夢にしたくはない。また、一から距離を縮めていくことになる。それでも、どうしても諦められないのだと、悟った。

(おわり)

拍手ありがとうございます。
何か思いついたので書きました。某芸人さんが逮捕されたというニュースで、相方さんのことを考えていたら、石崎くんを連想したことは内緒です。作中に石崎くんが出ていたら、間違いなくあの話し方で若林くんにぐいぐい迫っていたことでしょう。
うまくまとまらなかったので、カットした部分では、若林くんは企画完遂のため、付け足し部分は演技をする羽目になるのですが、そこに石崎くんが登場する流れになっていたでしょう。
さすがに、新年早々2連続石崎くんは自粛させてください。
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テーマ:キャプテン翼 - ジャンル:アニメ・コミック


コメント
おなか痛いwwwwwwwwwww
岬ちゃんの愛らしさが文章からひしひしと伝わってきましたが、
それよりも「下の兄さん」がしれっと性癖バラされてて
爆笑してしまいましたwwwwww
お兄ちゃんwwwwwww
[2016/01/08 01:44] URL | 金玉みちんたま。 #ntbreMG6 [ 編集 ]

Re: おなか痛いwwwwwwwwwww
みちんたま様。
コメントありがとうございます。
岬ちゃんの愛らしさが伝わって本当に良かったです。
「下の兄さん」ディスったりしてませんよ。
それを弟がちゃっかり知っていると面白いな、とは思って書きましたが…こんな小ボケをきっちり拾っていただき、ありがとうございました。
[2016/01/11 22:23] URL | 真 #- [ 編集 ]


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